悩んだら俺に相談してくれ
どうやら俺の親父は精神病だったらしい
「望さんのお父様はとても優しい方でした」
俺の知らない親父のことをカオリが優しく教えてくれる
責任感が強く、誰よりも真面目で優しい、そんな人だったと
俺が生まれる前、親父は入社数年で幹部クラスまで昇格した本物のエリートだったそうだ
両親や周りが親父に期待し、親父はプレッシャーの中で、必死に戦っていたらしい
それを良く思わない人間もいた
出る杭は打たれる運命なのか
この世は理不尽で不幸を被る人が多い
親父も不幸を被った一人だった
幹部になるということは責任を負う立場になるということ
周りからの理不尽な圧力に耐えきれず、部下の全ての責任を負い、親父は脱落した
あれほど期待を寄せた両親や周りの人達は、そんな親父をさらに攻めたてる
結果、親父は自ら死を選択した
それがどれだけの人を苦しめるかも知らずに
しかし、そんな親父に人生を説いた一人の老人が居た
親父は周りが見えなくなっているだけ
親友や近い存在、敵だと思っていた周りの人達は親父のことを心から心配していると
親父は心の病に罹ってしまった
そしてこの家で一人、必死にその病と戦った
目に見えない、不確定で、確かにそこにある愛を信じて
悲しみの中にある愛しを求めて
高祖父の時代、若者の死因の半数が自殺という事態に陥っていた
貧乏だから、片親だから、容姿や性格など
自分より弱い立場の人間を見つけては
それを非として認めないことで自我を維持している弱い人間
集団で生活する若者には耐えられない環境が、少なくとも存在していた
ある程度の年代から、羞恥心、道徳心、思春期が芽生える
自分の意思で生き死にを選んでしまう
大人から見たら、大した問題ではないのだろう
子供の世界は親や周りの環境がすべてであり、強大な、絶対の存在なのだ
今でこそほぼ全ての高校大学は通信制だが、昔は高校大学も集団の学び場と言うのだから恐ろしい
あの悲しみの世界にある、僅かな愛を奪い合っていたのだろうか
親父のタルパ、スズネとスミコは死者なのだという
あの部屋の世界で、死んだスズネを具現化した親父は後悔した
チコちゃんが癒やしたのだろう
友達の言葉でスミコの力を使い、富を得た親父はスミコに罪を感じていた
救いを求めセツを具現化し、真理の先に救いを知る
カオリの力を借り、スズネとスミコ、そして自分の為に
親父は真理の扉を開いたのだ