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11.やばい、どう考えてもピンチ

ふむ。

ふむふむ。

ふむふむふむふむ。

いやはや、勉強になる。でもこの場合私なら、ここに兵を布陣して。

例えば北の鉱山はそもそも攻めにくいところであるが、あえて攻めるとしたら……

やっぱここに兵を置くよね。

なんて考えながら地図の上の駒を動かす。

我ながら完璧な布陣が敷けたと思う。



と、ここまで考えて今何時だと、顔をあげる。



すると天使が目の前に。

驚きすぎて、私の呼吸がとまる。


「こんにちは。メイリーン」


「か、こ、こ、こんにちは……シエル様」

あれ?あれあれ?なんで?ここに?

さっきお姉様と中庭で談笑してたよね?


「随分熱心に本を読んでいるんだね。僕がここにきてから、かれこれ3時間くらい

それに、この布陣。見事だね。まさか勉強してるなんて思わなかったなぁ」

にこにこと笑いながらシエルは地図を見る。青が自軍で赤が敵軍かなと呟いてる


「んふん???」

え、まって?3時間!?

3時間!!?

そんな経った?っていうかシエル様ずっとここに?何故!?

「あの……お姉様との……お話は?」


「メイリーンを見つけちゃったから終わりにした。体調はどう?良くなったの?」


「ぅええ?」

あ、そうだ、私今日体調が悪い設定だった!

「そうなんです。それで、本を……」


「僕が来てるのに?」


「えと…え?」

そうだ、お客様が来ているのに、しかも婚約者。相手をしないのは如何なものか。そういうことですね。

「風邪なら、うつしてしまうと申し訳ないか、な?と」


「ふふ。風邪なら僕にうつしちゃえば、楽になれるよ」

そういってシエルは隣に座り直す。3人がけのソファーでゆったりしているのに、何故かシエルは自分とかなり近い所に座り直してくる。


「いや、そんなわけには……」

えぇ、何この近さ。もしかして熱うつってお休みしたい系?あるよね。そゆとき。私もダンスの練習サボりたかった時あるもん。

ごめんね。私、今風邪ひいてないの!なんか話そらさないと。

「シエル様は、何か本よみました?」


「ううん。君をずっと見てたよ。3時間。本相手に百面相してて、みていて飽きなかった。何をそんなに熱心に読んでいるの?」



「こ、これは」

なんだろう。天使のシエル様に何か色気が、これは私が好きすぎて見える幻か?距離の近さ故なのか心臓がさっきからうるさい。

「…………これは…………これ……」

「………………」

…………これ、説明していいのだろうか?


メイリーンは自分の手に握られているものを見る。

そこには「兵力差がありすぎる戦、10の戦術」という部厚い本が一冊。


やばい、この本どう考えても、普通の令嬢が読む本じゃない。

しかもみて、この地図、この布陣。完璧。攻めいる隙がない。

……じゃなくて

かんっぺきなまでに誤魔化しきれるもんじゃない。

姉にばれたら殺される。しかも1回じゃない3回くらいは殺されるレベル。

いや、でもここで、上手くフォローできればワンチャンあるか?

「この地図はですね。けして私の考えた布陣とか、じゃなくて、うーん。えとラナックの敷いた陣が勉強になるなぁとか、思ったり思わなかったりで。いや、そもそも戦的な戦術なんて考えてないんですよ。それはもぅ!これっぽっちも!これはですね。えっと。うーん。

こ、恋の。そう!恋の戦術に役立つかなって読んでみたり!うん。そう、そうなんです!

ほら、シエル様はとても素敵ですし、前、稽古を見るためにお国に遊びに行った時に他のご令嬢に随分モテてていたでしょう?きれいな奥様から可愛らしいお嬢さん。それに年端もいかない小さな女の子たちとか!ライバルが多いなぁってあのとき実は思って、それで、その、えっと」

なんだか、いらないことまでしゃべってる。軌道修正を……ええっと



「メイリーン……君ってば本当に愛らしいね」

目を丸くしていた王子が途端に笑顔になる。

「愛らしすぎて、困ってしまうよ」

そう聞こえたとき。シエルの香りがさらに強くなる。おでこにわずかな柔らかさを感じた後。その香りは元に戻った。


「え?」

今。もしかしておでこに口付けされ


「ごめん、ごめん。君があまりにも愛らしくて。つい」

回りの花が見劣りするくらいの、その笑顔。



「ひぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

なんかもう私のキャパが対応しきれなくて。

とりま叫んで慌ててその場から逃げてきた。













「あぁ。惜しいことをしてしまった」


「シエル様……」

従者が呆れたように僕をみる。


「でもあまりにも可愛らしかったじゃない。仮病というバレバレな嘘」

そして、嘘から出てしまう本音。

「あぁも愛らしいとつい、からかってしまいたくなるね」


「わぁ。性格悪いわぁこの王子。目をつけられた彼女は可哀想だ。」


「僕の事変にばらさないでね。特に第1王女に」

かわいい妹のためにと、牙を向けてくる彼女。敵にするととても面倒そうである。

「あんなに可愛らしいだなんて知らなかった。嬉しい誤算だよ」


なおも惚気をもらす男に付き合ってもらちがあかないと、従者は黙っていた。


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