第九話:仲介役
自分の部屋に幾度もの呪文を唱え、さらにはブービートラップまで仕掛けた部屋に義臣を閉じ込めた後、副島は社長室に向かった。
けっして打ち解けてはいないだろう美夏と高校生バスター達を想像しながら…
「全員揃ってるか?」
険悪な雰囲気の中を副島は入った。しかし、副社長が入って来たにも関わらず、龍二は文美夏に句をぶつけた。
「おい待て! いきなり何だよその態度はよ!」
「弱い奴に守られたくはないといっている。頭の悪い奴だ」
龍二の文句など相手にもしたくないらしい。副島はやれやれと溜息をついた。
「副社長、こいつらの力は分かった。私の護衛には向かないからこの件に関わらせないでくれ」
美夏の直球に翡翠は不思議そうな表情になった。しかし、美夏の要求が受け入れられるはずがない。
「それは出来ないな。お前は明日から箒星に通うんだ。こいつらと仲良くしてもらわなければ奴らを欺けないからな」
「私は高校になど行くつもりはない。欺く方法などいくらでもあるだろう」
「闇にいたバスターが高校に通ってる方がよっぽど欺ける。それに箒星はバスタークラスを作ってるほどだからな。TEAM以外の掃除屋までいて警備は万全だ」
確かに、悪徳な掃除屋が手を出せないほど箒星はその辺の一般校より安全である。
「それにさ美夏、多分お前より快ちゃんの方が強いと思うぞ?」
白真の言う通りだった。美夏は咲と互角、快より若干劣る力の持ち主である。
そういう白真の実力を美夏は感じ取った。それは彼女の見た調書と違うもの。
「…確かに篠原快の底は知れないようだな。だが、私はお前みたいに力を隠してる奴は好きじゃない」
「お互い様だろ?」」
白真は美夏の核心をついた。ニッと笑う白真は全てを理解していたのである。
「…不愉快な奴だ。私には絶対関わるな」
美夏はそう言い残して部屋を去っていった。そしていなくなった途端、高校生バスターの怒りは爆発する。
「何なんだよ! あいつは!」
「そうね、確かにちょっと取っ付きにくいわね」
ほとんどのものがそう思うが、翡翠はカラッとした声で言う。
「でも優しい子でしょ?」
素っ頓狂な発言に耳を疑ったが、白真は頷いている。
「翡翠、お前なぁ」
「だって、普通の依頼主って私達が危険な目にあっても当然って顔をしてるじゃない。元は優しい子じゃなければあんなこと言えないよ?」
「だけどあの態度は!」
自然と翔に視線が集まる。喧嘩の後は翔なのだ。
「翔の出番だな」
「頼むぞ、仲介役」
快と修は必ず何とかするであろう翔に統べて任せることにした。それを聞いて翔は消える。
だが、翔はただ美夏を追い掛けるしかなかったなどとは言えなかった。彼女を知っていたからだった。
んじゃ、こちらの方をご紹介。
霧澤 美咲
美夏の母親で風野博士のクローンと戦ったときに死亡。
影でも総隊長だった瀬野龍一と戦えるほどの実力者だった。
娘を夫の兄、ジャック・ハリソンに預けたのは美夏の潜在能力が高かったためらしいが、一母親としては寂しかったようだ。
ちなみに夢乃や義臣とも仲が良かったらしい。