俺は貝になりたい
セツの話によれば、なにやらチコちゃんもセツもカオリも俺が居るから具現化しているらしい
因果に背き、維持している状態なのだと
俺の真我がなければ力を使うこともできない
まずはそれを解くことから始めるそうだ
「なるほどね」
冥界にセツが直接行ってカオリを取り戻せなかったのはそのせいか
俺の肉体を解体し、魂にしたことでセツが冥界に入れたと
現世で俺の死を繋ぎ止めていたから現世から離れられなかったんだな
(因果と輪廻は光と闇、表裏の存在)
神滅不滅論争の原因になったそうだが、今はどうでもいい
「愛を満たすって所を説明してくれないだろうか?」
(神の審判をやり直す)
その昔、パリスの審判と呼ばれる歴史が地上で起きた
これによりあのトロイア戦争が勃発した
その元始が神の審判
ユーノ、ミネルヴァ、ウェヌス
この天界三美神の内、誰が最も美しいかを決めたのが原始の望、カオス
そしてカオスはウェヌスを選び永遠の愛を手に入れた
地上は愛で満たされ、ウェヌスの化身、ヘーラ、アテネ、アプロダが地上に生まれた
それにより天界戦争が勃発
ゼウスの妻ユーノと叡智ミネルヴァが嫉妬に狂った
「マジかよ」
どうやら俺がゼウスとサタンを戦わせてしまったようだ
パリスの審判か
確か災いの女神が投げ入れた林檎が原因でとんでもないことになった話だ
最も美しい女神へ、などと書かれた林檎を欲しがった三人の女神
ゼウスの妻ヘーラと娘のアテネ、そして美の女神アプロダ
ゼウスでは選ぶことができず羊飼いのパリスに選ばせた
三女神はパリスを買収しようとし、見返りに自らの持つ力をパリスに分け与えると交渉する
ヘーラは神に匹敵する知識さえあれば地上の覇権を握れると説得
アテネは力こそパワー、誰にも負けない力を授けると説得
アプロダは愛こそ命の源、世界一の美女と永遠の愛を約束
結果、パリスはアプロダを選んで世界一の美女の愛を手に入れた
これだけなら平和に解決しそうなもんだが、アプロダがパリスに与えた世界一の美女ってのが人妻だったんだよね
妻を奪われたスパルタ王が怒り狂い、全ギリシア軍がトロイアに進軍
ギリシア連合軍の中には無敵のチート戦士アキレスもいたのだが、パリスがアポロンから貰った弓でアキレスの足首を射抜き撃退
なんやかんや神に愛されてたパリスだったが、最後は毒矢にやられ、元恋人に薬を作ってもらおうとするも断られ、愛によって死ぬって感じのギリシア神話
現代では研究が進み、この話は神話などではなく本当にあった歴史だと言われている
(望は混沌の始祖)
(前も聞いたなそれ)
俺はセツにそれ以上の説明は求めなかった
カオスを引き出すのは危険だ
なにやらゼウスはかなりの女好きで浮気ばかりしていたらしい
14人の妻を持ちハーレムを作っていたそうだ
なんと羨ましい
しかし、ウェヌスはゼウスに靡くことなくカオスを選んだ
「つまり俺とカオリは結婚してるってこと?」
顔を赤く染めるカオリはとても美しい
ゼウスの女癖を止めようとした俺とサタンはゼウスに敗れ堕落した
地上に落ち、転生してパリスとなり
ヘーラ、アテネ、アプロダからアプロダを選びトロイア戦争が勃発したと
俺は思っていた
今度生まれ変わるなら、いっそ深い海の底の貝になりたい…