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怪談「お化け屋敷のバイト」

作者: VLP

 

 このお話は後輩が大学生時代の学友から聞いたお話だそうです。


 この後輩、ある地方の大学に行っており、そこで知り合った学友Aさんが体験したお話です。


 このAさん。とにかく色々なバイトをしている「バイトマニア」な奴で、大学なんてそっちのけで日々バイトに明け暮れていたそうです。


 喫茶店・中華屋・レストラン・居酒屋などの飲食系や、建設現場・道路工事・交通整理などのガテン系、イベントの進行・ぬいぐるみの中の人・屋台・治験などなど・・「やれることは何でもやる!」と本人が言うだけあって色々なバイトをやっていました。


 そんなAさんがあるイベントの裏方のバイトをした時、イベントの会社の社長さんと知り合う機会がありその社長さんが「今度夏限定のお化け屋敷のイベントをやるのだけど、バイトくん手伝わない?」っと声をかけていただいたそうです。


 やれることはなんでも!っと豪語する奴ですから、「マジっすか!やります!やります!」と二つ返事で飛びついたそうです。



 社長から話をもらってから1週間後、Aさんが指定された場所に来てみると、そこは小さなビルでした。このビルは大手デパートの横にありそのデパートの所有で、過去にもいろいろなイベントに貸し出される三階建てのビルでした。


 そのビルの前には白いボックスカーが止まっていてそこには、社長と社員と他のバイトが数人いました。社長がAさんに気が付き「おお!Aくん!こっちこっち!」と声をかけ、そこで軽く自己紹介と仕事内容の確認をすると、「じゃあAくん。ここの荷物をみんなで運び入れてくれ! さ!みんなも!ジャンジャン運んじゃってくれー!イベントまで一週間切ってるからちゃっちゃとやって・・・今夜はみんなで飯いこうw」集まっているバイトは大学生ばかり、暇と体力はあっても金のない学生にとって、飯の誘いは魅力的だったらしく、Aさんも含め全員が「おっしゃ!」っと気合を入れて仕事を始めたそうです。


 社長も含めた社員とバイトの全員で設置を進め数日、何とか予定していた日にお化け屋敷を立ち上げることが出来ました。



「納涼!お化け屋敷!」なんてベタな名前のこのイベントは、三階建てのビル全部を使ったお化け屋敷イベントで、今年で三回目となるそこそこ知られたイベントだったようで、客の入りもなかなかなモノ、近所の子供から若い女の子までわいわいきゃーきゃーと実に楽しそうでした。

 そんな中、Aさんはデパートで配られているチケットの半券を切ったり、中でお化け役をやる方に飲み物を届けたり、アンケートの回収や声を出しての客引きなどなど、バイトマニアの本領を遺憾なく発揮した裏方をせっせとこなしていました。そんななんでもこなすAさんを社長も気に入り、「いやあw下手な社員よりよっぽど働くし有能だよw」なんて可愛がってくれました。


 夕方になり、午後5時でお化け屋敷は閉まり一階の休憩室にスタッフ全員が集められました。


「皆!今日はお疲れ様でした!今日の一日目!去年を大きく上回るほどの大成功でした!これもみんなのおかげです!ありがとう!」そう笑顔でみんなを労う社長にスタッフ一同全員笑顔で拍手をしました。「ありがとう!本当にありがとう!」そう言いながらスタッフ全員の顔を見渡す社長、そして「おし!今日は俺のおごりで飯いくぞ!明日からの二日間・・この調子でみんな頑張ろう!!」そういい、みんな笑顔で一日目を終えました。



 社長のおごりで向かった場所は品のいい感じの飲み屋さん。その奥の座敷を社長は事前に予約していてぞろぞろと社長を先頭に皆入っていきました。全員座り、社長の音頭と主に宴会が始まりました。


 しばらくして、皆いい感じに酔っ払い明日もあるという事で午後九時にはお開きとなりました。その際社長がAさん達バイト組に「あーもし明日時間ある人いたら1~2時間早めに入ってくれるかな?アンケートの集計とチラシ配りなんかをお願いしたいんだけど?」そんな社長にAさん達数人が「はい良いですよ?w明日じゃあ早めに入りますね!」と了承しました。



 次の日、その日は朝から熱くまさに夏真っ盛り!お化け屋敷日和でした。昨日の約束通り2時間早く来たAさん達は休憩室の机に向かいアンケートの集計班とチラシの準備班に分かれ仕事を始めました。Aさんはアンケート班でした。


 楽しめたか?・怖かったか?・また来たいか?・最後にフリーの感想欄・・ごく普通の簡単なアンケートの集計、そのなかでAさんは最後のフリーの感想欄をチェックする担当をしていました。


「怖かったです!」「面白かったです!」「また来たいです!」「夏のいい思い出になりました!」などの好意的なご意見と「空調が利きすぎて寒い」「もう少し順路をわかりやすくしてほしい」「暗すぎて2階の通路にもう少し明かりが欲しい」などの有り難いご意見と「くだらない」「つまらなかった」「白紙」などの貴重な意見などそんな多様なご意見を集計していました。



 ご意見をまとめているとAさんはある事に気が付きました。それは「一階の後半にあった足を引っ張る手は転びそうになって危ないのでやめた方がいいと思う」というご意見が数枚あった事でした。


 本来お化け屋敷は怖がらせたり驚かせるのが基本ですが、それはお客さんの安全が大前提の話。つき飛ばしたり、転ばしたり、怪我につながるような演出は一切するはずがありません。そのはずなのに足を引っ張る手の演出なんて・・・そんなものあるわけもないのでその場にいた社員さんに声をかけ「すみません。このアンケートの何んスけど・・・」っと見せるとその社員さんも「んー・・こんな危ない演出。どこにもないぞ?」っと首を傾げました。


 二人で首を傾げつつ、もしかしたら何か出っ張ってたり不具合でなにかの装置が動いているのかとその社員さんとAさんの二人でアンケートに書かれていたであろう現場に行ってみました。


 そこは、一階入り口から三階へと上がり、上がった先から二階を通ってまた一階へと別順路で下がっていく・・・そんな順路の二階から一階へ階段をおりて曲がった、最後の廊下でした。そこは特にこれと言った仕掛けも無く、真っ暗な廊下の先に明かりがぼやーっと見えて知らず知らずに早足になってしまう心理を突くだけの演出のみでした。


 そのくらい廊下を社員さんと二人で進むAさんは「まー・・特になんもないですよね~」っとあちこちを懐中電灯で照らしながら進むのですが、突然横を歩いていた社員さんが立ち止まると、なんだかガタガタと震えている・・・Aさんが「ど・・どうしました?」っと聞くとその社員さんは前方を指さして「あ・・あれぇ・・」っと震える手と声で指をさす・・その先には・・



 ぼやーっと光る明かり・・・それは廊下の突き当りに光源の代わりに設置してある古いブラウン管のTVなんですが、どうもそのTVの前に何かがある。それは天井から下に延び左右にゆーらゆらと揺れてTVの前を何度も通過している・・・それ、どう見ても人間の足でした。


 Aさんと社員さんはうわぁぁぁっと震え上がりその場に固まってしまった。そんなAさん達の前でまだゆーらゆら揺れるその足は突然ピタッっと止まり・・次の瞬間!


 ブツンッ ドサッ!


 そのまま廊下に落ちて消えていっきました・・・


 あまりの事にがくがく震えながら前を見ていたAさん、そんなAさんがTVのモニターを見てみると・・・そこには目が白目をむき舌がありえないほどだらーんと口から飛び出た男性の顔が映っていました・・・



「うわわわわわわああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!」



 それを目撃したAさんと社員さんは一目散に後ろの二階への階段を駆け上り、息も絶え絶えにみんなのいる休憩室へと逃げ帰りました。



 その後、今あった事を皆に告げるていると丁度社長も顔を出したのでそのまま報告。社長は真剣な顔をしながらその話を聞き終えるとこう言ったそうです。



「あのTVな・・あれ、知人にお化け屋敷やるならこれ持ってけって渡された奴なんだよ・・なんでも曰くつきのTVらしくって、きっと盛り上がるからって・・・」



 とりあえず、もう2度と戻りたくはなかったですが、社員・バイト・社長も含めてその現場に行き、そのTVを回収し、そのままTVをもって社長さんが懇意にしているお寺へと、Aさんと社員さんも含めてお祓に行ったそうです。そして、お祓いをしてくれた住職曰く、


「こりゃまたすごい物もちこんだねぇ。このTVね・・人が3人は死んでるよ」って言いました。「どういうことですか?」と社長が尋ねると、


「うん。このTV、三人の方がこれを踏み台にして首くくってるよ。」と・・・



 後日、社長がそのTVを渡した知人に話を聞こうと連絡を取りましたが・・・その知人とは連絡が取れなくなったそうです。  ちなみにその知人、不動産関係の社長をしているのですが、その知人が管理するアパートの一つが・・・自殺アパートとして業界では有名だったそうです。

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