第十七話:TEAM本社襲撃
TEAM本社に戻った咲は黒装束のまま義臣に報告を入れに行った。彼女は影の部隊長、任務がなくとも多忙だ。
「やっぱり下っ端か」
「ええ、スナイパーの一バスターでした。もしこちらに捕らえられても情報は話せないように術をかけられていましたけど」
先刻捕らえた研究者から様々な情報を得ようと美夏は立ち会っていたのだが、どうやら相手はかなり複雑な術式を使っているらしい。
「そうか、副ちゃんでも解けそうにないか?」
「ええ。ですが片岡航生さんなら数分ですむようですけど…」
「航生か…あいつも大概戻ってくればいいんだけどな」
長年過ごして来た悪友は未だに腰を下ろす気はないらしい。
義臣が溜息をついたと同時に副島が入って来た。
「書類は全て片付いたのか? グウタラ」
「いやん、副ちゃん。あたりまえじゃない」
「気持ち悪い言い方はするな。どれ…」
速読である。それぐらい出来なければ副社長は務まらないらしい。
「良いだろう。それで、航生の居場所は掴めたのか?」
「一応な。今、龍一に直接戻ってくるように交渉役を任せてるが、航生が頷くとは思えないんだよな」
TEAMのナンバースリーのポジションを持つ男でも航生はなかなか捕まらないことは誰しもが認める事実である。
だが、そこに副島の冷静なツッコミが入る。
「お前が行けば良いだろう」
「嫌よ、航ちゃんと全力の鬼ごっこやったら幻術合戦になるんだもん。夢乃さんのあ〜んなポーズやこ〜んな恰好見せられたら撒かれちゃう…」
トリガーが引かれ黒々とした銃口が義臣に向けられる。
「副ちゃん…銃口こわい…」
「一度死んどけ!」
遠慮なく副島は発砲し義臣は瞬身でよけた。
「ちっ!」
「本物撃たないでよ! 死んじゃうじゃない!」
「ついでに死んどけ」
そのやり取りの中、咲は地面に落ちた盗聴器を拾った。
「…酷いですね、ミクロサイズの盗聴器を仕掛けてくるなんて」
義臣は咲から盗聴器を受け取り瞬時に判断する。
「…ああ、しかも時間差で盗聴器に変える技か。まあ、闇の技術と技が合わされば朝飯前だな。
副ちゃん、ついでに通信機にも変えられるか?」
「もう一つはやっといた」
仕事の早い男である。社長の次の行動は予測済みだ。
「さすが副ちゃん。じゃあ…聞こえるか? 闇の使者ども…いや、郷原佐一」
ミクロサイズの通信機に向かって義臣は話始めると低い声が返って来た。
「ほう、さすがは篠原義臣だ。俺の正体にまで気付くとは」
さぞほくそ笑んでいるのだろう、相手の態度は浮かんでくる。
「当たり前だ。お前は夢乃を重傷に追い込んだ実力者。まあ、俺に斬られた傷が疼いてないことは祈るが」
その態度を切り崩すのが義臣だ。必ず相手に対して優位な立場にいる。
「…ああ、最近疼き出しているさ。だが、スナイパーをそちらに送り込んでいることに気付いているか?」
「社長!!!」
「ちぃ!!」
数人のバスターが社長室に突如現れ、義臣に斬りかかる!
だが、それを咲と副島が阻止した。
「お前まさか…」
「死ぬがいい、篠原義臣」
通信は途絶えた。