第五話:依頼
婦人の手料理はTEAMのコックにも負けないほどすばらしいものだった。
特に魚の照り焼きは絶品で快のお気に入りである。
「快ちゃん、お味はいかが?」
「うまいです。うちのコック達でもこの味はなかなか出せないですよ」
快は微笑んだ。滅多にいない常識人との一時を持つことは快にとっては貴重だった。TEAMには少ないのだ、常識人が…
「それよりじいさん、依頼書を見せてくれないか? やっぱり気になる」
「ハッハッハ、やはり仕事熱心じゃの。TEAMの未来は安泰じゃ」
元二は快のそばに依頼者リストを空間から出してやった。
「まず今回の依頼者はとっくに殺されておるが聞いたことのある名前じゃろ」
食事をしながら快は依頼リストを読んでいく。その依頼者欄に快は記憶を辿って思い出していた。
「ああ、ジャック・ハリソン。確かうちのシュバルツ・ハリソンの兄貴だよな」
「そうじゃ、そして霧澤美咲と言う名前を聞いたことはあるか?」
快はまた記憶を辿る。どうも今回は親世代が絡んでいるようだ。
「たしか、母さんの同級生で影所属のバスターだったか」
「そうじゃ。TEAMに戻れば霧澤美夏というシュバルツと霧澤美咲の娘がおる。
ただそれだけならお前を呼ばなくてすんだのじゃが、美夏がジャックの弟子として赤ん坊の時から育てられていては話は違ってくる」
厳しい表情が語らんとしていることは十分過ぎるほど理解できる。
「掃除屋『闇』の禁術使いか…」
「そうじゃ。ジャックは闇に潜入し美夏に殺しのスキルを叩き込んでおる。
当然闇はそんな危険因子をTEAMに使われたくないために命を狙ってくるだろう。じゃから美夏の命を守ってもらいたい」
話の筋道は通っている。だが、なぜその依頼を元二がしてくるのか快にはわからない。
「じいさん、じいさんは美夏とはどんな関係なんだ? わざわざTEAMのバスターを守る必要があるのか?」
もっともな質問である。依頼者が死んでしまった以上、掃除屋が動く理由はよっぽどの金額を貰っているか、または私情がある場合しか考えられない。
「確かに、わしは美夏とは会ったことがないがジャックとは音楽仲間でな。
奴が弟子にした子を守りたいという遺志は継いでやりたい。それに美咲もギャンブラーにいたんじゃ。娘の美夏を助ける義務はある」
私情だった。しかし、人としてその気持ちは分かる。
だが、やはり快はまだ気になることが数点あった。
「他にも何か隠してるようだが…」
「後は義臣の判断じゃ。それにTEAMにはもう一人巻き添えを喰う奴がいそうでな」
巻き添えの言葉に快は眉をピクリと動かす。
「片岡翔。あやつも六年間闇にいたんじゃよ」
親友の名前は意外なところで登場したのである。
んじゃ、次はこの人の登場だぁ!
副島 英成
TEAM鬼の副社長として恐れられている実力者。
身長百九十センチもある大男な上にワイルドさも加わっているのでかなり恐いイメージを与えてしまうが、心優しいところの方が多いらしい。
だが、義臣の仕事サボりに対しては命を絶たせる勢いで阻止している。
義臣より五歳年上らしいが、それ以外の素性は謎に包まれている。