第七話:長年の付き合いだから分かること
「ただいま夢乃さん」
「おかえりなさい、快ちゃん!」
「だあ! くっつくな!」
義臣の抱擁を交わし、夢乃は快に抱き着いた。三日ぶりの対面に快は多少面倒を感じながらも、不快というわけではない。
かといってこの出迎え方は高一男子にとってはいかがなものかと思うが…
「あの〜夢乃さん、
「何です? 酔っ払い」
明らかに夢乃が怒っていることは一目瞭然。笑顔の下の鬼ぶりが恐い。
「さっ、快ちゃんは副社長のお土産を頂いていらっしゃい。咲ちゃんがシャワー浴び終わってから高校生バスターは全員社長室に集合ね」
「ああ」
快は瞬身でその場から消えた。
「あのさ、今、副ちゃんが戻って来たって空耳が聞こえた気が…」
「戻ってきたぞ、グウタラ」
地獄の底から声がした。副島がそんな声を出すということは、間違いなくTEAMの社長の仕事が滞っていたということだ。
「お、おかえり、副ちゃん」
「ああ、帰って早々仕事する羽目になったがまさかあんなに処理し終わってない書類があったとはな。
おまけに監査項目にも手を付けてないとは天下のTEAMが法律に引っ掛かって潰れるな。一企業の社長としてあまりにも自覚が無さ過ぎるんじゃないか?」
義臣はたじろぐ。副島がいるからTEAMは掃除屋としての機能を失わないですんでいるのは事実だ。
「しばらく社長室に缶詰にしてやるから覚悟しとけよ」
やるといったらとことんやるのが鬼の副社長だ。おそらく死んでも抜け出せないような術を本人は愚か部屋にもかけるに違いない。
「副ちゃ〜ん! それだけはいや〜ん!」
「知るか! だいたいあんたは息子の面倒も見れてないだろう! 新を雪だるまにしてどうするんだ!」
それで夢乃の怒りの原因は理解できた。しかし、雪だるまになったのはけっして自分の性ではない。だが、
「言い訳はしないで下さいね。あの量の雪はあなたが召喚したんでしょ?」
もはや話を聞いてくれる予知はない。
新がこの家に住むようになってから夢乃は非常に新との時間を大切にするようになった。それも自分とのデートも無しにするほどにだ。
おまけに高校生バスター達にも前と同様に接しているとなれば、自分との時間を当然一番に削るのである。
なので言い訳を聞かないのも当然の結果といえば当然なんだが…
「とりあえず、まずは美夏を紹介するのが先だ。さっさと酒気を抜け」
「はいはい」
「はいは一回!!」
間違いなく社長と副社長の立場は逆転しているのである。
そして義臣が消えた後、夢乃は溜息をついた。
「ありがとう、これで少しはまともに仕事するでしょ」
「全くだ。だが、あの調子なら今回の闇に対抗する手段くらいは練っていそうだな」
「あら、分かるの?」
意外そうな声を夢乃はあげた。
「分からなければ副社長など勤まるものか」
「それもそうね」
二人は声を立てて笑った。
はい、自己紹介しときましょ!
橘 太陽
大地の父親でTEAMの総料理長。コック達からは「おやっさん」と慕われる人望の持ち主。
普段はTEAMの厨房を預かる身なので滅多に任務に出ることはないが、バスターとしての実力はかなりのものらしい。
義臣と同い年なのだが、実年齢よりも上扱いを受けている。