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003 アルコイリス養成所


 北方にアルト山脈を構える【盾の国】には、冒険者を育成する【アルコイリス養成所】がある。

 大都市【サングリア】に設立されており、文字の読み書きや簡単な計算、さまざまな分野の学問・技術等の学び舎としては、大陸一の学院として認定されている。

 門戸は広く孤児から王侯まで年齢制限はなく、自身の学びたい内容・分野によって入学金から授業料が設定されている。また学級は職種(クラス)年齢関係なく構成されている。

 より多くの者と交流を深め、それぞれの精進に繋がる様になっている。

 実際、諸外国からの貴族の子息子女の留学もあり、彼らの社交の場も設けている。

 だからこそなのか、鉄壁の掟も存在しており、身分実力による苛めや差別、虐待・弾圧などは一切許されない。

 正々堂々相手を貶すならまだしも、裏でコソコソと遣るようなら以ての外である。

 養成所は容赦なく、そういった面々を退所処分される。過去にも某国王族の子息が孤児院出身の者に対して悪辣な事をやらかしたが、どれだけの謝罪と懇願と寄付金を支払ったところで決定は覆らなかった。


 そういった経緯もあり、生まれたのが生徒間同士の抗争である。全うな勝負であれば、教師は口出し手出ししない……時と場合にもよる。

 その抗争に嬉々として動く者達も存在する。

 ……土木建築部門を学ぶ面々である。

 彼らの活動はもはや日課であり、抗争だけでなく、戦闘訓練から、魔術錬金等の実験の暴走やら。建物の損壊の修繕は、授業であり、事業でもあった。

 故に至るところが前日とは壁やら外装が変化しており、施設内の案内表示は欠かせない。


 そして、今日も今日とて、同じ様な一日が始まるのだった。





  ◇ ◇◇◇◇ ◇  



「さて、皆さん。今日呼び出された理由は分かってるのかな?」


にこやかな笑顔で告げるのは魔術部門の講師であり、呼び出された生徒達の担任であるシュヴァイツァーだ。

彼女は小柄を理由にデスクの上に腰を掛け、立たしている生徒と目線を近くしている。


「ジャッキーとディッキーがメーアに執拗に絡んでくるからです」

 先に応えるは、ヒンメル・S・アオフヴェルツ クラスは拳闘士の少女。

 勝ち気な瞳が印象的である。


「ごめんなさい、私がきちんと対応しないから悪いんです。」

 メーア・ヴェレ・トライプ クラス魔術師。

内気少女が居たたまれないよう応える。


「あら、そんなことないわよ。あの子らが毎度絡んでくるのが悪いのよ」

「こちらは正当防衛。やられる前にやらなきゃ」

 メーアの両肩の白と黒の人形が答える。

 白い人形がクロといい、女性格。黒い人形がシロといい、男性格。二体とも、メーアの使い魔的存在である。


「俺は巻き込まれただけで何にもしてません」

 一歩引いて応えるは、ラント・シュトライヒャー

 クラス:重剣士の少年。


「裏切るなラント! アンタも充分やりあってたじゃんか!」

「毎度毎度売られた喧嘩買って人を巻き込むなよ」



「巻き込まれたのはこちらです! なんで毎回貴女達の喧嘩に私まで巻き込むのですか!」

 フランメ・リヴァーリン

 クラス:医療専門魔術師。

 今集められている面子の学級代表を務めている。


「フランメだって口出ししてくるじゃん」

「私は騒動が大きくなる前に止めているのよ! ひとつの喧嘩がどれだけお祭り騒ぎになると思ってるのよ!」


「………」

 ひとり、壁際で柔和な笑みを浮かべながら佇むは

 ヴィント・フライエ クラス:魔術師の少年は、ヒンメル.ラント.フランメの言い争いを穏やかに見守っている。

 三人の輪の外では、メーアが引切りなしに謝っている。そしてそれを宥めけしかけるシロとクロ。


(なかなかカオスだね)

 と、明後日なことを考えている。



「さて、皆さん。呼び出された理由は分かってるのかな?」


掌で教鞭を撃ち鳴らしながら、シュヴァイツァーはにこやかに告げた。


 見た目は幼女だが侮るなかれ――が暗黙のナントカだった。

 魔力が大き過ぎるらしく、それを軽減させるために細胞を活性化させ、数年毎に容姿を変えていると謂われがあり、数年前は老婆、その前は二十代、その前は中年‥‥今、彼女の歳を知るものはいない。

 余談だが、今の容姿だと酒場へは出禁を喰らわされており、実に不本意だという。


 にこやかな笑みに含まれた怒気に圧倒され、面々は取っ組み合いながら押し黙る。


「先生はね、皆さんが元気なのはとてもいいことだと思います。お互いの主義主張を拳で語り合うというのも素敵だと思うのです。ですが‥‥

 あまり成長がないなぁ〜とも思うのですよ」



シュヴァイツァーは靴を脱いで机に立ち上がると、腕を振り上げると、窓の外を指差した。



「皆さんにはこれから課題を行っていただきます! それが終わるまで、帰って来てはいけません!」



はぁぁぁぁ!?



生徒五人+二体の素頓狂な声は廊下まで響いていた。




 



登場人物紹介


○ヒンメル・S・アオフヴェルツ

 クラス:拳闘士

 元気一杯の女の子。

 曲がったことが大嫌いで、よく首を突っ込みたがり、メーアとラントを引き回している。

 実家は商家で名を馳せているお嬢様で、姉と兄がいる。

 貴族という程ではないものの、上流階級にもかなり融通が利く。




○メーア・ヴェレ・トライプ

 クラス:魔術師

 ヒンメルとは正反対に、ちょっと?内気な女の子。

 シロとクロという二体一対パペットを連れている。

 オッドアイで、強い魔力を保有している。

 養成所内でも優秀な生徒であり、複数の学科を受講しているため、かなりの博識者。




○ラント・シュトライヒャー

 クラス:重剣士

 ヒンメルとメーアとは幼馴染み

 もともとは孤児だが、それを負い目に持っていない

 幼い頃に知り合ったヒンメルに引き回されているものの、それを辟易していながら、楽しんでいたりする。




○シロ&クロ

 メーアが魔力を供給している、自我を持つ人形

 共にメーアには過保護。

 黒人形のシロはやんちゃなBoy系人形 思ったことはすぐに口にする

 白人形のクロはおっとり系Girl系人形 毒舌マシーン




○フランメ・リヴァーリン

 クラス:医療専門魔術師

 ヒンメルと同級で、委員長タイプ。

 隣国杖の国出身、本名フランメ・テヒター・アハテンス・パロ

 杖国王の8番目の娘で、王位第15継承者。

 リヴァーリンは母親の実家の姓で、それを名乗っている。

 王族であることは隠しており、遊学と称して養成所の寮に身を寄せている。

 昔からヒンメルとは顔馴染みだったりするが、あまり仲は良く、犬猿の仲。

 (王族云々は、作品的設定にはあまり関係はない)



○ヴィント・フライエ ゼルプスト ズュヒティヒ カイト

 クラス:魔術師

 フランメが養成所に通うにあたって、自国で適当にスカウトしてきた付き人的存在。

 付かず離れずで、適度に距離を置いて、友人として接している。

 女の子好き。ナンパするより逆ナンされるタイプ。

 長ったらしい名前は自分でつけたらしい。

 出身国は不明。



○シュヴェルツァー

 養成所の教員であり、ヒンメルたちの学級の担任でもある。

 魔力でその姿を変えており、小学生程度にしか見えない容貌をしている。

 普段は子供染みた口調で喋ってるにも拘らず、キレた時には相応の口調になり、(生徒の間では)ブラックと呼ばれていたりもする。

イメージボイスはI上K子さん。




○ルディ

 ヒンメル達が幼少時から溜まり場としている酒場「マリー」のマスター。

 面倒臭さをみせながらも、かなりの面倒見がよく、情報通。

 若い頃は、冒険者としても名を馳せており、実力は今でも衰えてはいない。 妻帯者で妻娘を溺愛している。



○モモ

 ルディが経営している酒場の看板娘。

 カイ、リクという3人でチームを組んで活動している。



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