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おばあちゃんとのかくれんぼ

私は子供の頃、いつも家から歩いて10分くらいのおばあちゃんの家に預けられていた。


母が仕事に行っている間の時間、平日休日、いつもおばあちゃんの家にいた。


おばあちゃんの家は古い家で、木造の二階建て。


家も大きいし、庭も広かった。


庭の隅には蔵も立っていたから、今思えば随分と裕福な家だったんだろう。


でも、私が物心ついた頃にはおばあちゃんは1人きりでその家に住んでいて、なんだかいつも寂しそうだった。


きっと、広い家に1人でいるのが寂しかったんだろう。


私が行くといつも嬉しそうに迎えてくれた。


行く度におばあちゃんはかくれんぼをして遊んでくれた。


でも、これは私がしたいと言ったのではなくておばあちゃんが言い出したのだ。


「広いお家も人がいなかったらこんな使い道しかないもんね」


おばあちゃんはそう言って笑っていた。


でも、おばあちゃんはいつもかくれんぼをすると私以外にも誰かを探しているようだった。


おばあちゃんの家のかくれんぼはルールがあった。


1、1度隠れたらおばあちゃんが降参するか見つけるまで絶対に出てこない


2、隠れてる間は目を瞑っておく


3、声も出さない


4、かくれんぼで遊んでいる事は内緒


の、4つだった。


おばあちゃんはいつもゆっくり50数えてから探しに来た。


そして、私が隠れると大きな声でこう言うのだ。


「今日も皆見つけるからね」


と。


家の中には私とおばあちゃんしかいないハズなのに。


かくれんぼが始まると家の中のあちこちから物音が響いた。


子供の走り回るような音だ。


怖くていつもギュッと目を瞑って終わるのを待った。


おばあちゃんはルールに降参するまで出てきちゃいけないと決めているがおばあちゃんが私を見つけられなかった事は1度もない。


お家には部屋が10以上もあり、二階建てで屋根裏まであった。


どこに隠れても必ず見つけた。


私がオシッコしたくなったらそれを知っているかの様に見つけられた。


私はこのかくれんぼが好きじゃなかった。


怖かったからだ。


おばあちゃんは大きな声で私ではない誰かを見つけては


「あら、ここにいたのねトミお姉さん」


とか


「ここにいるのは分かってるわよ、どこに隠れてもアタシにはお見通しよ」


引き戸をガラッと開けて


「見つけたっ! タケシお兄ちゃん、さあ、出てらっしゃい」


と、ひっきりなしに喋っているのだ。


私以外にはいつも5人いたと思う。


誰と喋っているのか、怖くてたまらなくておばあちゃんのお家に行くのはいつも嫌だった。


でも、それもすぐになくなった。


保育園に行くようになったのだ。


保育園に行くようになってからはおばあちゃんの家に行く事もほとんどなくなった。


そして、私が小学生に上がって少しした頃。


おばあちゃんは亡くなった。


それから17年。


おばあちゃんの17回忌。


そこでの母と、おばあちゃんの弟と話している時でした。


「そういえば私ってよくおばあちゃんの家に預けられてたよね」


「あぁ、私が働きだしてすぐの頃ね。 おばあちゃん、その頃には少し痴呆が始まってたんだけど、保育園が入れなくて仕方なく面倒見てもらってたのよ」


「アレ嫌だったなぁ、おばあちゃんさ、私が行ったら絶対にかくれんぼして遊ぼうって言うんだよね」


「なにそれ、そんなの初めて聞いたわよ」


「あ、おばあちゃんに口止めされてたんだった。 かくれんぼで遊んだ事は内緒って」


母は怪訝な顔をしながら話を聞いていた。


「それでさ、絶対に私が隠れる役でおばあちゃんが探す役だったんだけど。 おばあちゃん、私以外にもいつも誰かを探してたんだよね「タケシ見つけた」とか「トミお姉さん見っけ」とか言ってさ」


子供ながらに怖かったのを思い出す、おばあちゃんの遺影を見ると私の思いとは裏腹に柔和な笑顔を浮かべていた。


「他にはどんな名前を言っとった?」


おばあちゃんの弟の幸三おじちゃんが私の話を聞いていたのか尋ねてきた。


「えーっと、いつも私以外に5人は探してた様な気がするけど・・・ うーん、ちょっと思い出せないな」


「タケシにトミ、他はイチゾウ、ハナコ、ショウスケと言ってなかったか?」


「えっ! 確かそうだった、幸三おじちゃんなんで知ってるの!」


母の顔を見ると母も知らない名前のようだ。


「その名前はなぁ、空襲で死んだ兄弟の名前だ。 逃げる時にはぐれて見つからなんだったそうだ」


私は背筋がゾクッとなった。


おじちゃんは私の反応に気付かずに話を続ける。


「死体は結局見つからなんだ、姉さんが3才の時だったか。 ワシはその頃はまだお母の腹ん中だったからよくは知らんが、ワシが物心ついた頃には姉さんはよくかくれんぼしていたよ。 その時もその空襲で亡くなった兄弟の名前を言いながら探していたなぁ、ワシも誰だろうと思ってお母に聞いたら死んだ兄弟の名前だと教えられた。 いつの間にかしなくなっとったが、痴呆になってまたやるようになっとったんだなぁ」


そうか、おばあちゃんは空襲で亡くなった兄弟を探してたんだ。


でも


それなら


なんで




私にあんなルールを守らせたんだろうか?





私には実際におばあちゃん以外の笑い声や話声が聞こえていた





もし、あのルールを破って目を開けていたら・・・



私は何を見て・・・



どうなっていたんだろう・・・


盛り上がりというか、ピークが無い感じの仕上がりになってしまいました。

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