1話 ダンジョンへ
ゴールデンウイーク明けの5月。
未だ友達のできてない柳崎 翔輝はちらりと時計を見て昼休みが近づいていることを確認する。
「はぁー」
外を見てこの後のボッチ飯を考えると憂鬱だ。
「柳崎」という名前のため、必然的に窓側の後ろの席になることが多く、今回もそうだった。
外では体力測定が行われていて新しくできたであろう仲間達と走り終えた女子が楽しそうにハイタッチしていた。
可愛さは普通だったがスポーツは得意なようでダントツの1位だった。
そんなことを考えているとチャイムがなり、外で体育を行なっていた生徒が集合して列を作った。
僕の教室でも授業が終わり、空気が一気に緩んだ。
そして急に糸が切れたように騒がしくなる。
仲良くなった友達とトイレに行く者、弁当戦争に赴く者、机を近づけて弁当を広げる者。
そのせいで僕の小さな一つの机が離島と化す。
5月ということもあり、グループは形成され、固定されていた。
教室で僕の場所だけが浮いていた。
周りを見回してもみんな楽しそうだった。
瞬間、世界が歪んだ。
目の前の視界がぼやけ、輪郭を失い世界が溶けていく。
それと同時に意識が徐々に薄れて、立てなくなる。
やばい
しかしどうすることもできない。
脳が指令を拒んでいる。
そのため激しい音を出して、柳崎はその場に崩れる。
どれくらい意識を失ったのだろうか
全くわからない。
しかし、世界が狂ったのは理解できた。
僕の目の前には洞窟が広がっていた。