4.やばい。意外となんとかなって……ない!
タイトルのセンスがほしいです
それから何ヵ月。
「なんとか、なったじゃない。胸以外。」
にこにこと姉が私を珍しく誉める。誉めたのかはわからないが。
「む、胸、まぁ、そうかなぁ」
「しかし、毎日風呂に入って髪の毛手入れするだけでこんなにキューティクルが生き返るとはね。貴女今までどんな生活してたの?」
「お風呂は3日に1回……?」
「3日に1回!?」
「……入れればいい方?」
そうなのだ、戦場では風呂に入る余裕などない。そもそも性別を隠しているのだから風呂に迂闊に入れなかった。
戦争の英雄王が実は17歳の王女様なんて部下の士気が下がる。そう思った父は私に全身鎧を身につけさせ、絶対ばれないようにと念を押した。
何人かの秘密を知っている部下の立ち回りもあり戦争の英雄王はなぜか40代のおっさんという噂が世を包んでいる。
中身ピチピチの17歳王女が40代おっさんと思われるのは非常に悲しいものがあるが、助かっているのだから文句は言えない。
「っはー。女捨ててるわねー」
「こんなだから恋のひとつも知らないのかしら」
「え?」
一息のため息(すごく長かったが)をつき終わると姉は気合いを入れた顔をする
「いい?メイリーン。貴女の胸以外の外見は武器よ!胸以外よ!」
「なんでそんな強調するの……」
「事実だからよ!」
「つらい」
「とにかく騎士の貴女は忘れなさい」
「だから、私騎士じゃあ……」
「いいこと?メイリーン・センチュリー。奥ゆかしく、本が好き、華々しい社交界が苦手。でも今宵姉の誕生日パーティーに姉につれられ無理矢理出される!これが貴女の設定よ!」
「え?お姉様の誕生日半年後じゃあ」
「きれいな女は2回ある!そうじゃないとみんな私を祝えないわ!」
「えぇーなにその理屈」
っていうかそれ2倍年をとる計算じゃあ…?
「とにかく!今夜、貴女に縁談の申し込みがあった人を何人か招待しといたわ!私が勝手にえらんで!そいつらに儚げで守ってあげくなるようなメイリーン・センチュリーをアピールするのよ!!」
「傍若無人!」
「は?」
「いえ、なんでも?何か聞こえました?」
まぁいい。パーティーなんて、逃げてしまえばこちらのもの、こちらには姉にない鍛えてきた足がある。ドレスを着てたところですぐに逃げ出せる。
「ねぇメイリーン…私、自信があるの」
逃げる算段を考えていると、急に姉が真面目な顔になる。
「今日、一人の男も捕まえられないような、ばがでどうしようもない愚図な妹はもはや誰とも結婚できないだろうなって」
「もし、そうなら、やっぱり40歳のハゲデブと縁談組んじゃおうかなって。40の相手だもんね、すぐに結婚して、子供生まないと相手困っちゃうわよね」
あぁ、この姉、この顔、本気でやる気だ。
そうだ、姉はいつだってしたたかで、何もかも実行し、手にいれてきた。
絶対的、権力をもった。
生まれながらしての支配者。
ここで、もし、私が逃げようものなら、即縁談だ。そして2度と戦場へは出れないだろう。
私はやるしかない。今日の戦場は姉の誕生日パーティー。未来の旦那候補を見つけなければ。
私の未来がない。