第0章 再び
初めまして。 今回、初投稿になります。誤字、脱字が無いようにこれから投稿し続いて行こうと思っております。
男はベッドの上で目覚めた。
すぐ間近の窓のカーテンに覆われた隙間から、陽の光が
差し込む。
六畳間の狭い部屋が一瞬、暖かい空間に包まれた様な
錯覚に捕らわれてしまった。 男は笑顔で立ち上がって
おもむろにカーテン、窓を開けてベランダ前の柵まで
歩み暖かな春の日差しを前に、目を閉じてこれまでの
出来事を振り返っていた。
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(俺は、弱い。とてつもない弱い)
心で呟きながら突如襲い掛かる群衆に、男は一本の剣で
暗がりの中、次々と薙ぎ払っていく。
ちなみにどうしてこんな薄暗い路地で闘っているかと
いうと、ある人物の指示で動いているからだ。
群衆は年齢、背格好も服装もバラバラだか唯一の共通点は
精気のない目だけだった。男が持つ剣は鞘に収まっており
、巧みに操りながら的確に急所を狙い気絶させていく。
5分と経たないうちに群衆を全て鎮めた直後、剣は夜の
月明かりに照らされて異様な姿が露わになる。鞘の装飾は
龍が鍔に向かって巻き付いており鍔の形状は鉄十字に
トライバル柄の龍の頭部が彫り込まれ柄は尾を象った姿が
男の手に収まっていた。
その場を立ち去ろうとしようとする直後、男の名を呼び
ながら一組の男女が走りながら近づいて来る。
「も~なんで、あっ君はいっつも
勝手な行動ばっかりするのよ」
「まりちゃんの言う通りだよ。何であっ君は
僕達を置いて行くんだよォ~」
男はウンザリした表情を、あからさまにしてその場を立ち
去ろうとした刹那、不意に女が大声で男を呼び止めた。
「神条 暁人」
「怒鳴るな摩璃子」
「気絶している人達をそのままにして行くの?」
女、摩璃子は頬を膨らませて俺を引き留めた。
「そ~だよぉ~、見たところ10人はいるし
僕達だけじゃ手が足りないよ」
溜息ついでに男を見た。
彼の名は皇 陽斗、そして飛鷹 摩璃子とはいわゆる
一つ屋根の下で暮らす腐れ縁というやつだ。俺達は揃って
身寄りが無く、とある事情で幼少の頃からある一家に
ご厄介になっている。仕方なく無言で手近な男を肩車で
抱えて、目の前にある公園まで歩き始めた。
陽斗、摩璃子も続いて気絶をしている奴らを連れて来る。
襲い掛かってきた奴らを全て公園に連れ終え、今度こそ
後処理を任せて帰路につく。
「まったく本ン当ぉ~に勝手なんだから。陽ちゃんも
たまにはガツンと言ってよ」
「まぁまぁ、今は通報しなきゃ」
陽斗は暁人を心配そうに見つめながら、警察に連絡する
べく公園の出入口そばにある電話ボックスへ向かう。
そんな彼等のやり取りを背にして既に疲れ果てていた。
(俺は、俺はいつまでこの状況を繰り返せばいいんだ)
そんな心の叫びも届くはずもなく、見上げた夜空の星々は
何も答えてくれなかった。
次回の予定になりますが原稿が完了次第となります。可能な限り、早期投稿を目指しておりますので暖かい目で見守って頂ければ幸いです。ここまで読んで頂き、誠にありがとうございます。