死の先を逝く者達よ
数日後
俺は無双転生を使えるほど、心に悲しみを負っていた
「ちょっとセツ、もうのん坊は限界よ」
俺のことを心配してか皆がセツを責める
「セツは悪くないよ、皆ありがとう」
そう力なく主張する俺をチコちゃんが心配そうに見ている
大丈夫だからね
俺は悲しみの奥に感じる何かを求めて立ち上がった
今日は皆が側に居てくれるようだ
「今日はこれでござるよ」
サユリが悲しそうに手渡してきたそれは
エンジェルビート
アニメとゲームがあるようだがアニメしか耐えられそうにない
流れてくる映像を見るだけのアニメとは違い、自分の意志で選択し、テキストを読み進めていくゲームは没入感が半端ないのだ
なになに、エンジェルビートとは、死後の世界、運命に立ち向かう少年少女の物語
死んだ世界戦線で戦いながら仲間の物語を手を振って見送れ、よかったね、と
ふむ、バトル物か
死というシリアスな問題を扱いながらもコミカルに進んでいくストーリー
未練がなくなり成仏していく仲間たち
次は幸せな人生を
「生きることは…素晴らしいんだって」
その通りだ、人生は素晴らしい物なんだ
エンジェルビート、こいつは素晴らしい作品だ
笑いあり涙あり、創造主の愛と感動が詰まっている!
隣で感動している天使のようなチコちゃんの頭を撫でながら思っていた
どの物語にもすべて悲しみの中に愛が溢れていた
(愛とは、かなしみの中に愛を当て、愛しと書く)
愛おしい、可愛い、守りたい
それら全ての悲しみの根源には愛がある
(だけどまだ足りない)
嘘だろ…
セツの手に握られている箱にはリトルバッターズの文字
野球か?
「もう十分でしょう」
カオリが俺を抱きしめてくる
「よく頑張りました、感謝します」
カオリの愛に包まれて俺の悲しみ探しは終了した
今、俺の部屋にはセツとカオリが居る
なにやら大切な話しがあるようだ
(望は本当に真理の扉の先へ行きたいのか?)
正直悩んでしまう
親父が言ってた、チャンスは一度きりだと
真理に何の意味があるのか
人生を賭ける価値はあるのか
タルパと生涯幸せに暮す選択肢
親父はそれを知りながらも挑戦したと言うのか
(望の父は死の先を目指していた)
なにそのヴァルキリーに選定されるみたいなのは!