13.やばい。女子力がたりない2
「それは、失敗ね」
花園に行った日の夕方、姉が楽しかったかと尋ねて来たので、花を全く知らなくて、それはもう。それはそれはもう全くと言って良いほど王女様アピールができなかったと報告をした。
「女子力か。メイリーンは見た目私そっくりなのに、胸と頭と女子力がないわね」
最初は胸、次に頭、今度は女子力か……なんだか、どんどん私という存在の欠点が出てくるな。まぁ、見つけるのは姉だが。
「そんな事言われても鎧の中には胸もいらないし、女子力もいらないもの。布陣、戦略、機転それさえあれば勝てるもの……」
だから、たかが半年の訓練では身に付かないと姉に言い訳したかったのだが……。
というか、半年私は毎日頑張ったと思うのよ。5年ぶりに真剣にマナーを1から学び直し、ダンスを体に覚え込ませ、笑顔の練習なるものを鏡の前、さらには姉の前で永遠やり続けるという地獄。ゲシュタルト崩壊も良いところだった。
戦場を駆け巡って帰って来ては寝て、闘争地区があれば、止めにいき帰って来ては寝て。レビデバ国が修める領土での武力争いは、私が行くことによってこの5年直ぐに鎮静化することができた。
それもこれも姉の言うとおりステータスを戦場に全降りして育って来たからであり、その私にとって今さらご令嬢を努めるのは難しいような気もする。
「それで40のハゲでデブで隣にいるのもしんどいような殿方と、ご結婚なさるなら、姉の私も何も文句いいませんわ。」
めちゃくちゃ良い笑顔で、急に芝居がかった台詞で圧をかけてくる。
「そうは、言っても急になんてできないよ!」
「出来ることからやるのよ!」
「いい、メイリーン。私だって急に戦場に出されたら手も足もでないわ」
「そんな、まずは方角と自軍の布陣の」
「黙ってきいて、メイリーン。ものの例えよ」
「それでね、手も足もでないけど、頭で考えて、自分がどうすればいいかを思案するわ。出来ることを私ならやるわ。メイリーンもできるでしょう?」
「う……ん。私にできる事……」
「何が、というより、まずは鞄を持って出掛けなさい!」
「何ももたなさ過ぎるのよ!戦場にもおにぎりくらい持ってきなさいよ!」
「頭良すぎか!」
青天の霹靂。アイリーナの提案は神かと思えた。
そうか、おにぎり持ってけば良かったのか。
「だから、バカなのよ!」
アイリーナは頭を抱える。
そして、部屋の奥にいき、黄色の大きな花のついた籠を持ってきた。
「明日出掛けるときはこの鞄を持ってきなさい。女子力セットよ。この鞄にないものはないわ」
「あ、これ鞄か。何が入ってるの?ハンカチ、ティッシュとリップとソーイングセット、絆創膏……こんなにいるの?多くない?」
「あ、これ鞄か。の発言も問題ありだけど、そこは置いておいて、必要最低限よ。持っていきなさい」
ぐいっと、押し込みセールのような剣幕で鞄を渡してくる姉は笑顔なのだが、怖いのが不思議。ありがとうと受けとるしか私にはできなかった。
そして、その後はやれ、このドレスは清楚感がないだの、このドレスはボロボロだの、そもそも騎士服ばっかなのおかしいだろ、さらには鎧はクローゼットにいれるなと、散々クローゼットの中身を文句いいつつ、明日のドレスを姉と侍女に2時間くらいかけて選ばれ(9割文句だったが)
その後さらには時間をかけて全身トリートメントを受けへとへとになった私は
部屋に帰ってふと、鞄をみて思った。
「ところで……これ、何の花?」
鞄についている、大きくて、真ん中が茶色い、可愛らしい花。どこがでみたことあるような、でも名前まではわからない。
今日の反省点から調べるべきか?
いや、もぅ眠い。正直寝たい。
「お嬢様。もぅお休みになっては如何ですか?いつもなら寝ている時間です」
私の侍女が心配そうに顔を覗きこんでくる。
「でも、この花なにかなって」
「ひまわりですよ」
「あ、これがひまわりか」
有名なのに全然気にしたことなかったわ。
「まぁでも。解決ね!ユスタありがとう!うん。ねよう。お休み」
悩みも解決したし、今日はなんだか疲れたし。すごく寝れそうだなぁ。お布団が気持ちいい。
「ふふ。お嬢様は無知なところが可愛らしいのです」
ユスタほんわりと困ったように、でも楽しそうには笑っていたが、目を瞑って3秒で寝れた私には全く聞こえなかった。