刹那
手紙を最後まで読んだオレは今まで感じたことのない嫌悪を感じた。それは幼い頃、トイレに起きたオレが本能のまま寝室で抱き合う両親を目撃してしまったような言葉にはできない感覚だ。それにしても、老人はどれだけ孤独だったのだろう。彼は苦しみながらも一匹の犬を心の支えとして生きてきた。
だが、腐食するまで誰にも見つけてもらえない孤独死だった。家族や友人がいれば早く発見してもらえたのに、赤の他人のオレが発見することになってしまうなんて。しかも、あんなに愛した彼女まで最後には主人の肉を喰らい、命を繋いでいる。実際はこの犬は老人のことを単なる虐待者としか思っていないかもれない。
今は秋だからいいものの、夏だったらさらに腐食が進んで目も当てられないだろうな。オレはそんなことを考えると、部屋の中だと言うのに構わずに嘔吐してしまった。そんなオレを見て、彼女は尻尾を振りながらオレにすり寄ってくる。
「やめろ!」
オレは力任せに彼女を払いのけた。彼女は今度は脅えたようにオレを見つめるのだった。とっとと、携帯で警察に電話をかけてしまもう。
早く家に帰りたい!オレは何だか愛海の顔が見たくてたまらなくなった。




