いやぁ、不器用だ。
区切り方が分からなくなった今日この頃
昼食ができたので、エメリヒの分だけ大きな時計のある食堂に持って行き自分の分は書斎で食べることにした。彼女とゆっくり食べよう。
ビーっとチャイムがなる、俺はヒリヒリと痛む尻をさすりながらドアを開ける。
「よう、ジャックはいるか?」
昨日、仲間たちを仕留めた吸血鬼がかごを背負って立っていた。銃があれば滅ぼせるのに……生憎、銃はあの忌々しい一人SM吸血鬼野郎に没収されて手元にない。今はこの館の従者として丁寧にふるまうか。
「さぁ、知らねぇな」
「そうか、邪魔するな~。紅茶淹れてくれ。お前、紅茶淹れは素人そうだからダージリンでいいぜ。ブランドはMoon blessingでな~」
どかどかと遠慮なしに人の家に入る吸血鬼。確か、招かれないと他人の家には入れなかったはずだ。丁寧に血で手紙を書かなければいけなかったはずだが……まぁ、それは置いといて紅茶淹れに行くか。茶葉適当に入れて、適当なお湯注げばいいよな。客用っぽいティーカップに注いで出せばいいか? それを吸血鬼の目の前に置くと、吸血鬼は一口飲むと紅茶を吹き出した。
「あははは! くそ不味い! 適当に淹れただろ! まぁ、初めてだし仕方ないな。俺はアドリアン、ジャックの友達だ。食料品と日用品届けに来た、それとエメリヒ宛の手紙な」
「俺に、手紙?」
「フローチェにお前の親族に接触してもらって来た。当分帰れそうにないって伝えておいた、そんで伝えたいことを書いてもらった。ちゃんと読めよ」
「というか、あの女も吸血鬼だろ。気付かれなかったのか?」
「吸血鬼にもいろいろある。フローチェは、吸血鬼っ気が薄いから気付かれないんだよ。でも、気付かれたら面倒だけどな」
ふぅん、本で読んだことのない事だな。俺はそう思いながらビリビリと手紙を開ける。手紙の内容は長かったので要約してみた。まず、一つは一言ぐらい言ってから出ていけ。もう一つは、早く帰って働け。だった、わざわざ説教文をよこしやがって、こっちは命の危機だってのによ。腹が立つわ……そう思い俺は手紙をびりびりと破った。その間にアドリアンは生活品を机に並べていた。街で売っている物と同じだ、警戒はどこでも強くなってるはずだが、その中をすり抜けて仕入れていたのか? かなり無謀なことをするやつだな。
「お前、ジャックと喧嘩でもしたか?」
「は? どういう意味だ?」
「いやぁ……嫌いな人間でも食事は一緒にとるからな。珍しいと思っただけ、ジャックは社交的に見えてただ一方的にグイグイいってるだけだし、他人との距離を測るのが苦手だからな。前も捕食予定の女性と上手く距離が取れなくて逃げられたって愚痴こぼしてたし。まぁ、違ってたら別にいいけど。あいつの取り扱いについては、心得てるつもりだから愚痴こぼしてもいいぜ」
信用はしてないが、実際、困ってるし聞いてみるか。
「靴ベラで尻叩かれたんだけど、どうすればいいの?」
「は? あははははははははは!」
切実な悩みを言ったらいきなり笑われた……腹抱えるぐらい面白かったか?
「ひー、それは完全に距離の取り方間違えてる! いいか、よく聞けよ。少しずつ距離を詰めてやれ、最初は冷たくして慣れたら仲良くしてやればいい。鞭とか尻叩きは少しずつ練習してやってくれ、俺が教えてやってもいいぜ」
結構いい人そうだ。この人とは上手くやれそうだ、俺は生活用品の入った籠を持ち台所の保存用氷箱に食品だけを詰めて食堂に戻るとアドリアンは「俺のことはいいから休め」と言った。主人はあの吸血鬼だが、面倒だし従うことにし、自分の部屋に戻った。
人物紹介 主要人物編
名前:ジャック・ウォーカー 性別:男 種族:吸血鬼 身長:175cm 出身国:ローザ合衆国
概要
主人公1。明るく自由奔放、人間を軽蔑し物を溺愛している。自宅には大量の拷問器具を所持しており、全部先祖(前の館の所有者)の遺産とのこと。いじめられるのが大好きだが、物に限る(人間でも物を使っておればOKの模様)。社交性の塊のように感じるが他人との距離を測るのが苦手で、失敗してしまうことが多い。そのためか、友人が少ない。