学校の真新しい鉄格子
これは、私が11才の時に経験した体験です。
私はA、友達はC君としておきます。
私は引越しで10才の時に転校しました。
それまで通っていた学校はわりと出来て間もない新しい学校だったのですが引越し先の学校は木造で凄く古い校舎でした。
私はそれが逆に凄く新鮮で学校を見て嬉しく感じたのを覚えています。
校舎はさすがに1度は立て直されていましたが、それでも大変古い校舎です。創立100年以上ある小学校だったので怪談話も沢山ありました。
七不思議どころか怪談話が10個以上はあったように思います。
当時は映画館で〈学校の怪談〉の2だか3だかがやっていたので色んな小学生が怪談話を作っていたんでしょうね。
転校した学校に通い初めて1年程経った頃でしょうか、仲良くなったC君と学校の帰り道にそんな怪談話になりました。
10個以上もある怪談話をお互いに話していてひとしきり言い終えた時です。
「なぁA、去年に転校してきたって事はさ、あの話は知らないんだよな? 4年前の事故の話」
「なんだよそれ」
私の顔を見て嬉しそうな顔をするC君、取っておきの話を私が知らなくて凄いドヤ顔でした。
なんでも
4年前、C君が1年生の頃の話です。
当時の6年生の男の子が屋上への扉がある踊り場から階段を転げ落ちて首の骨を折り、死んだらしい。
原因は〈臨死げーむ〉。
どういう物かと言うと、三角座りで地面にお尻を付けずに(俗に言うとうんこ座り)しゃがみ、手を大きく回しながら深く深呼吸を10回する、そしてスっと立ち上がって首を軽く締める。
すると意識がブラックアウトして臨死体験が出来る。
コレが〈臨死げーむ〉だそうだ。
その6年生の男の子は〈臨死げーむ〉をやってブラックアウトし、そのまま真後ろに倒れて階段を転げ落ちて首の骨を折って死んだ。
それだけなら、怪談話にはならなかった。
誰も身近で実際に人が死んだのにそれを怪談話にして面白がる様な事はしない。
なんと1か月もしない間に1つ下の5年生が同じ場所で死んだのだ。
首の骨を折って。
首には誰かに締められた手の跡が残ってたらしい。
他にもそこで怪我をしたり、意識を失う生徒が何人もいたんだとか。
そして、その怪我をした全員が最初の少年が死んだ学校の放課後、4時〜4時半の間にその場所で気を失って倒れたそうだ。
最初は学校の机を並べて立ち入り禁止にしていたが入る生徒が多かったためにわざわざ扉付きの鉄格子を取り付けて鍵をかけたそうだ。
私はその話を聞いて全身が粟だったのは言うまでもない。
その場所は知っている。
最初に見た時は屋上に入る生徒がいるから取り付けたのかと思っていた。
校舎が古いのに真新しい鉄格子がなんだかアンバランスで違和感を感じたのを覚えている。
その真新しい鉄格子を思い出してC君の話が余計に真実味を帯びて恐怖したのだ。
C君は大いに引き攣っていたであろう私の顔を見て満足そうな顔で
「なんだよA、ビビりすぎだろ」
そう言って笑った。
「いや、別にビビってないし」
当時5年生の私はそう強がりました。
「いや、顔がすんげービビってんじゃん!」
「そう言うCこそ、そんな話信じてんのかよ!」
「なんだよ、嘘だと思うのかよ」
「嘘に決まってんじゃん、そんな話」
「じゃあ確かめようぜ!」
その瞬間ドキッとしました、話が嫌な方向にいっていると思ったからです。
「どうやって?」
「よーし」
C君の計画はこうです。
鉄格子をしている扉の鍵はダイヤル式では無く南京錠の様な鍵だから開けようと思えば細いマイナスドライバーを突っ込んで回せば開くらしい。
C君のお兄ちゃんが友達にそうやって言っていたそうだ、実際にC君も試して開けたことがあるそうだ。 入りはしなかったらしいが・・・
だから、当番の日に教室に最後まで残って鍵をかけて職員室に持っていくから、当番の日なら変に思われずに教室に残っていられる、それから人のいなくなった校内を歩き件くだんの鉄格子まで行く。
そして、4時になったら2人で入り、4時半になるまでそこで過ごす。
「どう? やってみる?」
「面白そうじゃん、やってみよう」
後には引けなくなってしまい、私はC君の計画にのることにしました。
そして私が当番の日、私と一緒に帰る約束をしているからと何食わぬ顔で席に座っているC君。
クラスに1人も生徒がいなくなった後も他の教室から話し声や物音がしなくなるまで待ち、何も聞こえなくなった午後3時55分、2人で先生に鉢合わせしないように慎重に鉄格子のある4階まで進んでいく。
誰もいない校舎の中を足音をたてない様に歩いているだけで心臓がバクバクしていたのはハッキリと覚えている。
着いた
周りは古い木造作りなのにまだ塗装の剥げた所もない綺麗な鉄格子。
格子の間から上を覗くと死角になっていて全容は見えない。
「どけって」
C君が小声で言って俺が退くとおもむろにマイナスドライバーを取り出して南京錠の鍵穴に差し込んで強引に回すとカチリという音がして錠が開いた。
そこまでくると怖いという感情よりもワクワクといった感情が先に立っていて2人で顔を見合わせて声を出さずに笑っていた。
音を立てないように南京錠を外し、扉を開くと甲高いキーーという音が鳴る。
自分たちの体が通れるだけの隙間を開いて中に入り、パッと見で分からないように南京錠をはめておく。
扉の内側から格子の隙間から手を出すと開け閉めがしにくそうだったので鍵は外したままにしておいた。
2人で顔を見合わせて人差し指を口に当て、クスクスと笑いながら埃っぽい階段を上がっていった。
足音を殺して階段をゆっくり上がる、途中の踊り場でそっと手摺から顔を出して上の様子を伺う。
ナニかがいるわけでも無く、見た目には変哲のない階段が屋上の扉まで続いている。
C君と顔を見合わせてまたゆっくりと階段を上り始める。
上っていくと広さは6畳くらい?の踊り場に木がささくれ立って使えなくなった机が1つ置いてあるだけだった。
腕時計を見ると時刻は4時を少し回ったところ、2人で階段の最上段にお互いの方を見るように体を捻って座り当時流行っていたカードゲームをして時間を潰した。
特に何も無いままに時間が過ぎ、1度目の勝負がついて時計を見ると4時15分だった。
もう1勝負しようとお互いのデッキをシャッフルしていると下から
コツっコツっ
っと人の足音が聞こえてきた。
2人で手摺からそっと下を覗き込む、暫く見ていたが何も無い。
ホッとしたような拍子抜けした様な気分でパッとC君の方を向くと彼は青白い男の子に後から首を締め上げられ、声も出せずに白目を剥いて宙に浮いた足をバタバタと動かしていた。
青白い男の子は頭から血を流していて目は白目を剥いている。
首が変な角度で頭を支えている。
白目で私を睨みつけていた。
「いぃっ」
っと声にならない悲鳴を上げて後ろに後ずさると青白い男の子が意識の無くなったC君から手を離す。
C君は木の床の上にベタっと音をたてて倒れてビクンビクンと痙攣していた。
階段をゆっくり後ずさると青白い男の子がこちらに向かってきた。
その時点でようやく
「うわあぁぁー」
と悲鳴を上げて私は階段を一目散に駆け下りた!
鉄格子にすがりついてガンガン乱暴に開けようとするが開かない。
南京錠を通していた事を思い出して格子から手を伸ばして南京錠を掴み横にズラして外そうとするが外れない
掛けていないはずの鍵がかかっていて外れないのだ。
大声で「助けてー」っと叫んだが廊下からは誰の気配も感じない。
後ろから階段を降りてくる足音が聞こえる。
恐怖で涙を流しながら格子をガシャガシャと鳴らす。
後ろを振り向くと目の前に青白い男の子がいた、私はその場にしゃがみこんで鉄格子を背に頭を抱え込んだ。
冷たい手が首にかかったかと思うと一気に締め上げられて体ごと持ち上げられた。
青白い男の子の白い眼を見ながら私は意識を失った。
そして、気が付いたら病院にいた。
鉄格子の内側で倒れている私を見回りの先生が見つけたのだ。
幸いに私もC君も命に別状は無かった。
2人とも、首にはくっきりと締め上げられた跡が残っていた。
こちらの作品は多少のポイント評価を頂いていたので心苦しい部分もありましたがこちらに転載させて頂きました。
評価頂いた皆さん申し訳ございません。
いつもお読み頂きありがとうございます。




