守護神
マサカズは膝から崩れ落ち頭を下げて動かない
何か考えているんだろう
存分に考えてくれ、人間は考える生き物だ
他の動物とは違う
子供だと認識してるだけで大人が思ってるほど馬鹿じゃないんだ
アインシュタインは9歳でピタゴラスの定義を完成させた
これは好きな事、興味を持った事に全力になった結果
子供はわがままじゃないんだ
買い物に行けば何か買って貰えると学習してる
買って貰えなかった時に、どうして買って貰えないのか訴えてるだけ
原因は最初に親が買ったから
うちは貧乏だと思ってた理由がこれだ
特別な日以外には小遣い以外、一切何も買って貰ってない
しつけが厳しかったんだ
貰えるのが当たり前だから、人が作った物を馬鹿にする
月500円を必死に貯めて自分で大好きなマスタースミスを買う
好きな事を自分で決める力が足りないから、物の大切さ脆さ儚さに気付かないんだよ
流石になげーな、もう1時間近く経つぞと思った時
「私はもう戻れない、死んでも償えない過ちを犯してしまった」
そう言ってマサカズが俺を見る
もっとだ、もっと認識を高めて見るんだ
「あんたはカナエを認識していた」
水槽の中に居るカナエを、あんたが認識していたんだ
「キミには見えたのか」
あんたのお陰で認識する事が出来たよ
俺がそう告げるとマサカズは実験の事を話しだした
「最初は些細な実験だった」
仮想空間でカナエを傷つける
ただのアバターだ、リアルに影響はない
私の居ない所でもずっとその研究は続いた
私が出張から帰りカナエを見た時、その異変に気付いた
アバターを傷つけると現実のカナエが痛みを感じる
ありえない、VRによって痛覚は完全に遮断されているはず
仮想空間のペインスケールを上げてもリアルに影響は出ない
科学者達はそれを見て限界を試した
アバターが死ななくなったのだ
五体を切り離しても復活する
仮想空間で架空の家族を目の前で殺し、涙を流すカナエ
次第に感情をなくし何も感じなくなる
あらゆる毒や熱など、人類が考えられる全ての手段を使っても死なないアバター
研究者は恐怖し、現実世界のカナエを認識出来なくなった
神になったと意識したのだ
マサカズが俺を見る
涙を流し、奥歯が砕けるほど噛み締め怒りを耐えた
「私はカナエを救いたい」
せめて現実世界で楽にさせたいと、私は引き金を引いた
カナエの近くには守護神が存在している
近付こうとする者を無差別に排除する存在
クオリアはカナエの力で完成した
あの大会でサイコパスを集め、アバターを現世に具現化しカナエを楽にしてあげたかった
しかし、どんなに強いプレイヤーでもカナエを傷つける事は出来なかった
もう限界だと思った時、ミザリーが抱きしめてくる
(ありがとうミザリー)
「1つだけ聞いて良いか、カナエをそこまで追い詰めた研究者ってトゥリヴィアルか?」
男の首が縦に動いた
どこまで腐った奴らなんだ




