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赤い悪魔と呼ばれる竜殺し  作者: ビーグル犬のぽん太
赤い悪魔と滅びの竜
29/55

四人と合流

 鉱山の深部を進む。


 俺、イングリッド、サリウドの順番で進むが、俺よりも最後尾のサリウドのほうが危機察知能力は高かった。見えない敵を一掃したさらに奥でも、彼の鼻と耳のおかげで、敵と遭遇する前に魔法で撃退できている。


 楽勝のように感じるけど、実際はそうじゃない。


 サリウドがいなければ、奇襲を受けて危なかっただろう。単純に戦力の組み合わせの相性が、俺たちの有利を確定させているといえる。


 見えない敵の正体は、イングリッドが推測した。


「昔……わたしが生まれるよりも昔、エルミラに仕えていた眷属のひとつを、現在では悪魔族と称している。彼らのなかに、不可視魔ベリグレと呼ばれる者たちがいて、暗殺を得意としていた……それだろうと思う」

「見えない仕組みはわかるか?」

「わたし達の眼では見えない……竜の眼にしか映らないと言われている」

「……サリウドに頼るしかないわけだな」


 俺の言葉に、最後尾のサリウドが苦笑を返してきた。


「ただ、邪魔が入るとわからなくなる……人間の匂いも強くなってきたぞ……ここまでの奴らをくぐり抜けて進んでいる猛者たちに近い……四人いる」

「第一陣が残り四人かよ」


 俺の嘆きに、イングリッドが同調した。


「ああ……それだけ見えない敵と戦うのは厄介だということだ……でも、奴らがいるとなると、問題なのは竜の眷属がこれからは地上へと出没し始めることに繋がりかねないことだろうね……鉱山を塞ぐしかないけど、ゴート共和国はそれをするかな?」


 俺は、わずかな可能性を信じて、父親に話をしてみようかと思った。


 ゾルダーリ家には、きっと俺がここにいることは伝わっているだろう。父親の招きに応じて会い、情報を引きだすと同時に、危険性を伝えることができれば……いや、難しいか。全てが望み通りにいくとは思えない。


「おい、向こうも俺たちに気付いたぞ」


 サリウドの声で、俺は洞窟の先を睨む。


 壁面が濡れているのは染み出る地下水のせいで、そのおかげでイングリッドが水の精霊の助けを得ることができたおかげで、俺たちは視界を確保できていた。その変化の恩恵は彼らにも届いたようで、第一陣の生き残り四人が、俺たちを待っている。


 青年三人に女性が一人。


 俺は、先に手をあげて敵意はないと示して名乗った。


「応援だ。俺はエリオット・ヴィラール、仲間のイングリッドはエルフ、サリウドは人狼ウォルフだ。イシュクロンから竜を止めたくて来た」


 一人の青年が、俺たちを眺めて反応した。


「エリオット? ヴィラール? ……クリムゾンディブロ?」

「そう呼ばれている」

「……敵国からわざわざご苦労だな?」

「イシュクロンは竜王バルボーザ復活を止めると宣言した。聞いてないか?」

「知ってる」

「これは関係している」


 イシュクロン王国から依頼を受けているわけではないが、関係していることなのでこういう説明を選んだ。


 青年が名乗る。


「俺はレイハルト、彼はイーサン――」


 レイハルトは剣士っぽい。イーサンも同じく剣士だが、レイハルトのほうが大柄で重装備なので、前衛を務めるのが得意なのだろうと想像する。


「――リリーと――」


 リリーと呼ばれた戦士は、男かと思っていたら女性だったようだ。全身を重装備で固めていて、髪も短いし顔つきも凛々しいので男かと思っていた……先に知ることができてよかった。


「――ルーシーだ」


 ルーシーは見れば聖女だとわかった。アロセル教団の模様が入った胸当てに白の外衣にマント、鉄棍メイスに円形の盾……俺は前世でお世話になったパトレアを思い出す。


 リリーが口を開いた。


「悪いけど、うちらだけで大丈夫だから、あんたらは帰ってもらえる?」


 おお……強気な発言だ。


 竜の強さ、わかってるのかな?


 イーサンがリリーの肩を軽く殴った。


「リリー、失礼だろ? すみません」


 イーサンが俺たちにペコリと頭をさげた。


「悪い奴じゃないんですけど、こうなんです。でも危ないですから俺たちに任せてください」


 イーサンというやつも自信があるらしい。


 俺は、サリウドとイングリッドを見る。


 二人は、俺に目で訴えていた。


 好きにさせとけ……。


 了解。


「わかった。手を出さない。ただ、君らの撤退路を確保するために後ろをついていくよ」


 俺の提案に、イーサンが言う。


「それは助かります。ね?」


 彼に同意を求められて、レイハルトとリリーが仕方ないという顔で頷いた。


 一人、ルーシーという聖女だけが納得いかない顔をしている。


 彼女は、俺たちを見ながら三人に言った。


「せっかく、ご助力くださるというのに……相手は竜ですよ?」

「君は俺たちの強さを知ってるだろ?」

「そうそう、あんたは神聖魔法で援護してくれたらそれでいいから、意見はいらないよ」


 レイハルトとリリーの言葉に、イーサンが慌てた。


「ルーシーさん、ごめんなさい。悪い人たちじゃないですけどね……もう、お前ら駄目じゃないか」


 四人は、三人と一人、という組み合わせだったのだとわかった。


 あの三人はもともとつるんでいて、生き残ったルーシーがそこに加わったのだろう。


 俺は、彼らが歩きだしたのを見て、後ろの二人に尋ねる。


「静観しよう。手伝おうとしたら、こっちに攻撃してきそうだ」

「ああ」


 サリウドが、やれやれと呟いて荷物を担ぎ直した。


 イングリッドが、俺の肩に手をおき、顔を近づけてくる。


 なんだ?


「エリオット……イーサンという男……前世のお前と同じだぞ」

「前世の俺と同じ?」


 どういう意味?


 俺が困っていると、彼女は「ああ、記憶を奪われているんだっけか」と言い、歩きながら小声で言う。


「イーサンは、異世界を経験した魂だ……前世のお前もそうだったよな? お前と暮らしたおかげでわたしにはわかる……大丈夫か?」


 大丈夫じゃない。


 ひどい痛みが……これまでのものよりずっと強い頭痛が……。


 痛い!


 イタタタタ……ちょっと待って!


 滅茶苦茶に痛いんだけど!


「エリオット?」


 歩けなくなって、うずくまる俺の背をイングリッドが撫でているのがわかる。


 俺は、例の頭痛だと答えたいのに、ひどい頭痛で声を出すこともできない。


 なんだ?


 異世界を経験し――ぐあああああ!


 俺は、頭を襲う激痛で倒れてしまう。


 サリウドに、抱きかかえられたところまでは意識があった……。




 -Elliott-




 レイハルト、イーサン、リリーの三人から、迷惑だとはっきり言われた。


「頭痛持ちに何ができるんだよ?」


 レイハルトの指摘に、気絶してしまった身としては何も言えない。


「クリムゾンディブロの噂も、誇張がひどいんだろうね」


 リリーの嫌味に、反論したところで時間の無駄だとわかって黙った。


「無理はしないでください。僕たちに任せて」


 イーサンの笑みに、こいつが一番、俺を馬鹿にしているなとわかった……。


 四人が洞窟を下へと向かう。


 俺たちは、その後ろを守るかたちでついていく。彼らの荷物を持っているのは、彼らが戦いやすいようしてやろうと思ってのことだ。


 イングリッドが、俺の隣で詫びを口にした。


「ごめんなぁ? あんなに痛がるなんて思わなかった」

「いや、お前は悪くないよ」

「でも良かった。気絶した時、どこもぶつけてないから」


 そうだ。転んで頭でも打ったら笑い話にもならない……。


 それにしても……俺は頭痛に襲われたのに、何も思い出せていない。


 だから、また頭痛に襲われないように、慎重に言葉を選ぶ。


「イングリッド、さっき、お前が言った前世云々に関しては何も思い出せない……これって初めてのことだ。だから多分……取り戻せない呪いなのかもしれない」

「……そういうことか」


 イングリッドは少し考えてから、俺に言う。


「覚えているのは、ひとつ前まで……ということだな」

「ひとつ前?」

「それでも稀だろう……つまり、転生の輪にとりこまれた魂は、ずっとずっと前の経験までを覚えているというものではなくて、現世からみて、ひとつ前……前世までのことしか記憶できない制限がある。前々世のことを思い出そうとしてもできない……」

「……それは、冥界を管理する竜王バルボーザの仕業なのかな?」

「そう考えるのが妥当だろうと思う。ただ……いや、よそう。また気絶するほどの痛みに襲われたくないだろう? 痛いだけで、何も得るものがない」


 ここで、サリウドが俺たちに言う。


「前の四人、もう少しで敵とぶつかるぞ」


 サリウドに寄れば、水が流れる音が前方から聞こえていて、そこに化け物の呼吸音がするという。


「見えない敵かな?」

「どうだろう? 音だけではなんとも……あ」


 サリウドが前を見て固まった。


 イングリッドに力を貸す水の精霊が、洞窟の中を照らしてくれているおかげで、その姿を視認できた。


 洞窟はそこで、広くなっている。


 幅八メートル、高さ四メートルほどの空洞の地面は浅瀬で流れがあった。


 それらは、浅瀬に立っている。


 獅子に似た頭部をもつ化け物の身体は大きく、身長は二メートルほどで、右手には大剣が握られている。身にまとうものはない。その獅子のやや後ろに、山羊の頭部をもつ化け物がいて、大きな鎌を手にしている。こちらの身体は女性のものだと、膨らんだ乳房でわかった。


 それらが下位の悪魔族とは違うとわかるのは、まとうものの邪悪さであった。見ているだけで汗がにじみ出て、呼吸が荒くなる。これは上位の悪魔族に備わっている恐怖を撒き散らす能力ディマーエンケンディレイの効果だろう……そして目の輝きは赤く強く竜のごとくで、こちらを見ても動じないのは弱者を前にした強者の余裕とも受け取れる。


 四人が、その化け物へと武器をかまえて突進した。


「エリオット、彼らがあれを倒すことができるほど強いなら、あの四人はベナトナシュを倒せるかもしれない」


 俺は、初めてみる化け物が何であるのかわからない。


「イングリッド、あれはなんだ?」

「……魔神ロードだ……それも二体……強いぞ」

「助けるか?」


 俺の問いに、イングリッドが答えようとした時、イーサンの声が聞こえた。


「隠れていて! 全力を出せない!」


 ……俺は、危なくなったら助けようと決めて、イーサンの指示に従うべく後退した。


 魔神ロードの強さと、お前らの戦いぶり、観させてもらうよ。

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