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冒険をしない冒険者 ~TS相方とはじめる剣と魔法の異世界生活  作者: 凡鳥工房


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4日目の②.職服バザー

 昼食をとりながら聞いてみた。


「37番目のキャラでミーナ、38でミヤ、……40でシオなんです。シオンにしとけばよかったって思います」


 LLO以前のゲームではサム(36)、サンゴ(35)、ミッチェル(34)と遡っていく。

 僕のランド、リンド、レンド、ロンドよりもよほど考えられていそうだ。なおルンド君はいません。1(アカ)4キャラなので。


「私なんか、身近なモノをもじってつけてましたけど」

「ルピスって、某国民的RPGの精霊なのか神なのかよくわからないアレの名前を濁点じゃなく半濁点にしたのかと思ってました」

「違うって! そういう有名どころは避けますって!」


 結論。名前は大切だよ。

 でないと、主人公に自分の名前をつけたり、ヒロインに好きな子の名前をつけたりして、なんとも言えない思いを味わうハメになるからね。

 おとなになるってかなしいことなの……。


 午後いちの掲示板チェックでは拡張バッグが順調に値上がり中。


「ざっと見の最高値金貨15枚(15G)です」


 掲示板界隈、G=金貨(Gold)、S=銀貨(Silver)、C=大銅貨(Copper)のGSC表記が一気に普及した。

 略字略称はMMORPGゲーマーの嗜みですので。


 他にはLLO時代でもたいした値が付かなかった品には、【譲って】とか【あげます】とかの表題がついている。


「【なんでもいいので装備ください】ですって?」

「なんでもいいのは基本、処分してきちゃったんだよなあ」

「そうなんですよねえ」


 シオにあげたサンダルのように意図があって残したものもあるけれど、原則として店売り品同等の装備は処分してきた。

 それでもなお、2(アカ)8キャラなんてやってると、山成すほどに装備が残っている。


 単純に考えても、1種類の武器で6属性揃えるだけでも6本、それが4キャラ分で24本。8キャラならなんと48本!

 実際には、武器は複数種類揃えるし、防具もあるし、アクセサリもあれば趣味の頭装備もある。

 HAHAHA。


「イロモノ頭装備なら……」

「『ソレ』なんかもらっても困るでしょう?」


 渦巻き状の『ソレ』。

 捨てても捨てても簡単に手に入るので1個くらいは倉庫の肥しになっていた人も多いかもしれない。


「他には……【TS者限定、相談会】ですって」


 キャラがかわいいからという理由で、女(アカ)メインにしていた野郎は結構いたはずだもんなあ。


「タイミングが……。一線超えちゃった後なんだよなあ」

「そういうのも含めての『相談』だと思う」

「ですかねえ。顔つなぎの意味で、一回は参加しておきますか」


 そのまま隣のバザー会場へ。

 いくつかの天幕が張られ、机の上に職別で服が積まれている。


「こんにちはー、1対1交換なんですよね?」

「ですです。ルール通りにしないとゴネる人が出て面倒になるので」


 制服あるなら私服考えなくていいや派の僕としては、メイン職の服着とけばいいというのは苦にならない。

 バッグから、男服を騎士2着、BS、モンク、シーフの都合5着取り出す。

 交換してもらうのは男プリ2着、男Wiz、女プリに女バード。なお、男ケミを残したのは、丈夫なエプロンが色々使えそうだったから。


「プリ+Wizということは司教ビショップですね」

「地下1階に放置するのはヤメロー。僕は鑑定なんてできないゾー」


 由緒正しいネタを振られたので返しておく。


 ちなみにルピスは何を交換するか保留中。


「シオちゃんのサブ職決まってからでいいかなって。クルセ服あれば交換したかったんですが」


 居れば便利って理由でプリ持ち多かったせいか、プリ服は男女問わず多い。

 クイルセイダー(クルセ)のような癖の強い職は絶対数が少ないのかも。


 ついでに一角に積まれた本ってスキルブックだよなと聞いてみると、交換ではなく引き取ってと置いていく人が多いのだとか。

 そして積まれだすと、ここに捨てればいいのかとますます集まってくる現象。


「メイン・サブの職以外、不用品ですからねえ」

「あ、じゃあ私、まだ決まってませんがサブ職用に頂いてもいいですか?」

「どーぞどーぞ。幾らでも持ってっちゃって」


 言質は頂いたので、各職3冊ずつになるようにピックアップ、バッグに収める。


「鑑賞用、保存用、布教用の3冊セットですね、わかります」

「支援として全職把握しておきたいという建前があるのです」


 なるほどと、ルピスもぽいぽい自分のバッグに放り込んでいく。

 肝心のシオは、プリースト(プリ)アーチャー(アチャ)、ついでにハンター(ハム)のスキルブックを手に迷っていた。


「ランドさんルピスさんから、プリなら教えてもらえるかなというのと、アチャ・ハムは消したとはいえ過去職なので」

「僕の個人的な意見だと、攻撃手段は遠距離がいい。間近で敵と向き合うのは多分無理」

「そのあたりは『人による』でしょうが、バードとのシナジーも含め、よく考えてからでも遅くはないと思います」


 確かに僕やルピスは支援プリというあり方、役割に誇りを持っている。

 けど、直接戦力ではないことも充分に理解している。

 言い方は悪いけれど、戦う人を戦い続けさせるのが支援プリのお仕事なわけでございます。


 ゲームでは、誰でもどんな職でも活躍できる、役割を持てるようにデザインされているのが理想。

 その哲学のもと、LLOでは一定規模以上のPTでは支援プリがいないと成り立たないようになっていた。

 では、現実ではどうなんだろう。


 最後は結局、やりたいものをやるのが一番なのかもしれないし。


 バザー会場を去って二手に分かれ、僕は午後の倉庫整理。


 怪しい関西弁商人に生鮮食品押し付けロードの合間に探し物ひとつ。

 神様ありがとう案件で、倉庫内は種類別にまとまっており、さらに消耗品や素材などはある程度の数量ごとに木箱や袋に納められている。


 細かいモノが多いアクセサリも、ふたのないトレー状の容器に収まって積み上げられていた。

 目当ての物をサイドポーチに入れ、他はトレーのまま拡張バッグに詰め込み、クランルームへ。


 押し付け査定で、待ち時間を有効活用できるようになったことは本当に大きい。


 食糧処分ついでに空いた籠や箱を譲り受け、装備と一緒に部屋に持ち込んで容れ物に流用する。

 剣は剣で、杖は杖でまとめるだけでも片付いた感じになる。


 靴や服や帽子類、盾なんかを収納するための棚が欲しいか。

 クランルーム備え付けの家具類は、ベッドはあるがタンスはないなどちぐはぐだ。棚他の調達もメモにいれておく。


 夕方の鐘のあと、掲示板エリアで合流。

 なぜか逆毛ではないジルゲームスさんも混じった。


「整髪料、使うにはちょっと、臭いんだ」


 ゲームキャラとして突飛な髪型、例えば逆毛を現実に維持するには苦労が多いらしい。


 塩だとふわりとしてしまってパリッ感が出ないとかいわれても、困る。

 じゃあどこぞのパンクロッカーばりに砂糖水で、ともいえない。砂糖は貴重品らしいから。


「もうそのまま、ヤンキー小僧っぽい金髪無造作感でいいんじゃないですか」

「普段はいいが、こう、キメたいときってあるじゃないか。わかるだろう?」


 知らんがなと、シオの隣に移動する。


「拡張バッグ、最高値17Gでーす」

「あがってるなあ」

「『慌てる乞食は貰いが少ない』。俺なら、たとえ売るにしてももう少し様子見するな」


 そりゃあ競り上がってる真っ最中に手放す人はいないだろうさ。


「クランルームを借りるための【シェア仲間募集】か」

「それもアリでしょう。みんな、寝床かつ荷物置き場が欲しいんですから」


 【カンパ求む】が増えている気がする。

 だけど、僕は慈善事業家じゃない。


「知り合いなら、日銭ならともかくな。何が【ランクアップ代のカンパ】だ。こういうのがいるから本当に困っている連中が目立たなくなる」

「その、本当に困っている人を見分ける方法がないんですよねえ」

「私みたいな人は他にもいるとは思いますが……」


 別に僕が責任を感じる筋合いはないのだけれど、金銭的余裕はあるから、できるのにしなかったという自己批判が嫌だから、でも、知らない誰かへのただのばら撒きはもっと嫌で。

 思わずため息をついていた。


「いっそ、物乞いでもして見せてくれれば、その芸に対して喜捨をすることもできるんだけど」

(( それはアイデアでござるな ))

「……今の誰だ!?」


 周囲に人は多いものの、僕ら4人とはほどほどの距離感を保っている。

 今声がしたよね、ござるだよね、絶滅危惧種のと言っても、なぜか同情的な目で見られてしまう。


「ランドよ、考えすぎは良くないぞ」

「そうですね、今日はもう切り上げましょう」


 幻聴じゃないよなー、自分おかしくなってないよなーとセルフチェックを繰り返し、ルーム帰着後は【安息リポーズ】も使ってみる。

 スキルブックには「興奮を鎮める、落ち着かせる」効果があると書かれているが、特に変化なし。

 つまり、僕は落ち着いている。ゆえに、あれは幻聴ではない。Q.E.D.


「万一の想定はしておきたい」


 そんな平常心の僕なので、夕食後にサイドポーチから指輪を取り出してテーブルの上に並べるのも極めて自然な所作であったことだろう。


「『身代わりの指輪』。記憶にあるフレーバーテキストを信じると、行動不能(HP0)になる状況でもぎりぎり生存できるものらしい。2人につけていて欲しい。もちろん僕もつける」


 左手を差し出してくるシオに、ためらいつつ、やっぱり左手を差し出してきたルピス。


「……自分でつけて、いいのよ?」

「え、ここはつけてくれる場面でしょう!」

「そうですよ!?」


 指とサイズ合うのかどうかという懸念は杞憂だった。

 勝手にフィッティングしやがりましたよこの指輪。う~ん、魔道具ファンタジィ


「私からは、こういうモノをみかけたので買ってみました」


 ルピスが紐で束ねられた管状の物体をテーブルにのせる。

 左手薬指にチラ見えする指輪。達成感と罪悪感が入り混じって胸がいっぱいです。


「……これは?」

「サック、避妊具、つまり、コンドームのようなものらしいです」

「こんなん用意してくれるなんて、やっていいんですか?」

「やるにしても避妊大事ということです!」






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