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冒険をしない冒険者 ~TS相方とはじめる剣と魔法の異世界生活  作者: 凡鳥工房


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3日目の②.やってしまった

 夕刻、掲示板付近でルピスと話し合っていたら、群青色の髪をツインテールにした子に声を掛けられた。


「あの、ランドさんにルピスさんって、もしかして塔臨時の人たちですか?」

「え、はい、そうですが?」


 臨時とは、臨時の狩りPT(パーティ)

 僕とルピスで、行先を塔にして募集をかけたものです。

 移動狩りが前提になるのでお座り公平みたいな養殖PTいないし、それなりに高レベル帯で実入りもおいしい、穴場的な場所でした。


「お願いします、助けてください」


 ツインテール頭が下げられる。

 だぼっとしたキュロットから伸びる白タイツは吟遊詩人バード服。


 課金アイテムで色変えチケットが出た時、これは聖戦なのだと課金容認に転んだ黒タイツ派を思い出す。

 なお、色はランダムだった模様。集金の為なら狡知をめぐらす運営への怨嗟の声が木霊したものだ。


「塔臨時の常連さん?」

「別キャラで、アーチャー(アチャ)やってました。何回か参加して印象に残ってます。毎回レアが出るリアルラックすごいし楽しいな~って」


 ルピスによる質疑応答によれば、名前はシオ。

 受験のためにキャラ消し(デリ)引退したけれど、イベント当選した髪型ツインテールのキャラだけは残していたことで、例の招待状を受け取ったという。


「何をすれば助けたことになるのかな?」

「それは……」


 返答中にかなり大きなお腹の音。これ以上ない返答ではある。

 よくよく見れば顔色も良くない。

 ていうか裸足だよ、この子。


「……当座の食事、生活費分のお金をカンパすればいい?」

「あ、あの、寝場所とか……っていうか、まるっと面倒見ていただくわけには……いきませんよねえ、やっぱり」

「ちょっと待ってね」


 しおれていくシオ嬢に、無駄にオヤジギャグを連想してしまう。


「私たちを知っているようですし、面と向かっちゃうと見捨てるのはきついです。当面の面倒はまあ、ありかなと?」


 こういう形で過去が追いかけてくるとは。

 情けは人の為ならずとはいうけれど。


「怖いのはこれが演技だとか、悪質なタカリだとか」

「疑うと、きりがないのが人間の闇ですよねえ。さすがに演技とは思えませんが」

「まあねえ」


 演技で腹の虫を鳴かせられるなら、そりゃもうプロだ。


 裸足のママというわけにもいかないので、とりあえずサンダルをあげる。

 限界まで強化済みで【消音】を付与してあるが、実のところは装備にLv制限があった場合の対策として残した低級品に、余った強化・付与突っ込んだだけなので、仮に持ち逃げされてもまだ諦めのつく品である。


 自分への予防線はともかく、胸に抱くんじゃなくて履いてちょうだい。


「ありがとうございます! 大切に履きます」

「3日か10日か1か月か。その間に身の振り決めてもらう感じ?」

「そんな感じでぜひ、ぜひお願いします!」

「じゃあ、僕はも一度倉庫へ。替えの靴とってくる」

「私もついていきます!」

「私は食事など細々買い物してから戻ります」


 なんだか、捨てられまいと必死にアピールしてくる子犬というか。


 ……いや、そうだよな。

 知らない土地で身一つほぼ文無しの着たきり雀。

 どんな儚い縁でも『知り合い』見かけたら、僕だってこうする。プライドもクソもなく縋り付く。


 クランルームではシオ嬢をリビングの長椅子に案内して、僕は今回の持ち出し装備を自室にポイ。調味料などはキッチンへ。


 まだまだ在庫のある『ハーブティ』に、お茶請けは『グランマのフォーチュンクッキー』を添えて。

 きょろきょろしていたシオ嬢とは別の椅子に腰掛けたタイミングで、深々と頭を下げながら赤い太蝋燭が差し出された。


「本当に、ありがとうございます。あの、残ってたのこれくらいしかなくて、とりあえずお納めください」

「『アロマキャンドル』だっけ。バードのクエスト(クエ)でランダム3択の」


 買取に出せば換金できるのではと問うてみるも。


「いえ、サンダルの御礼もですし、タカるしかないにしても、だからこそ差し出せるものは出さないといけないと思うんです」


 覚悟か、最後の自尊心か。

 受け取るまで頭を上げないという強い強い意志を感じ、やむなく手を伸ばす。


「せっかくだし。アロマで落ち着こうか」


 サイドポーチから受け皿とマッチを取り出し火をつける。


 持ち込めたということはこの世界にも存在するはずなのだが、処分するより手元に取り置きたい品も結構ある。

 さっきの調味料に、このマッチもその一つ。

 僕にプリミティブな火おこしなんて無理だもん。


「……甘い匂いですね」

「くつろぎの香り(アロマ)ってヤツなのかなあ」


 ルピスまだかなーとのほほんとしていたら、身体の芯が熱くなってきて、無性にうずいてきて。

 あれ、変だぞとシオ嬢を見れば上気して、息が荒くなっている。


「私、すごい、むらむらしてます」

「これ、ヤバイかも?」


 火を消そうと手を伸ばすが、身を乗り出してせまってきたシオ嬢が身体ごとぶつかってきて圧される。


「さしだせるものって、やっぱりコレですよね、身体ですよね」

「そうかもだけどそうじゃないから」


 振りほどいて逃げるが後ろから腰に抱きつかれる。


「あ、かたい」

「待って、待って待って」


 下半身は今にも暴れ出しそうだし。頭がぼーっとしてくる。本格的にマズイ。


「ただいまー。……なんの匂いですか?」

「ごめんるぴすぅううううう!」

「ふぇ!?」


 シオ嬢を強引にうっちゃりルピスに飛びかかりました。まる。



   ☆



 僧侶プリスキル【光球ライト】で生み出されたやや青白い光を放つ球が天井付近に浮かんでいるリビングで、床に正座する3人。

 バンバンと、床が叩かれた。


「説明してください」

「私の、『アロマキャンドル』、めっちゃ、ムラム~ラ」

「超媚薬? 意識限界、ルピス・イン。限界突破でレディ・ゴー」


 美人って、怒り顔も綺麗なんよなあ。


「私、中身男だって、知ってたのに襲ったんですか?」

「え!? 男!? 雌の顔してましたよね?」


「……してた?」

「してました」

「えぇ……そっかぁ……」


 見ず知らずの少女と、相方の元男(TS美少女)

 結局、両方とやってしまったのは僕です。


「ランド、マジカル☆珍宝(マジチン)?」

「ちがうし、ていうかルピスこそマジやばの名器」

「知らないし!」

「可能性としては、Dex補正的な?」

「ステ補正かあ……そっかぁ……」


 そもそもマジチンものは洗脳くさくて好きじゃないんだよ。

 けど、通常あり得ない連戦連発に、元男をシオ嬢判定『雌の顔』させるなんてファンタジーなわけで……。


 ふと思うところあって【解毒キュア・ポイズン】を自分にかけたところ、身体からなにかもやっとしたものが放出される。

 それを見て、ルピスも自分とシオ嬢に【解毒キュア・ポイズン】をかけた。


「【解毒キュア・ポイズン】さん毒物判定いただきましたが、いわゆる媚薬かな、これ」

「なんでそんなもの」


「バードクエの3択、『吟遊詩人の帽子(砂布巾帽)』と『アロマキャンドル』と『タンバリン』」

「ああ、200,000(200K)Zoltで売れる換金アイテムですよね。……リンゴ2Zoltの世界で200K」

「『アロマ』とは媚薬の隠語だった!?」

「ヤバイ代物でしたね、この身で知りとう無かったですが」


 ルピスは、目元をもみながら大きなため息をついた。

 立ち上がって服を拾うしぐさのひとつひとつがエロい。【解毒キュア・ポイズン】は効いたはずなのに、まだ残っているのか?


「シャワー行きましょう。シオちゃんも。これ、下着の替えです。かごの中に布巾もあります。ランド、換気と掃除よろしく」


 身を整えた後はルピスの買ってきたパンと焼肉でお食事。


「ランプ買ってきましたけど、【光球ライト】あったんですよね」

「【光球ライト】も【解毒キュア・ポイズン】も使えちゃったけど、生活をスキル頼りはいかんでしょう」

「色味的にも、特に食事時は暖色がいいですよね」


 一息入れた後にシオ嬢の処遇について。


「シオちゃんは、もう、クランにいれて面倒見るしかないのでは」

「はい、はい! 入れてください。ランドさんとルピスさんならほら、塔臨時で人柄はなんとなーく」


 信頼が重いですね。


「それにその、……はじめてだったのに、気持ちよかったし。なるべくなら、他の人に股開くのはイヤだな~って」

「まあ、私としても女にされるなんて初めての経験なわけなのですが」


 責任が重いですね。


 受験引退云々のプロフィールをほじくり返せば、本来は一回り以上、下手すれば二回り近く歳が離れてるわ。


「福祉の大学を出て介護職に就いたんですが、まあ、イロイロ」

「転生決めた事情は人それぞれありますよねえ」

「しかし、ルピスさんって元男なのかあ。LLOの時から女性だとばっかり」

「ですます調の文字だけだとそういう勘違いもあるっぽいですね。ランド……さんは最初っから『中身男だろ』って接してくるので楽でしたが」


 ネットオカマ(ネカマ)という存在には遭遇経験があったし、LLOというゲームを、女キャラがかわいいから女(アカ)でプレイという人も多かったし、何より、「新右衛門さーん」と呼びかけたら「殿中でござる」と斬り返してくるのが女性だとは思いません。


「そっか、元の性別と違う人もいるのかぁ」

「いるんですよねえ。多分、それなりに」


 貧すれば鈍す。余裕を失うというのは怖い。

 視野は狭くなり思考は硬直し、どんどん悪循環に落ちていく。


 文無し物無しでは、誰かに身体を差し出すという方向も考えにはあったろう。

 その相手が、予想外のアクシデントで僕になってしまったわけですが。


「あ、お二人の仲に割り込む気はないんで。お妾さんとか、愛人とか、そういう扱いでOKですので」


 ……最初からの計画的犯行ではないよね?

 いやもう、そこまでの演技派なら騙されても諦めがつくけれど。

 これで持ち逃げ上等されたなら、僕は人を見る目の無さを自業自得と納得するしかない。


 僕らはシオを、クランに迎え入れる事にした。


 そんなこんながありましたが、同じ部屋で横になっています。2段ベッドの上と下。シオはルピスと一緒。


 2段ベッドは2台ある。だがすげなく拒否された。


「一人になりたくないです」

「なんだよね~。……しっかし、新居を借りた翌日に若い女を連れ込み薬物レイポゥとか」

「家庭板案件必至ですね。原因の私が言うなですが」

「しかも私まで! 元男の私まで!」

「せやかて自分、己がどんな姿かわかるやろ。それで抜かずは失礼というもの」


 気合入れてキャラメイクしたやろ。趣味とか嗜好とか性癖とか全部ぶち込んで。


「そうかな……そうかも……」


 ……意識ぶっ飛んでて正解だ、これ。

 致してる最中におっさん顔がうかんだり喘ぎ声が再生されたりしたらいたたまれない。


「実際、元男相手ってどうなんですか?」

「今、ルピス……本名何某(なにがし)さんに関する過去を存在しないはずの記憶に書き換えてるからちょっと待って」






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