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第037話 懐かしい


「先輩、あなたは誰ですか?」


 僕はこの言葉を聞いて、すべてを言うべきだと判断した。

 これ以上はカナちゃんの頭の中がおかしくなってしまいそうだからだ。

 だからぼくはカナちゃんにすべてを説明した。


 カナちゃんと付き合った翌日に女性になったこと。

 その日に同じように女性になった人が3人いること。

 それがいつもファミレスで会う3人であり、4人で元に戻る方法を模索していること。


 これらを順を追って説明していった。


 最初は半信半疑だったカナちゃんもすべてを説明すると、納得したような顔になった。


「なるほど……だから私の中で妙な矛盾があったんですね。私、やはりこの歳になってくると、将来のことを考えます。先輩と結婚して子供を産んでーとか。でも、その度にあれって思ってたんです。でも、何故かなんでそれが変なのかわからなかったんです」


 常識改変か……


「そういうことだと思う。巻き込んでしまってごめんね」

「それはいいんですけど、元に戻れるんですか?」

「今それを検証中。なんとか戻りたい。カナちゃんと結婚したいし」


 そう言いながらカナちゃんを抱きしめる。


「私もそっちの方がいいですね。でも、最悪は元に戻れなくても大丈夫です。ずっと一緒です」


 カナちゃんはそう言って、抱きしめ返してくる。


「うん……そうだね」

「実は先輩にもう一つプレゼントがあるんですよ」

「なーに?」

「それは…………じゃあ、こっちに来てください」


 僕はSな顔に変わったカナちゃんに寝室に連れ込まれてしまった。




 ◆◇◆




「……ということがあったんだけどね」


 僕は社長のベン〇の後部座席から顔を出し、皆に説明する。

 あれから1週間が経ち、仕事納めをした僕は30日にニャー子と社長と木更津までやってくると、久しぶりに会うチヒロっちと合流し、僕達が卒業した小学校を目指していた。


「さすがに矛盾が大きくなりすぎたわけだな……」


 社長が神妙な顔で頷く。


「そうみたい。さすがに結婚や子供の話になればおかしさに気付く」


 女同士だもん。

 子供はもちろん、同性婚もこの国では無理だ。


「でも、カナちゃんが受け入れてくれてよかったにゃ。お楽しみだったらしいし」

「俺らの予想が当たってましたね。絶対に性夜だろうって」


 そりゃそうでしょ。


「受け入れてくれたのは嬉しかったよ。でもねー……」

「そんなに攻められたかにゃ?」

「いや……優しかったよ。ビーズみたいので✕✕✕を攻められたけど」


 僕に尻尾が!?


「ご愁傷様にゃ」

「ついにそっちまで……」

「頑張れ」

「いやまあ、そこはどうでもいいんだよね」


 本題はそこじゃない。


「そうにゃのか?」

「うん。問題は翌日、カナちゃんが前日に話したことを覚えていなかったこと」


 きれいさっぱり忘れていた。


「は?」

「え?」

「マジっすか?」


 さすがに3人が呆ける。


「常識改変ってやつかな? 夢でも見てたんじゃないですかって言われた」


 あれは嘘を言っている目ではなかった。

 そもそもカナちゃんは嘘が苦手な子だ。


「それは……」

「さすがに……」

「思ったより、深刻にゃ」


 まあね。

 僕、ちょっとショックだったもん。


「それでさー、ちょっとカナちゃんがヤバそうだからマジで元に戻る方法を探ろうと思うわけ」

「それは同意するにゃ」

「ああ、ちょっとマズい」

「頑張りましょう」


 3人が真面目な顔をしながら頷いてくれた。

 話しながら到着を待っていると、僕達が通っていた小学校に着く。

 そして、社長が学校の近くにある駐車場に車を停めたので皆で車から降り、学校に歩いて近づいていった。

 すると、昔に何度も見た校門が見えてくる。


「懐かしいなー」

「ホントにゃ」

「何年前だ?」

「俺は数年前ですけど、皆さんは10年以上前ですかね?」


 そんなに前になるのか……


「ちょっと待ってろ。先生に話してくる」


 社長がそう言って、学校の敷地内に入っていったので僕達は校門の前で待つことにする。

 そのまましばらく待っていると、社長が戻ってきた。


「好きに入っていいそうだ。ただし、午後になると残っている先生方も帰るからあくまでも午前中だけ」


 30日なのにまだ仕事なのか。

 やっぱり先生って大変なんだな。


「じゃあ、入ろうか」

「そうだな。でも、共通点を見つけないといけないわけだろ? だから振り返りながら回っていこう」


 ……覚えてるかな?


 僕達はまず校門を見る。


「振り返るって言っても普通に集団登校でやってきただけだね。僕はあまり遅刻しなかった」

「タマも」

「俺もだな」

「集団登校でしたし、小学校であまり遅刻ってないですよね?」


 まあね。


「とりあえず、入ってみようか」


 僕達は校門を抜けると、学校の敷地に入っていった。

 そこから校舎の中には入れないが、外から校舎を覗き、学校生活を振り返っていく。

 だが、いくらなんでも昔すぎたこともあって、僕達の共通点を見つけることはできなかった。

 そして、校舎を見終えると、校庭に向かう。


「校庭ってこんなに狭かったっけ?」

「校舎もだけど、半分くらいに見えるにゃ」

「ホントだな……」

「俺達が大きくなったんでしょうね」


 昼休みに校庭でサッカーや鬼ごっこなんかをしていたが、あれだけ広く感じた校庭がここまで狭いと違和感がすごい。


「なんか部活というかクラブ活動とかやってた? 僕は何もしてない」

「タマも何もしてないにゃ」

「俺はバスケだった」

「俺はサッカーっすね」


 またもや共通点がない。

 さっきからずっとこの調子である。

 僕達は趣味趣向もやってきたこともバラバラすぎるのだ。


「発想を変えた方がいいかもね」

「どういうことにゃ?」

「共通点を探すのは難しい。何より、共通点を見つけてもそれが何だって話だし」


 それが元に戻る方法に直結するとは限らない。


「まあな。でも、それ以外に何かあるか? 正直、俺が諦めかけていたのは元に戻る方法を探すって言っても雲を掴むようなことだからだ」

「俺もっすね。超常現象すぎて受け入れるしかないのかなって思ったんです。こんなの神様か悪魔の所業でしょ」


 神か悪魔か……


「もう一度、確認するけど、この中で女性になりたいって願ったことがあるのはニャー子とチヒロっちだけ?」

「まあ、そうにゃ。でも、そこまで強い願いではないにゃ。別にそっちでもいいなって思う程度にゃ」

「俺もその程度っすね。姉貴が羨ましいなって思っただけなんで」


 うーん……


「社長は本当にない?」

「ないというか、考えたこともない。お前は? 妹さんがいるんだろ? チヒロみたいに羨ましいって思ったことはないか?」


 羨ましい……

 あれを?


「いや、ないと思う。平凡な人生だったけど、満足していたしね。就職してからはつまらないって思ってたけど」

「そうか……しかし、神様か…………そういえば、近くに神社があったな」


 あー、あるね。

 学校の裏山の上。


「エロ本がよく落ちてるところ?」

「ぼろいやつにゃ?」

「ありましたねー。俺らの頃は肝試しするところでした」


 皆、知っているらしい。


「やっぱり年代が違っても有名なんだな。俺の時は死ねという言葉と共にクラスメイトの名前が書いてある紙が見つかって大問題になった」


 あ、それ、聞いたことある。


「全校集会で聞いたね。放課後に皆で探しに行ったもん」


 なお、見つからなかった。

 さすがに回収されたんだと思う。


「今思うと、本当にひどいよな」

「小学生は残酷だからにゃー」


 ホントにね。


「懐かしいね」

「行ってみるかにゃ? 歩いていける距離だし」

「ここにいても何も見つかりそうにないですしね」

「そうするか」


 僕達は学校をあとにし、神社に行ってみることにした。


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