カニ歩きの真実
「因果応報ってやつだな」
担任は犯人が判明しても、俺に謝罪すらしなかったよ
それどころか俺を邪魔だと思うようになる
子供の世界では大人が絶対の存在だ
担任のそんな態度は子供にも伝わる
周りの子供の虐めはどんどんエスカレートした
俺に何をしても担任は見て見ぬふりをするんだ
腕の骨が折れても、肋骨が折れても、ずっと我慢していた
うちは貧乏だと思っていたから
相手に怪我させたらお金がかかると思って、やり返さないでひたすら耐えた
勘違いするなよ?不幸自慢をしてるつもりはない
俺はもっと不幸な人をたくさん知ったから
今ではその出来事が、俺を強くしてくれたと感謝しているよ
すまなかったと男が頭を下げた
そうじゃない、謝罪の言葉が欲しくて話したわけじゃない
「もう1つ、あんたは勇者が気付いてないと言ったな」
気付いてないと思っていただけじゃないか
ただのプログラム、そう認識していただけなんじゃないのか?
「何か間違った事を言っているかね?」
ここまで話してもまだわからんのか
「ロールプレイングゲーム、日本で爆発的人気になった初期のテレビゲーム」
プレイヤーは画面の中の勇者を操作しモンスターを倒す
横を向く事もなく、後ろを振り向く事もなく、カニ歩きしてた
不自然だと思うだろ
でも当時の人は何も感じなかった
初期のゲームだからそれが当たり前の事だと疑わない
シリーズ化していくうちに、カニ歩きは不自然だと思うようになる
「容量の問題だろう」
横や後ろ姿のグラフィックを入れるスペースがなかっただけだ
「そうだな、あんたは間違ってない、でもそれじゃ足りない」
もっと深く考察してくれ
創造主がそんな不完全なゲームを創ると思うか?
勇者だぞ、世界で一番強くて偉い存在
他を削ってでも勇者をかっこよく見せたいだろ
俺には創造主の考えがわかるよ
勇者ってやつは、どんな時でも気を緩める事はしないだろう
魔王に攻め込まれてるんだ、油断なんて出来るわけがない
人を魅了する物語には世界観ってやつが大事なんだよ
勇者がなんでカニ歩きで、ずっとこちらを見ていたのか
世界の外にいる何者かを警戒して、画面の外に居るプレイヤーを見るためにカニ歩きしていたとは考えられないか?
「何を馬鹿な事を」
おかしいな、そろそろ気付くと思ったんだが
「1から100まで話さないと解らないようだから教えてあげるよ」
あんたは誰かに操られてると感じていたんだろ?
世界の意思みたいな物
確かにそう言ったよな
認識で出来た不完全な存在
これを聞いて、あんたは知ったつもりでいただけなんだよ
勇者を殺せるのはモンスターだけじゃない
プレイヤーが殺す事も出来てしまう
「この世界は1つではないんだ」
あんたのは考察じゃない
人間に絶望し、自分の限界を勝手に決めてしまった可哀想な人間
それじゃ一生タルパは理解出来ないよ




