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冒険をしない冒険者 ~TS相方とはじめる剣と魔法の異世界生活  作者: 凡鳥工房


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2日目の③.相方と行くクラン設立

挿絵(By みてみん)

LLOプリースト(男)、モデルはランド

 初めて足を踏み入れた冒険者ギルドの第一印象は「薄暗い」だった。


 といって現代日本比較は詮無きこと。現地にアジャストしていかないと。


 エントランスが広めにとられ、奥に受付カウンター。カウンターの後ろには仕切り壁があり、先を見通せない作りになっている。

 なお併設食堂だの酒場だのはないっぽい。


 つまりはあれだ、役場の受付だわこれ。


「行きますか」

「はーい」


 目が合ったスタッフさんに歩み寄り、クランルームが借りたい、のでクラン設立したい、手続きよろしくと要件を伝えると、階段をのぼった個室の一つに案内された。

 飾り気のない部屋で固い椅子に座って待つことしばし、ノックとともにあらわれた才女然としたお嬢様およびガタイのいいおじさんと挨拶をかわす。


 話し相手は対面に座った才女さん。

 立ったまま、腕まくりして無数の傷を見せつけてくるおじさんは地味な威圧感を放っているが、護衛というか監視というか、そういう役割なんだろう。


 前世日本において、ヤのつく自由業者に関わり深いという事務所をご訪問した時にくらべりゃなあ。

 口や手を出してこないうちは置物と思っておけば問題ない。


「クランの設立は、ランクDであることが必須条件となります。

 お二人のランクはFのはずですが、神託の冒険者には特例ランクアップが認められています」


 曰く、ランクとは冒険者の実力および功績を示すものである。

 単純に言えば、冒険者ギルドからの年間支払額を基準とした、「稼ぎ」ランク。


「ランクFからEには金貨1枚相当の報酬支払ないし素材買取が必要になります」


 同様に、ランクEからDには金貨3枚相当。

 あわせて金貨4枚に加え、ランクアップ手数料で大銅貨4枚。

 個々の実力が不明な神託の冒険者に相応のランクを認定し、クラン制度を活用させる必要から認められた特例だそうな。


「つまり、カネで功績を買うと?」

「推奨できる事ではありませんが、実際に素材や討伐証明を買い集めてギルドに提出、ランクを上げるという手法もあり、その応用という位置づけになります」

「京都のヨッシー曰く、何事にも抜け道のあらまほしきことなり」

「兼好法師はそんなこと言わない!」

「?」


 徒然つれづれネタです、ごめんなさい。


「ところで、かなりの額となりますが、お支払いに問題はございませんか?」


 金貨の数枚くらいなら特には。

 倉庫にあった金貨袋から4+4で8枚取り出しテーブルに載せる。

 ルピスも払おうとしてきたので見栄をはらせてもらう。口をすぼめたものの、大銅貨に切り替えてくれた。


「では続いて、クラン設立に関するご説明を致します」


 心なし、才女さんの態度が改まったような?

 金の有無(支払能力)を確認できたから、時間を取られるだけの説明相手から成約が期待できるお客様に変わったのかな。


 なおクラン設立はランクD以上の発起人が登録料を収めればいいらしい。その額、金貨で5枚。


「これは、安易な登録を予防するためとなっております。ご理解ください」

「ほむほむ、足切り基準かな」


 問題ない。テーブル上に追加。


「……クラン名はお決まりでしょうか?」

「え、そういえばどうする?」

「考えていませんでしたね」


 LLOでは互いに違うクランだったしなあ。

 僕は自分でつくった完全ボッチクランで、ルピスはほとんどのメンバーが引退するなどした幽霊クラン。


 僕とルピスに関連し、かつ、なんとなくありそうな名前……。


「なんとかレンリで、なんとか部分に何かない?」

「『連理の枝』ですか。『ヒヨク』じゃママですし、そうだなあ……文字通りの異世界ですし、遠く遥かな『Far(ファー)』とか?」

「ファーレンリ。クラン・ファーレンリ。F音L音大好きな日本人的感性にビビっときますよこれは」

「はいはい、そういうことにしておきましょう」

「『遥かに連なる枝の血盟団』ですね。承りました」


 才女さん、書類に記入中。

 あれ? 団長マスターが僕になってる。


「別にいいんじゃないですか?」

「ルピスどんがいいならいいけど……」


 ナチュラルに男尊女卑っぽくてアレなんだけどなあ。


「ついでにPT(パーティ)登録もなさいますか? あ、これは手数料はかかりません」

「じゃあ一緒にお願いします」

「では、この魔道具を通して神様にクランおよびPTの結成を報告いたしますので、お二人の冒険者証をお借りいたします」


 PTを組むと、魔物を倒したときに放出される『存在の力』が見えざる神の御手により均等に配分されるんだそうな。

 妙なところでゲームっぽい。


「神託の冒険者ということで特例的対応を致しておりますが、本来、ランクDとは中堅ベテラン層であり、Lvでいえば30以上が……えっ!?」

「どうしたお嬢……!!」


 突然目を剥いて硬直した冒険者ギルドの二人。

 僕らの冒険者証に不都合でもあったかと心配になったあたりで再起動した。


「ん、んん。……失礼いたしました。Lv90台など初めて拝見の機会を得ました」


 あれ?

 傷を見せつけおじさんの霊圧が消えている。


 返却された冒険者証、アルファベットが『F』から『D』に。空欄だったところに『ファーレンリ』と『ファーレンリ01』が追加されていた。


「以上で、ランクアップ、クランおよびPT登録は終了となります。

 クランルームの契約に関しましては、クラン会館の係員にお申し付けください」

「あ、はい。お手続き、ありがとうございました」


 才女さん、すいっと立ち上がりおじさんと並ぶ。

 僕らも固い椅子から腰を上げる。お尻が地味に痛い。


「ランド様、ルピス様。本日はご用命ありがとうございました。またのご利用の際にはぜひご指名頂きたく存じます」

「お疲れ様ッシたー!」


 いつの間にか様付けになったゾ。

 深々とお辞儀までされてしまったゾ。

 ていうかおじさん、無口キャラどこいったの。まるで上役を見送るチンピラめいた挨拶だゾ。


 Lv90台というのはそれほどのものなのか。

 でもなあ、僕ら支援プリ。直接戦力じゃあないんだよなあ。


 冒険者ギルドを出て、広場を囲むお隣さん、クラン会館へ。


「縦割り行政感」

「担当する現場現場で管理、わからなくはないんですけどねえ」


 ところでクラン設立までに二人分で都合金貨13枚と大銅貨8枚。これって、どのぐらいの価値なのか。


 串焼き一本が粒銅1個から積み上げると、銅貨数枚ないし大銅貨が一日の生活費になる?

 すると銀貨1枚で数週間生活できることになってしまう。

 そして銀貨16枚が金貨1枚に両替のはずで、相当に大金らしいというのはわかる。


 この王国は、銀貨で何枚、金貨で何枚と相互に両替はできるけど、LLOのZolt、日本の円に該当する統一通貨単位がないっぽい。


 10進法と統一通貨に慣れていた身にとっては面倒といえば面倒。

 とはいえ、歴史上は統一通貨単位なんて近現代もいいところでの登場だし、頑なに伝統を守るお国も多いからなあ。


「日本円に換算するのはかえって危険かもしれません」

「物価が違うはずだしね。元世界だって国際為替レートとビッグマック基準じゃ、かなりの差異がでていたし」

「確実なのは、お互い当面困らないだけのお金を持っているらしいことですね」


 さて、クラン会館の外観はいかにも西洋風。

 街区一つ分使う勢いでズドーンって建ってる装飾控えめの四角い館の各階に、等間隔に窓が並ぶ。そういやガラスはあるんだね。


「マンション?」

「ああ、納得」


 いざ鎌倉と門扉のドアノッカーごんごんしたら、ほどなく黄色い腕章の係員が顔を出した。

 冒険者証を掲げ、裏面(?)にあるクランの記載を見せて要件を告げる。


「クラン・ファーレンリ。クランルームの契約に来ました」

「あら、はいー。じゃあ中にどうぞ~」


 事務室に通されて真っ先に確認されたのは、またしても支払能力だった。


「これまでですと、クランを結成するのはそれなりの冒険者さんでしたが、神託の冒険者さんは未知数ですから~」


 なんでも、階ごとに基本的な間取りと契約額が決まっており、一番狭い部屋でも年額金貨1枚の一括払い。

 プラスするところの契約手数料として年額の半分を徴収。

 つまり、最低でも金貨1枚半からのお取り扱いとなっている。


 一番広いところになると金貨6枚。手数料込みで金貨9枚なんですよーと、探るような視線をぶつけられてもなあ。


 高いのか安いのか、本当にわからないのが困る。

 見せ金を出しつつ眉根を寄せていたら、少しだけ申し訳なさそうに説明してくれた。


「当クラン会館は新築ということもあり、最新設備を投入しております~。

 その分、従来よりも高くなってしまいましたが、使い勝手は大幅によくなっているはずです~」


 配水井戸より魔道具で水を汲み上げ、各部屋あるいは共用部に配管し水汲みの手間をなくしたという。


 さらに下層階では、なんと! 各戸内にシャワー室兼用のトイレが設置されていると鼻息がだんだん荒くなっていく。


 ルピスと視線を交わす。

 新築だから、神託の冒険者だから、勢いで最先端設備を盛ってやった感もあるのだけれど、上水道とトイレである。


 当たり前すぎてないことが想像できないくらいの設備。

 いくら金がかかろうと、飲むしかない。


「契約額は場所によらず、階ごとに一定なんですね?」

「はいー。それぞれお好みがありますので、例えば薬品類を取り扱われる方は北面を押さえたい、朝が弱い方は東面は避けたい、雑踏が煩わしいと中庭側を選ぶ方もいれば、むしろその雑踏に生活を感じるからと街路側を選ぶ方。人それぞれなのですね~」


「角部屋は若干広いというのは?」

「通路と玄関位置との兼ね合いでして、こう、角になる方をすこし伸ばさないと玄関を確保できないんです~」


「内見は可能ですか?」

「もちろんです~。まだほとんど空いてますが、お二人ですからやはり最上階の一番安いところでしょうか~?」

「一番広い間取りの2階、街路側の南東角部屋空いてます? 空いてる? じゃあそこでお願いします。行きますよ、ランドさん」

「はい」


 凛々しく立ち上がる相方様。

 お供いたします。






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