禁断の扉
オレは直ちに指定された場所に向かった。家が何軒も建ち並ぶベッドタウン。まだ昼間なのに、灰色のコンクリートで形成された無機質な街並みをオレは横切る。隣の住人は誰なのか、何を考えているかわからない。ただ、眠るために会社勤めを終えたサラリーマンが帰ってくるだけの冷たい街並み。そこに待ちかまえていたのは赤いカーディガンを着た小太り気味のおばさんだった。
「お待ちしてました。この家ですよ」
斎藤さんに案内された家は築40~50年は経っているであろう古い木製の一軒家だった。黒い瓦と大人二人が横たわる位の狭いジャングルのような雑草だらけの庭。家自体も相当ボロイし、4、5部屋しかないような今にも壊れそうなニ階建ての建物だった。
「じゃあ、私はここで。とにかく、この家の中を調べて下さい。恐らく、人とあまり関わらない身寄りがいない遠藤さんっておじいさんが住んでいたようなんですけど」
「了解しました。ご協力ありがとうございます」
オレは何だかとてつもない嫌な予感がした。さっきから、魚が腐ったような、腐った生卵をぶつけられたような異臭がするからだ。もしかして、所謂、ゴミ屋敷ってやつか。
市民からの通報なので、オレは家の門を開けた。むろん、古い家だからこそインターホンなんてものはない。
「遠藤さん、遠藤さん」
家の閉じつけの悪い板戸の前でオレは叫ぶ。その家はどこの窓もカーテンがかかっていて、閉まっているようで中がどうなっているか分からない。オレは、鍵がかかってあるであろう板戸を押してみた。
「ガッシャン」
年季の入った茶色い木製の板戸は簡単に壊れた。玄関に入ると、ボロボロの靴箱やバラバラに砕けた緑色の壺が転がっていた。それにしても、何の臭いだろうか。ものすごい異臭がする。それは腐った人の排泄物を直に鼻に押しつけられているような感触さえする。
「キャン、キャン」
奥の方から犬の鳴き声のような音が聞こえた。こんな家に人や動物なんているのか。
でも、かすかに聞こえる。オレは何かに引きつけられるようにその音のする方に向かった。床は穴だらけで、転びながらもオレは前に進む。すると、彼女がいたのだ。




