51.やばい。どう考えても私の方が強い
「美人も考えものね〜」
今日も今日とて美しい姉は新しい口紅をつけながらのほほんと話している。
この間まで使っていたものはどこかにまた落としたとのこと。
またラナックが拾っているだろう。何本落とせば気が済むんだか。
「反省するき0!」
「どうして私が反省するのよ?
それに、何故ライラックに私がが嫁いだ事になっているのかしらね。確かに婚約パーティとは言ったけど、まだ誰にも嫁いでないし嫁ぐの貴女じゃない。
もっと存在感出しなさいよ!社交界で!!」
「なんで、私が怒られるの!?」
「妹だからよ!!!」
「姉って理不尽!!」
あれから3日様々な処理を追えて、姉との久々のティータイム。
「それにしても思ったより元気ね。もっと泣いてるかと思った。乙女に涙はつきものでしょ?あ、ゴリラだから…」(察し)
「なんだよ。ゴリラだから(察し)って。こんなに混同されちゃあゴリラも今ごろきっとお困りだよ。まあだって、やっぱり最初から無理だったんだよ。」
そう、あの後ふられたのだ。
主犯である貴族を捕まえた後。シエルに自分が本当に戦争の英雄王だと伝えた。
嘘をついていたこと。
守ってもらう必要も無いこと。
メイリーンはひとしきりその場で今までの真実を伝え、少し考えた後
この婚約一旦破棄させて頂いてもよろしいですか?ときいた。
騙していた訳だし。
多大なる迷惑をおかけしてるし。
レビデバ国としては、引き留める材料がない。
何より軽蔑されるのが最も辛かった。
「振られちゃったのは悲しいけど、でも、破棄になって、良かったの……かも。ずっと苦しかったし……嘘ついて……好きになってもらうってのも」
「振られた…?あなた以外全員がたぶん振ったと思ってるけど…。私の記憶が正しければ破棄の提案貴女からしてたわよね?」
ねぇ?とアイリーナが周りを確認すればミエルダやユスタがうんうんと頷いている。
「ねぇメイリーン。婚約破棄もともとしたかったの?」
「そんなわけないよ。だって私はシエル様好きなんだもん。でもシエル様から婚約解消しようって言われるのが怖かったから…」
「好きな人の心を手にいれるために嘘をついてしまうこと……あるよね。
僕は些細な嘘をついてでも、僕に好きになってもらおうとする貴女をみてるの好きだよ」
「いや、些細な嘘って、それに結局破棄にって、え?」
まって私今誰としゃべって
横を見ると、天使と目が会う。3日たっても、人懐っこく、輝かしく。それでいて、かわいい。
驚いて姉をみると悪びれる様子も驚く様子もない。来ているの知ってたら教えてくれたっていいのに。
そんな視線を察してかアイリーナはいつもの通り微笑んだ。ただいつもと違って優しい笑い方だ。
「こんにちは、メイリーン。今日も愛らしいね。そしてアイリーナ殿も。いつもと変わらずで何よりです」
「あら?私には愛らしいとは言ってくれないのかしら?」
そう言い返すアイリーナはいつも通り不敵に笑う。
さっきのは見間違いか?
「僕にはメイリーンだけが、愛らしく見えるので………」
「いや!え?なんっ?え?なんで、シエル様が?」
「会いに来たらここだと言われたから」
不思議そうな顔でこちらに顔を向ける。
いや、そうじゃなくて、そりゃ侍女はここに案内するでしょうけども。
「だって婚約……」
「改めて申し込みに来たよ。戦争の英雄王メイリーン・センチュリー僕と再び婚約して頂けませんか?」
そういいシエルは片膝をつき私の左手をとる。
「・・・?」
ちょっといやかなり何を言われているのか分からない。
「僕なりの仕切り直し……かな。実は知ってたんだ。貴女が本当の英雄王だと。それはもうずっと、貴女の誕生日パーティーより前から。つまり最初からだね」
「えぇぇえ!?
じゃ、じゃぁラナックが英雄王じゃないことも?」
「もちろん」
「私が、可憐で儚げじゃないことも?」
「可憐だけど、儚げではないことも」
「……私の工作笑ってたの?」
工作できていたかと言われると全然できていなかったかもしれないが。
「まさか、ただただもどかしかったよ。話してくれてかまわないのにって。」
ふふ。といつもの笑顔が咲く。
そこに軽蔑の感情なんて1㍉もない。
「僕が貴女の本当の姿を知っていて黙っていたこと。それを知った上で、この婚約もう一度考えてもらえる?嘘つきなのは僕も同じ。でも貴女への気持ちに偽りない」
懇願するように、シエル様は私を見てきた。
「僕との未来、もう興味はない?ねぇメイリーン。貴女の本当の心僕にも見せて?」
「私が、選んで……いいの?」
「貴女の心が知りたい」
「私……シエル様が……好き。嘘で塗り固めてでも、シエル様に好きでいて欲しかった。でも、嘘つけばつくほど、罪悪感と本当の私も見てほしくなって…苦しくて…」
ボロボロと涙が零れる。この3日間出ることのなかった涙が今ここで。
「嘘ついてごめんなさい……私、儚げで、守ってもらうような人間じゃなくて、可憐、でも、なくて……お、姉様、と、は似て、なくて
こんな、私でも、シエル、様が好きと、言、って頂ける、のな、ら…」
涙が止まらず、だんだんうまくしゃべれなくなる。
「メイリーン。顔をあげて」
なんだろうと。顔をあげると、目元に口付けが降りる。びっくりして固まっていれば涙のあるところに口付けが降ってくる。
「嬉しい涙だととめなくてすむけども……悲しい涙であれば僕が食べちゃうよ」
今何をした?何を言った?理解するほど顔が赤くなる。
「あ、あのあの……」
「一目見たときから、僕はずっと貴女が好き。僕との縁談をまた受けてくれないですか?」
もはやよく分からない。でも、天使との再縁談。
機能の停止した脳が告げる言葉は「はい」の二文字
「ちょっと!!私がいるのよ!そゆのは二人っきりでやってくれる!?」
イラついた声で姉が話す。
「再婚約ね、はいはい。おめでとう。ほら、メイリーン一回顔洗ってきなさい!せっかく可愛くメイクしたのにどろどろじゃないのよ!」
「僕はこのままでもいいですが?」
「私が許さないのよ!メイリーン、ぐちゃぐちゃのメイクで、殿方とあってもいいと思ってるの?乙女的兵法と私が許しゃしないわよ」
乙女的兵法は知らないが姉に雷を落とされるのは御免だ。というより、顔が暑すぎて一度冷やしたいところだ。
私はすぐさまその場を離れた。
ユスタがこちらでお化粧を直しましょうとささっとメイリーンの化粧を整える。
「お嬢様良かったですねぇ」
「うん」
そっかシエル様最初から知ってたんだなぁ。はぁ。今まで何してたんだろとんだピエロだよ。恥ずかしい。
でもシエル様がそう思うよりましだなぁ。
当時英雄王とバレた時のシエル様の心境を勝手に想像したが、まさか、自分がそう思うことになると思ってなかったメイリーンは少し複雑だ。しかし、今まで重荷だった嘘をつかなくていいとなると心がとても軽い。
「そう言えばシエル様は、私を守りたいって言ってけど、知ってたら何でそんなこと言ったんだろ。背中?背中守りたい的な?ちょっと任せるには…そうだ!お姉様に聞くしか!」
足取り軽くメイリーンは駆ける。ドレスの重さなんてもろともしない。
姉達のところに戻ると、レディは走らない!とお淑やかさについて多少窘められ、先ほどのことについて質問すると。2人に声を揃って
それを本人目の前にして聞くんだね。と呆れられた。
あ!よくなかったかとメイリーンはシエルの方を向くとそこにはいつも通りの天使が背景に花を咲かせながら笑っている。
そのことに嬉しくもあり安堵もする。
そうだ。とシエルが前置きしながらメイリーンにとんでもない提案をする
「ねぇメイリーン。今度手合わせしてみよう。僕と君にどのくらいの差があるのか、僕は知りたい」
メイリーンは知ってるかもしれないけどね。とふわりと笑う彼はいつも神々しい。
やばい。どう考えても私の方がつよい。
手合わせなんかしてシエル様ふっとばしちゃったらどうしよう…。
メイリーンは眉をよせてなんとも渋い顔をする
「僕が怪我するようなら、メイリーンが看病してくれたらいいよ。
治るまで…ずっとね?」
「確かに!」
天才か!と言わんばかりにメイリーンの瞳が輝く。
「それが目的なんじゃないでしょうね」
アホらしい。後は好きにしなさい。とアイリーナは席をたった。どうやら今回は忘れ物なさそうだ。ハンカチでも落とそうもんならラナックがまた拾うだろう。
そこから、誰もが想像通りの展開で、
後日行われた手合わせに
メイリーンは舞い上がりすぎてシエルに重い一撃をうっかり当ててしまい。
シエルもうっかりなのか重い一撃をもらってしまったので看病よろしくとメイリーンを引き取ってしまった。
まぁそらそうなるわな。と一部始終見てたアイリーナは2人の仲睦まじい姿が末永く続けばいいと
本人も知らないところで取り繕うことなく自然に微笑んだ。
もちろんラナックはそんなアイリーナを見て今日も月の女神様はお美しいと感動し、
彼女の落としたハンカチを大事に懐にしまった。
その後そのハンカチをどうしたかなんて皆さんもご存知だろうが
それはまた別の話である。




