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老人と犬  作者: 虹野 輝
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背徳の手紙

この手紙を読んだ方へ


はじめまして私は遠藤雄二と申します。今、わずかな期待を込めてこの手紙を綴っています。私は定年退職した8年前まで高校で国語を教えていました。いつも生徒達から笑顔をもらった充実した教員生活でした。

しかし、退職した直後に妻を交通事故で亡くしました。私の妻である聡子は一人で買い物に行くと伝えたのを最後にトラックにはねられて死んだのです。黄色いエプロンを着た聡子はズタズタに皮膚が裂け内臓が飛び出て、目も当てられない亡骸になって我が家に帰って来ました。私は心の底から泣きました。今まで、子どももできず、ただ、私の帰りを待つだけの聡子に何もしてやれなかったです。私は自分を責めるしかなかったのです。

それから、身寄りのない私は孤独な生活が続きました。毎日、家に籠り、酒を飲むだけの毎日。そんな生活が数年続いたある日。私は運命の出会いをしたのです。それは夕方、私は酒を買いに、スーパーに買い物に行こうとした時のことです。しかし、その日は工事があって仕方なく聡子がはねられたあの道を通ったんです。そこに子犬が捨てられました。

"誰か拾って下さい"と書かれた白い紙が貼られたみかん箱の中に彼女はいました。煤を被ったように汚れた彼女は私を幼い子どものような澄んだ瞳で見つめるのです。これは運命だ。私は何かを悟りました。だから、その子犬に妻と同じ聡子と名づけ育てたのです。

彼女との出会いは私に光を与えてくれました。私は酒を飲むのを辞め、彼女との生活を楽しみました。私が微笑むと、彼女は尻尾を振ります。彼女の尻尾は天使の羽。私を幸せに導いてくれました。まるで、本物の聡子がいるように。

犬の聡子が成長するにつれ、私にはよくわからない抑圧された感情が芽生えてきました。それは本物の聡子との間に子どもができなかったからなのでしょうか、それとも、今まで寂しさに埋もれていた私が隠していた本能なのでしょうか。そもそも、私は教師。一度も生徒に対して、そんな感情は抱いたことはありませんし、それは聖職者としてあってはならないことです。

しかし、私の抑圧された感情は寂しさと反比例して積っていくのです。コップから溢れた水は決してもとには戻りません。私は犬の聡子が本物の若き日の聡子に見えてきたのです。ついに、私は抑圧された感情を彼女にぶつけることになりました。

無意識に下着を脱いだ私は本能のまま犬の聡子に馬乗りしました。それは禁じられた行為だと知っていますが、この感情は抑えられなかったのです。聡子もビックリしたようで、私の腕に噛みつきました。しかし、腕から流れていく血を見て私はさらに興奮しました。時を越え、聡子と一つになれた達成感と共に雷に打たれたような快感が私を襲いかかりました。

それから私は毎日のようにこの行為を続けました。本来なら、生身の人を前にしても不能なのに、聡子を見ると私は若き日の自分にタイムスリップするのです。だが、そんな幸せな生活も長くは続きません。私は医師から心臓の病を患ったことを宣告されました。つまり、いつ発作で死んでもおかしくない状態なのです。

だから、この手紙を残すのです。私が死んだら、聡子はどうなるのでしょうか?私が愛した聡子は?これを読んだ方はどうか私が死んだ後の聡子を助けて下さい。一生のお願いです。

この手紙が、私の思いが、あなたの心に届くように願っています。

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