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第012話 常識改変


 僕は仕事の山場を終えたので有休を取った。

 今日は金曜なため、3連休だ。


 僕が有休を取ると言ったらカナちゃんも取ると言ったので一緒に休みを満喫することにした。

 午前中は遅くまで寝て、午後からは映画に行くことにする。

 そして、映画を見終わると、ショッピングモール内をふらつき、夜になると、飲みに出かけた。

 もちろん、会社から離れた場所にしたため、自分の家からも離れている。


 僕達がそこそこの時間まで飲むと、店を出る。


「帰る?」

「ふふっ、今日は帰したくないなー……」


 カナちゃんが僕の腕に自分の腕を回し、引っ付いてくると、耳元で囁いた。


 あ、ラブホか……


「うん、そうだね」


 僕は嫌ではないので同意する。

 どうせ明日も休みだし、ホテルでゆっくりするのもいいだろう。

 ホテルはアメニティなんかも揃っているし、結構楽しい。


「…………いっぱい声が出せますね?」

「…………うん」

「…………久しぶりにかわいがってあげよっ!」


 おかしい……

 逆だ。

 絶対に逆のはずだ。

 まあ、かわいいからいいか!


 僕達は腕を組んだまま、町を歩いていく。

 すると、前方に黒塗りのベン〇が見えたため、思わず、視線を下に落とし、歩く。


「エロミか?」


 ん?


 僕のあだ名を呼ぶ声が聞こえたので顔を上げると、社長がタバコを吸いながらベン〇に背を預けていた。


「あ、社長じゃん。そっか、社長の車か……ビビるからこういうところでベン〇はやめてよ」

「そう言われてもこれしかないしな…………あ、どうも」


 社長がカナちゃんに頭を下げる。


「カナちゃん、この人、伊東…………社長、名前って何だっけ?」


 忘れた。


「お前、ひどいな。カオルな」

「そうそう。伊東カオルさんっていう友達。社長は知ってると思うけど、彼女のカナちゃん」

「こんばんは」

「こんばんは」


 2人が頭を下げ合う。


「社長、何してんの?」

「会社の飲み会だよ」


 金曜だもんな。


「車で?」

「俺……私は下戸なんだ。だから社員の送り迎え」


 社長はカナちゃんの前だから一人称を言い直した。


「へー」

「あ、悪い。他の連中が戻ってきたから送るわ。またな」

「はい。おやすみなさい」

「ん」


 僕達はその場で別れ、ラブホテルへと向かう。


「エロミって何ですー?」


 カナちゃんがニヤニヤしながら聞いてくる。


「別にただのあだ名だよ」

「へー」


 カナちゃんは完全にSのスイッチが入っていた。




 ◆◇◆




「一昨日、ここ以外で初めて会ったよね?」


 僕はいつものファミレスで対面に座っている社長を見る。


「そうだな。会うとは思わなかった」

「へー、どこで会ったんすか?」


 チヒロっちが食い付いた。


「飲み屋街だな。彼女さんと腕を組んで歩いていた。マジでロリだな。夜の街に似つかわしくない2人だった」

「そして、ホテルにしけこんだわけだにゃ」


 まあね。


「社長がエロミって呼ぶからそこに食い付いてさー、『本当にエロミちゃんですね』って言われながら攻められたよ」

「その報告はいらないにゃ」

「なんかすまん」

「エロミ姉さんとカナさんは相変わらずっすね」


 まあ、僕もカナちゃんのおっぱいを堪能したからいいけどさ。


「エロミ、実はちょっと気になることがあるんだが、聞いてもいいか?」


 社長は神妙な顔をして、聞いてくる。


 何だろ?

 カナちゃんのサイズは教えないぞ。


「改まって何?」

「カナさんのことだ」


 お、教えないぞ!


「カナちゃんが何さ?」

「彼女は性癖的にノーマルか? それともレズか?」

「ん? んー……どうだろ。でも、僕が男だった時に告白を了承してくれたわけだし、男嫌いではないと思う。僕だけじゃなく、他の男社員とも普通に話しているしね」


 特に問題は起きていないし、そういう不満も聞いていない。


「タマと同じようにバイなんだろうか?」

「そうじゃない? 何が言いたいの?」

「彼女にはお前が男に見えているんじゃないかと思ってな」


 はい?


「いや、おもっきし、女でしょ」

「言葉が悪かったな。女には見えているし、女であるという認識は間違いないだろう。俺が言いたいのはお前が女になったことで常識改変が起きたんじゃないかということだ」


 どうしよう?

 社長の言っている意味がわからない。


「常識改変……周りがタマ達を最初から女と思っていることと一緒かにゃ?」


 マズい。

 ニャー子はわかったっぽい。

 バカそうな言動をしてるくせに。


「そうだ。男が女になる。普通なら周りがパニックになるだろう。だが、実際はパニックになっていないし、周りも俺達が女であったという認識に変わっている」


 確かに会社の人もそうだ。

 誰もツッコまない。


「だが、所々で変なことが起きていないか?」

「変なこと?」

「例えばだが、俺は社長だ。でもな、女の社長なんて普通は舐められる。知り合いに何人かの女社長もいるが、皆、そこを悩んでいた。だが、俺にはそれがまったく起きていない」


 あー、そういうは確かにあるかも。


「そういや、僕の会社もそうかも。上司や同僚は皆、カナちゃんを気にしてる。カナちゃんはウチのフロアでは唯一の女性だから皆、気を遣っているんだよ。でも、僕はいまだにまったく気を遣われていないし、むしろ、激務だね」


 部長はよく、明浦はどうだって聞いてくるし、明浦に残業をあまりさせないようにしろとか言ってくる。

 だけど、僕を気にしてくれたことはない。


「タマはそういうのがないからわからないにゃ。一番ありそうなのはチヒロっちにゃ」


 僕達はチヒロっちを見る。


「確かにありますね。恥ずかしい話なんで、3人にはしたことがない話ですが、実は俺、去年、とある女子に告白してフラれているんですよ。そのことをクラスメイトとかに稀にネタにされていたんですけど、この前もネタにされました。でも、女子が女子に告るって結構なことじゃないです? なのに誰もそこには触れません」


 高校くらいならいじめに発展してもおかしくないだろう。


「やはり常識改変が起きている……」


 僕もさすがにわかってきた。

 常識改変が起きているんだが、所々にほころびというか、矛盾が生じているんだ。


「それはわかったけど、それとカナちゃんが何なのさ?」

「多分だけど、彼女はバイじゃなく、ノーマルだろう。普通に男のお前が好きで付き合った。だが、今はどうなんだ? 彼女はあくまでも男のお前が好きなだけならば、今のお前を好きなのは常識改変だろう。お前、彼女に性癖として女が好きか、男が好きか聞けるか?」


 なんでだろう……

 聞いてはいけない気がする。

 何かが終わりそうな気がする。


「ごめん……ちょっと無理」

「いや、無理しなくてもいい」


 社長が首を振る。


「そうだにゃ……この4人のTS化現象の中で一番イレギュラーなのはその夜に彼女とセッ○スしていたこいつにゃ。そこは慎重にした方がいいにゃ」

「そうっすね。俺もそう思います」


 皆が真面目な顔で真剣に話をしているが、僕は気付いてしまった。

 僕達が女になって半年近くが経っている……


 初めてまともな会議だ……


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