あんぱんとたい焼き
数日後
「よしサユリ、俺はもう大丈夫だ、ばっちこい!」
幾多の悲しみを知った俺はさらなる悲しみを求めていた
「覚悟するでござるよ望氏!」
なにやら今度のは相当な覚悟が必要らしいな
「これでござる!」
サユリが手渡してきた箱を手に取る
クラナウド
アニメとゲームがあるらしいが、ゲームはダメージがでかすぎるのでアニメにした
どれどれ、クラナウドとは
主人公が通う学園で出会うヒロイン達との交流と成長の物語
怪我をして不良となった主人公は数々のヒロイン、親友、恩師、家族との絆を深め真実の愛を知る
なるほど学園物か
不良になるとか心が病んでる証拠だ!
しばらくして長かった学園生活も終わり、物語は社会人編へと移り変わる
命懸けで子供を産み、死んでしまったヒロイン
最愛の妻を亡くし自堕落な生活に戻る主人公
この主人公は幸せになってほしい
コヨリを失い死にたくなった頃の自分を重ね、本気でそう願うようになっていた
「あれ、一つだけだから。選んでくれて、買ってくれた物だから。初めて、パパが」
アニメを見終わった俺は、あんぱん片手に牛乳を飲みながら泣いていた
今の俺にはあんぱんと牛乳さえあれば何もいらなかった
「強くなりなさい」
泣きながらあんぱんをかじる俺をユウ姉が優しく抱きしめてくれる
しかしクラナウド、あれはまさに人生だ
すばらしい人生を教えてくれた創造主に俺は心から感謝したい
(まだ足りない)
嘘だろ…
数日後、俺は悲しみを探していた
「大丈夫でござるか望氏?」
心配そうに俺を見るサユリ
「大丈夫だよ、ありがとなサユリ」
俺は優しくなれた気がした
「次はこれにするでござる」
そう言ってサユリが手渡してきたのは
カナン
アニメとゲームがあるらしいがとりあえずアニメからにしよう
なになに、カナンとは
7年前の雪国で記憶を失った主人公がヒロインを通じて、過去の記憶を取り戻していく
叔母の家に居候しながらヒロインと共に過去の記憶を呼び覚ませ
ふむ、学園物でござるな!
「ボクのこと忘れて下さい」
うぐぅううううううううううううううう
もうあかん
これ以上の悲しみを負ったら俺はどうにかなってしまう
リュウに作ってもらったたい焼きを食べながら、リュウに泣きついていた
「たい焼きは焼き立てが一番ですね」
微笑みながら優しく頭を撫でてくれるリュウ
たい焼きは焼きたてが一番美味い
しかしカナン、これは素晴らしいアニメだ
この傷が癒えたらゲームも存分に堪能したいものだな
(まだ足りない)
ふぅ
良いだろう、この涙が枯れるまで俺は戦い続けてやる
夜はリュウが布団の中で抱きしめてくれた