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この音は他人に聞こえてはならない。
ー彼氏と別れた。理由はお互いのすれ違いの差が生じたから。絶対にこんなことあってはならないと思っていたのに、その悪夢は突然、平然と起きて過ぎ去った。ー
「ここか」
あれから3年。あの頃は短かった髪の毛も、今ではボブカットになっていた。そんな髪の毛を揺らしながら着いたのは新しいマンション。以前住んでいたマンションは、元カレの臭いがこびりついていて、なんとも言えない不快感を醸し出していた。
やっとのことこのマンションを見つけた私は、ひとまず安心した。もうあの臭いを嗅ぎながら住まなくてすむ。そう思っていたのだ。
さっそく玄関へとはいると、荷物を端の方へ追いやった。そしてお隣さんへの挨拶として、紙袋を一つ取った。私の部屋は一番端だから、挨拶の荷物が少なかった。光が反射するドアを鏡に、服装を整え、お隣さんの家へと急いだ。