納豆さえあれば
納豆さえあれば
生きていける
きっと
納豆さえあれば
どうしようもなく
悲しくて
自分が
情けなくて
私に価値なんて
何もないって
そう思う夜だって
納豆さえあれば
生きていける
大きな失敗をして
たくさん迷惑を掛けて
涙があふれて
消えてしまいたいって
そう思う夜だって
納豆さえあれば
生きていける
あなたが去っていって
独り残されて
自分の肩を抱いて
震えるだけの夜だって
納豆さえあれば
きっと
生きていける
納豆に
鰹節
青ネギを散らして
卵黄をひとつ
甘めの醤油に
祈りを込めて
心を
整えるように
丁寧に
混ぜて
温かな
白いご飯の
ほっとする
湯気に
心を
預けて
納豆さえあれば
生きていける
孤独に怯える夜も
来なければいいと願う朝も
まぶしさにいたたまれなくなる
晴れた日の午後にだって
納豆さえあれば
生きていける
きっと
納豆さえあれば