17.たまにはやばくない話
つまるところ閑話
それはまだメイリーンが寝ている時間。
昨日夜中に帰って来たメイリーンは偶然婚約者と出会い2時間程度、誰にも邪魔されず過ごした。
そのせいで就寝時間が遅れまだ眠っている。そもそも一昨日の夕方出て、昨日の深夜帰って来たという事や、使いからの途中報告をうけ、メイリーンは仮眠を少しとったかとらないかであったと推測がつく。城にいるときはきっちり8時間は寝る子だ。もう2時間くらいは起きてこれないだろう。
と、アイリーナは予測した上での。
様子見である。
目の前にはいつもと変わらず輝かしいほどの笑顔。メイリーンが天使、天使と騒いでいる笑顔だ。
「昨日の事。侍女からきいたわ」
「私はいったはずよ。結婚するまで手を出すなと」
「僕も言いましたよね。その拷問に耐えれるほどの精神はないと」
「メイリーンはお転婆だけど、深窓の姫ぎみ様々なのよ。急に手を出さないでくださる?」
「愛らしいメイリーンがいけないのです」
「それはそうなんだけど!」
そうなのだ。かわいい妹は、無邪気で男を知らない。だから無防備に男を誘惑してしまう事があるだろう。そもそも人を簡単に信用してしまうし、パーソナリティースペース狭いし胸はないけど私そっくりなあの容姿だ、変な男はすぐ勘違いしてしまう。だからこそ父に適当な理由を言って全身鎧を纏わせたし中身は40歳のおっさんという噂を流した。
そう、全てはこの男のように、勘違いをさせないようにだ。
「メイリーンはまだ恋をしりません。貴女に抱いている気持ちは幻想だと。昨日申し上げたわ。犬や猫を可愛いと思うのと同じ、好きだと思うのと同じ。あのこは本当の意味での恋をまだ知りません。だからシエル様に恋をしているわけではありませんのよ?」
「構いません。それでも良いのです。彼女の瞳に写るのが僕だけであれば」
「メイリーンと出会ってさらに好きになりました」
この男……前は隠していた気持ちを堂々と私に言う気になったわね。
「貴女を敵にしたくはありません。隠していては貴女に不信がられるでしょう?そのせいでメイリーンと僕との時間が奪われるのは此方としても嬉しい事ではないと判断したためです」
しかも折れない。
「僕は彼女を守りたいのです。その役は誰にも渡せません」
シエル・ルントレア15歳
我が国レビデバとの隣にあり、同盟国であるライラックの第一王子。正確には第二王子であったのだが7年前、世継争いで第一王子がなくなり、くりあがった存在だ。その争いで我が国の介入もあったため、詳しく明記されていた。
そして、妹であるメイリーンが10歳でその戦場に出向いたため、此方も死ぬかと思ったという出来事があり、よく覚えている。
あのあほんだらは10歳にして闘いへの関心が強く指示が的確だった。
王女とはいえ子供の言うことなどと当時介入指揮をとっていたエルウェンが子供の計画を鵜呑みにしてしまうくらいにメイリーンの作戦は魅力的であった。
その時のライラックの争いは凄かった。
母親が違うためにおきた第一王子と第二王子の後継者争い。
国をあげての争い。第一王子がなくなり収まるかと思ったが、第一王子の仇をとるとのことで、戦争はやまず第二王子の母が亡くなるという惨事であった。
我が国の介入がありやっと終わったが2年もかかった。
しかし、幸いな事もある。
王子がなくなり後継者が一人しかいないため、政治てき争いがないらしいのだ。そして、その戦争の事もあるため次の子をという声も上がらない。
みながみなこの詐欺天使を時期国王にと望んでいる。そして彼しか、後継者がいない今、全力で国は彼を守る
つまり、メイリーンは隣国に嫁ぐことで、絶対的な生の安全がある。よその貴族や国に嫁に行くよりよほど安全だ。
そう思うものの。姉心なのか、どうしても目の前の人間を怪しんでしまう。決定的な嘘をついてそうだ。最初はメイリーンへの愛かと思っていたがどうも違う。
彼を信じれない事もあり、メイリーンに近づけたくないというのが少なからずある。
「ですが、ほとんどは、僕に取られるのが悔しいんですよね」
「……そうよ。かわいい妹だもの」
そういう所を見抜いてしまう。アイリーナはこの男が大嫌いである。