第四話:ギャンブラー
VIP専用の一室に通されている。それは紛れも無く龍神のメンテナンスには狭すぎる部屋。
だが、篠原快は大人しく待っているしかないのだ。場所が場所だからだが…
「さて、俺は龍神の調整をするって言うから疲れてるのに付き合おうと言ったはずなんだがな」
「ん? そんなもの俺がいればお前がやる必要ないだろ?」
快の父親、篠原義臣は広いソファに両腕を伸ばして寛ぐ。日本一VIPらしくないVIPである。
「そうか…だったら帰らせてもらう!!」
一気にTEAM本社までワープしようとしたが義臣はそれをさせない。
「まあ、待てよ。せっかくじいさん達に会えるんだ。孫なら顔ぐらい見せてやれよ」
「ああ、じいさん達だけならな。だが…」
ドタバタと騒がしい足音が近づいてくる。その元凶達は豪快にVIPルームに入って来た。
「快ちゃん! ようこそお出でなすって!」
「快様、お久しぶり!」
「大将! お帰りなさい!」
「義臣さん! 一杯やっていってくれよ!」
『ギャンブラー』。義臣の義理の夫妻が経営するTEAMと協力関係にある掃除屋のバスター達だ。
このノリは間違いなくTEAMにも影響を与えている。しかし、それを制する社長がここにはいた。
「おい、あまり群がるな。快は任務明けだろう」
「ボス!」
ボスと呼ばれている快の祖父、ギャンブラー社長の和泉元二は威風堂々と入ってきた。
TEAMの影に所属している和泉咲の実の祖父でもある。
「じいさん、いつも父がお世話に…」
「いやいや、昔からだから気にするな。それより新しい茶が入ったからな、久しぶりに囲碁でもやらんか?」
実に穏やかな祖父と孫の関係である。本当なら快はじい様とでも呼びたいらしいが、元二が「じいさんと呼べ」と駄々をこねたらしい。
ちなみに咲には「おじいちゃま」と呼ばせている…
「あなた、快ちゃんはまだ夕食も召し上がっていないでしょ? まずはご飯が先ですよ」
婦人が落ち着いた物腰で部屋に入って来た。和泉さくら、夢乃の医療の師匠である。
「そうか、すまんの。快が来てくれると嬉しくての」
「まあ、だったら義臣はほっといていいのかしら?」
「平気ですよ。とっくに酒盛りしてますから」
すでにVIPルームから義臣は消えており、ドンチャン騒ぎがこだましている。
一体どうしたらこんな落ち着きのある育ての親からあんな息子に育つのかTEAMの七不思議の一つである。
「苦労してるの…」
「育ての親の苦労が身に染みますよ…」
全くである。
「まあ、快を連れてくるように言ったのはわしじゃからの、こちらに来なさい」
「一体何の御用件で?」
快の問いに元二は少しだけ厳しい顔付きになった。
「任務の依頼じゃよ」
事件の幕開けである。
はい、さくさく自己紹介しときましょ!
相原 陽子
中学入学と同時にアメリカの細胞バンクに任務を言い渡されて行くほどの実力者。なので英語はペラペラである。
しかし、その任務の中で二人の兄を殺されてしまう。
現在は影所属の任を解かれ表の部隊に所属。また修の恋人として平和な毎日を送っているようだ。