第三話:土産騒動
「副社長が戻ってきたぁ!?」
食堂に響くのは歓声と絶叫と魂が抜けていくものを必死で呼び覚まそうとする声である。
「ほら、俺達には土産だってさ」
「可愛い! ピンクの鞄だあ!!」
「素敵、こんなペンダント欲しかったのよね」
翡翠と紫織はセンスの良い土産に大絶賛を送る。
「この時計かっけ〜! やっぱ大人の男は違うな」
「ああ、だがなんで俺の靴のサイズが分かってるんだ?」
白真と修もそれぞれの感想を述べた。そして翔は翡翠に残りの土産を手渡した。それは今日任務に行っている女子バスターのものだ。
「後から咲達にも渡しといてくれ。ところで快はどうしたんだ?
もうそろそろ戻って来てもいい頃だろ?」
快が任務に出たのは三日前だ。任務完了の連絡が入り、夕方に戻ってくる予定がまだ戻って来てなかったのである。
「快は社長に連れていかれたぞ」
現れたのは快と同じ任務に付いていた残りの三人、大地、優奈、陽子だ。
あと高校生バスターは咲、龍二の二人だが、彼等はTEAMの特殊部隊、『影』に所属しているためなかなか同じ任務に付くことはないのである。
「おかえり優奈ちゃん!」
「疲れただろう、陽子」
社員達は女子二人を囲み騒ぎ始めるが、大地を労う言葉はない。
「大地! さっさと着替えて厨房に入らんか! 宴会料理が間に合わないだろうが!」
「大地! こっち頼んだぞ!」
「鬼かぁ!!」
三日間ろくに寝てない高校生に厨房に入らせるコック達である。さぞ、前世は戦国時代の優秀な炊事隊だったに違いない。
「で、快はどうして連れていかれたんだよ」
「ああ、なんか龍神がどうとか言ってたからさ、多分調整じゃないか?」
「調整? 社長じゃないとコントロールが難しいんじゃねぇか?」
翔の言うことはもっとも。龍神のコントロールだけでも至難の技なのに、その龍神達のメンテナンスとなればそれは人間業ではない。
しかし、それをやってのけるのが篠原義臣という男だ。
「まっ、遅くはならないって言ってたからそのうち帰ってくるだろう」
「そうか。で、俺への副社長の土産はなんだ?」
情報通はおそるべしである。しかし、大地の場合は物から声を聞く力を持っているので不思議でもないのだが。
「ほら、お前のが一番でかい」
「なんだろうなぁ」
大地はワクワクしながら包みを開けると、そこには嫌がらせとしか言いようのないものが入っていた。
「ピンクのフライパン…」
「思い付かなかったんだろうな。エプロンまで入ってるし」
副社長の土産は女性に大人気のピンクのフライパンとエプロンだったのである。
「大地! さっさとそれつけて厨房に入れ!」
食堂が爆笑の渦に包まれた。
自己紹介第三弾! お次はこいつだ!
瀬野 龍二
打倒色鳥白真!を誓う剣道馬鹿。しかし、TEAM特殊部隊『影』に所属しているため、夏のインターハイは任務で出られなかったらしい。
咲の婚約者で幼い頃から咲を守ることを誓っていた。
時空間を砕くスキルを持つバスターだが、父親の瀬野龍一には及ばないらしい。