表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冒険をしない冒険者 ~TS相方とはじめる剣と魔法の異世界生活  作者: 凡鳥工房


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/39

2日目の④.クランルーム

 クラン会館にて、2階広場側南東角部屋の内見を行い、即決でした。


「ここにしましょう」

「支払は任せろー(バリバリ)」

「やめないで!」


 係員さんがニヤニヤしている。


「男の甲斐性ですね~」

「反射でネタ返ししてしまった件。割り勘でいいですよ?」

「マカセロー」


 事務室に戻るついでに軽く1階の説明もしてくれる。

 外部テナント区画にラウンジやホール・会議室、守衛室や厩舎などもあるそうだ。


「クラン増員の際は、うちと冒険者ギルドで登録お願いしますね~」

「両方で手続きいるんですね」

「うちは、クラン会館の利用者を把握しないといけませんから。冒険者ギルドさんはクランメンバーの登録、冒険者証に記載しないとですしね~」


 クラン会館って、冒険者ギルドの一部署ではなく関連団体なのかな。


 契約書類の作成と注意事項の伝達があり、壁に貼られた各階ごとの部屋割り図の該当箇所に『ファーレンリ』と記入。

 早見表らしきもので確認し、金貨なら9枚、銀貨なら144枚と請求してきた。


「階ごとの各硬貨での枚数のまとめですか」

「両替の絡む計算は時間もかかりますし、間違うと大事ですから。窓口業務ではこういうものが欠かせませんよ~」


「計算も特殊技能ですものね」

「ですです。小耳にはさんだんですが、あなたがた神託の冒険者は大体の人が読み書きできるとか、本当ですか~?」

「ええ、まあ」

「教育を受けているということですね。トンチキの相手が減るのは助かります~」


 言葉は通じても会話が成立しない輩はいるけどね。

 ゲーム内だと、そう輩ほど無駄に活動的で絡んでくるまである。


「そういえば窓口担当って、読み書きできるうえに身元も確かなエリートさんなんですよね?」

「ええ、まあ。うふふ」


 冒険者ギルドでの才女さんもそうだけど、窓口や受付やってる女性って割とお嬢様っぽい雰囲気がある。


「こちらの慣習に馴染んでいないので率直にお聞きします。今回の『心付け』、どのくらいが適切なんでしょう?」


 才女さんたち?

 言い出す前に終わりです、お帰りはあちらって丁重に送り出されてしまったので。


「お気持ちだけで充分です。神託の方々とはいえ、冒険者相手にタカるほどおちぶれてはおりませんので~」

「いえ昨日、武具買い取りの時に……」

「あー……騎士団の、アレですね。昨晩、溺死なされたそうで」

「「え?」」


 昨晩、例のワイロ問題を提起してくださった騎士団でも地位のあるお方が、旧市街で『酔って水路に転落、溺死』するという痛ましい事故が起こったそうだ。


 なお旧市街というのは、この特区以前の囲壁内のことではなく、いわゆる上流階級用の区画のことらしい。

 王都の囲壁は何回も拡張されているそうで、古い街区ほど、偉い・高いんだそうだ。


「事故ですか」

「……真面目な話、素行がアレとはいえ貴族様でしたし、本当に事故だとしても、事故として処理するには上のほうの判断が必要なはずなのです」

「闇が深くなりましたね」

「王都の、貴族の闇は深いのです」


 無意識にサイドポーチをまさぐって、『気持ち』の大銅貨をスッ。無言でスッ。

 タカりはしないが拒みもしない。そういう文化なんだよなあ。


「出来の悪い者、性根の曲がった者、欲深な者は、どこにでもいるのです。もちろん私は、貴族様や冒険者ともめようとは思いませんが」

「私たちも、あえてもめたい訳じゃあないんですよ~」


 ルピスさん、口調移ってる。


「それはそうですよね~。というわけで、お渡しできるカギは2本です。それぞれでいいですね? ここ持って、差し込んで……はい、登録できました」

「2本だけなんですね?」

「職人さんの問題で、しばらく増やせないのでなくさないでくださいね~」


 このカギ、登録者以外が手にしても、扉側との認証(?)が行われない魔道具で、つくるのに手間も費用もかかると言われちゃう。

 意外に高度なセキュリティ。

 ……新築をいいことに設備を盛りまくったモデルルーム説、濃厚です。


 改めてルピスと2人で、契約を済ませたばかりの我らがクランルームの前に立つ。


「どうぞどうぞ」

「どうぞどうぞ」

「いやいやどうぞどうぞ、ってこれ3人いないとオトせない」

「www」


 誰が扉を開けるのか。ダチョウ倶楽部的コントをやるには人数不足が露呈した。


 ルピスからカギを借りる。開かない。

 ルピスにカギを返し、自分のカギで……開いた。


「魔法や、魔法は本当にあったんや」

「割と感動しています」


 カギと扉で魔法的な認証とか、異世界感出てきましたよ。

 科学技術で似たようなことやってるとか言わない。


挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)


 間取りとしては、玄関ホールを抜けた先にリビングが鎮座し、そこから各個室やダイニング、キッチン、トイレ/シャワー室へと接続している。

 個室は大小3部屋ずつ。全部屋に2段ベッドが2台設置されていた。


「4人×6部屋で24人も詰め込む計算?」

「詰め込むなら大部屋にもっと置けますし、収納スペースを兼ねた『高さを稼ぐ』家具なのかも?」


 ご家族で住むマンションなら余裕のある総面積だけど、ここはあくまでもクランルーム。

 冒険者なんて立って半畳寝て一畳という認識なら、24人もありえる。


「いずれにしても、倉庫から持ち出す場所を確保できてよかったです」

「実は、トイレを確保できたという安心感も」

「……わかります。シャワーと同室に設置というのが気になりましたが」

「賃貸のユニットバス? セルフ・ウォシュレットできるという見方も」


 防犯上は窓が気になるが、窓のない小部屋を占領したいかというとそれもちょっと。

 窓無し小部屋は倉庫にしてしまうのも手かな。


「小部屋を物置にしたいのは同意なんですが、嫌な予感があるんですよ。そして嫌な予感って、大体当たるんですよねえ」

「マーフィの法則的な何かですね、わかります」


 とりあえず、窓付きの大部屋を1部屋ずつ自室として確保。


 手続きで時間を食い、太陽もだいぶ傾いていたので、夕飯を新居で一緒に食べようと約束して神様倉庫へ。

 せっせとブドウを買取に出し、無事に部屋を確保できたと礼を言っておく。


 夕を告げる鐘のあとは、各拡張バッグに支援プリとしての装備を詰めるだけ詰めてマイルームへ帰還。


 だだっぴろいダイニング備え付けの食卓に『魅惑のキノコワイン』を1本と、『お肉たっぷり春巻き』を提供。

 メインはルピスの買ってきたパンに串焼き、野菜スープ。


「ショルダーバッグですか?」

「僕の手持ちショルダーバッグ1個だけで、ルピスどんみたいにフルアーマード・シェルパになれないんだ」

「ああ~。1回で持ち出せる量が変わりますもんね。いいですよ、ランドさんはサイドポーチ余りでしたよね、交換しましょう」


 貴重品だからねえ。貸し借りでさえどうかと思ったけど、あっさり交換を承諾してくれた。

 持つべきものは頼れる相方。はっきりわかんだね。


「私もサイドポーチ1個だけで予備欲しかったですし、いい取引(グッド・ディール)ってヤツですよ、きっと」


 食後、太陽が落ちきる前に急いでシャワーをすます。

 窓のない奥まった場所なので、もうほとんど感覚だけが頼り。


 タオル代わりにシャツで身体を拭いて、簡単にもみ洗い。2段ベッドの端にかけておく。

 同じおパンツをはくしかなかったのが微妙に不快感。

 上は別の職服を着るという手があるけど、下着は替えがない。


「ランドさん、女プリいましたよね。というか、女服と男服交換してください」

「了解」


 それぞれ自分の部屋は確保したけれど、まだ寝ませんよねと、同じ部屋の二段ベッドの上下で横になってあれこれ話しが弾む。


 ベッドといっても寝具のない木の板むき出しなので、触感は床で寝るのと大差ないハズだが、それでもベッド。

 文化的・文明的矜持ってヤツなのだ。


「せめて毛布は欲しいある」

「ですねえ。洗剤、桶各種、タオルに下着……照明器具も探さないと」


 引っ越ししたての物入りですね。

 腐りそうなもの処分進めたかったけど、生活を作るのが先か?


「期限のある倉庫処分が先かなあ。私の方はそこまでありませんし、とりあえずの品を見繕いますよ?」

「頼みます。お金わたしとく?」

「じゃあお家賃清算しますか? 雑貨程度なら出しますって」

「いつもすまないねえ。あたしがこんな身体でさえなけりゃあ……」

「おっとう、そいつは言わない約束ぅって、ランドさんお金持ちですもんねえ?」

「ルピスさんだってコンバート前でギガ(G)Zolt超えたとか言ってませんでしたか?」

「お互い、お金には困らないでしょう、多分」


 合流し、一緒にクランを設立し、部屋も借りた。


 この先も相方としてやっていけるか、大事なことを聞かねばならない。

 気まずいけれど、避けては通れない。精一杯何気ない風を装って、冗談めかして切り出してみる。


「見た目だけなら若夫婦なんだなあ」

「いや本当に、やっちゃったなーってのと、どうしたもんかなーと。一応、心は男ですから」


 見た目は美少女ですがね。

 相当気合入れてキャラメイクしただろって、抑えめの曲線美でありながらナイススタイル。特に尻へのこだわりはさすがです。実にまろい。


「男の事情に詳しいルピスどんにお願い。あのへんやそのへんはご勘弁」

「シャワー室でお願いします。あ、見抜きは勘弁してくださいね」

「見抜きできる距離感なら襲っちゃうかも?」

「あ~れ~……というか、勃つものです?」

「『男のにだって勃つ、むしろ男のだから勃つ』と言っていた人がそないなこと言わはられても……」

「二次元だからっ! あれは二次元だから!」


 ……いやほんと、人は見た目が9割って言うじゃないですか。

 見た目が女の子のなら女の子と認識してしまうんですって。


「もともと女だったなら……付き合いも長いですし、そういう関係でもおかしくないんですが」

「意識してまう~」


 2段ベッドの上下でごろごろしながら話しているだけなのに、なんかいい匂いまでしてくるんじゃあ。


 だが落ち着け。

 どれだけまろいお尻や美少女スメルでエロスを刺激してきても、中身はおっさん。おっさんなのだ。美少女の身体だけど。いやそれもう美少女でいいんじゃ……






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ