更に続き
真桜「いつもの服じゃないやん・・・・、てかあの服以外の隊長初めてみたんやけど。」
学生服以外の服を着ている一刀驚いてそのままの気持ちが口にでていた。
一刀「あぁ・・・、これからこっちに住むんだしさ、いつまでもあれ一本ってのもだめかなっておもって
赤壁の戦いの前に用意してたんだよ。んで、帰ってこれたからきたんだよ。」
真桜「・・・・えぇ・・・。」
一刀「ん?なんか言ったか?」
ボソッと呟いた真桜の声に気づいた一刀が真桜にたずねた。
真桜「めっちゃかっこえぇやん! 隊長!」
そういうと、ベッドの上にいた真桜が一刀めがけて飛び込んだ。
一刀「ちょっ・・・またお前は・・・・しょうがないやつだなぁ・・・。」
飛び込んできた真桜を避けることなく、そのまま胸に招いた。
真桜「ええやん、ええやん~。そういや隊長、その服ウチ以外だれか知ってるん?」
一刀の顔を見るため上目遣いの真桜が一刀に尋ねた。
一刀「いや、今のところ真桜だけだぞ。」
真桜「あぁ~ん、ウチめっちゃ幸せもんやん! 隊長のそのカッコ初めてみれたなんて~。」
目を輝かせながら真桜が一刀の腕の中でうっとりしだした。
一刀「んな大げさな・・・・・。」
真桜「ちゃうで隊長!好きな人の一番になれるっちゅうのはごっつ嬉しいもんなんやで!」
一刀「確かに・・・・、それはわからんでもないな。」
数多くの武将達の処女を奪ってきた一刀だからこそ納得できたのかもしれない。決して口には出さないが。
一刀「んでまぁ・・・、確かに流されたい気持ちもあるけど、さすがにこれから大会でるから
今日はダメ。」
真桜「大会て・・・・、えぇっ!!? 隊長、武道大会でんの?」
一刀の言葉にすごく驚いた真桜はつい叫んでしまった。
一刀「おう、華琳にも許可もらったしな。」
真桜「えっ!? あの華琳様が許可だしたん?」
一刀「あぁ。ただ、なんかめちゃくちゃ驚いてたけどな・・・・・。」
真桜「そら驚くのも無理ないで隊長。だって隊長そんなに・・・・、つよないし・・、それに
あの大会怪物ばっかなんやから、隊長怪我じゃすまへんで?」
歯に衣着せぬ口ぶりで真桜が一刀に言った。
一刀「悪かったな・・・・・。確かに俺はお前たちより弱いっつーの。」
真桜「はは・・・。」
真桜もさすがに苦笑い。どうしても一刀の大会参戦の件だけは信じることができなかった。
一刀「ま、それでも魏の武将としてはでないわけにはいかないだろ?」
真桜「隊長・・・、武将なん・・・?」
一刀「ヴッ・・・・・、ええい、そんなことはどーでもいいの! お前の工房にあれとりに行くぞ!」
そういうと抱きついていた真桜を引き離して真桜の部屋から真桜の工房へと一刀が歩き出した。
それを追うように真桜もあとからついていったのだった・・・。
そのまま歩く事三分、真桜の工房がある庭にでた。
一刀「久しぶりに来たら・・・、えらい進化してるな・・・ここ・・・・。」
真桜「戦争がなくなったからなぁ、研究や開発に没頭できる時間増えたさかいな。」
うんうんと頷きながら真桜が誇らしそうに胸を張った。
一刀「戦争がなくなった事は素晴らしいことだが・・・、仕事さぼってないだろうな?」
疑いのまなざしで腕を組みながら真桜に尋ねた。
真桜「いやいや・・・、隊長の抜けた穴埋めるの大分苦労したんやで、ほんまに。」
真桜が一刀に向けて手をひらひらと左右に振りながらため息をついて返答した。
一刀「はぁ?俺のやってたことなんて誰でもできるだろうに。」
真桜のその言葉に驚きながら一刀が自分の仕事がなんでもないように言いはなった。
真桜が呆れながら一刀の方を向いて指を指し、頬につきたてた。
真桜「隊長、ほんま自分の能力わかってないんやなぁ。」
一刀「俺なんてただの凡人だっつの・・・・。つか指で人の頬をつつくな。」
そういうと一刀が真桜の指を握って引き離した。
一刀「まぁ、そういうのは置いといてだな。あれできてるならもらってくぞー。」
そういいながら真桜の工房の扉を開けて中に入った。
真桜「あぁ~、まってぇな~。」
一刀「おぉ~、いっぱいあるな~。」
部屋の中は外からの日差しに照らされた多くの発明品達が輝いていた。
無造作に転がっているものも多かったが、あえて口には出さなかった。
一刀「で、どこにあるんだ?」
真桜「ちょっとまってや・・・、厳重に保管するためにこの箱の中に・・・・。」
いろんな発明品で埋め尽くされた部屋の中で、一番スペースのある掛け棚に置かれていた
木箱を真桜が取り出した。
真桜「一応・・・・、何回も打ち直して、一番いい出来やったこの二振りを残して定期的に手入れしといたんやけど。」
そういいながら真桜が無理やり拡げたスペースに木箱を置いて、紐をはずし、蓋を開けた。
中に入っていたのは、二振りの「刀」だった。
一刀「おぉ・・・・これはすごいな!」
真桜「教えてくれたとおりに作っただけやからほんまにええもんなんかは
使ってもらわななんとも言われへん。
実際うちつこてみたけど、「切れる方」の刀で木の葉すら切れんかったし・・・。」
一刀「仕方ないって。けど、いい刀はその持ち主の使い方でころころ切れ味変わるんだよ。
鉄を切れる時があるし、やわらかい紙が切れない時もある。」
真桜「そうなん・・・・? ようわからんねんけど・・・・。」
一刀「まぁ真桜の作った刀はそんな刀に見えるほど良いものに見える。」
一刀は腕を組み頷きながらその刀達を見ていた。
その後、しゃがみこんで二振りの刀の鞘を握り締めた。
一刀「鞘まで上質な素材で作ってくれてるなぁ・・・、これ。」
そういいながら持ち上げて、部屋の出口を抜けて外に出た。
真桜「ちょちょちょ、ちょっとまってや隊長!」
真桜があわてて木箱の蓋を閉めて一刀が出て行ったほうへ駆け出した。
外へでると一刀が刀を抜いて、片手でひとつの刀を軽く振り回していた。
真桜「はぁ・・・はぁ・・・、隊長、そっちは「逆刃」のほうやで。」
一刀「おう・・・、ずっしりとして手に馴染むな。もう一個のほうは軽いけどめちゃくちゃ切れ味よさそうだし・・・。」
よく見るともう片方の刀は抜き身で地面に刺さっていた。
一刀「真桜、グッジョブ!!!」
一刀がそういうとGOODサインを真桜に向かって突き出した。
真桜「なんやったっけ・・・、ええ仕事した・・・やっけ?」
一刀「そういうこと・・・・、二振りともほんといい刀だ・・・、ありがとう真桜!」
真桜「そういわれたらウチも作った甲斐があったわぁ。」
満足そうに真桜がうんうんと頷いた。
一刀「あぁそうだ、この二つの刀、名前決めてる?」
一刀が思い出したように真桜に尋ねた。
真桜「んや、特にはきめとらんで。やから”逆刃”と”切れる方”で言い方わけとってん。」
首を振りながら真桜が答えた。
一刀「じゃあ俺決めていいか?」
真桜「別にええよ? 隊長の武器になるんやし。」
一刀「そうだなぁ・・・・、うん、じゃあコイツの名前は”真桜”にするよ。」
そういいながら刀の刃が通常とは逆に打たれた刀、いわゆる「逆刃刀」を握りしめて
一刀が真桜の顔を見ながら言った。
真桜「え・・?ウチの名前?」
一刀「おう、真桜が心を込めて打ってくれたからこそここまで仕上がったんだし。だから
作ってくれた真桜の名をコイツに刻みたい。コイツは誰をおも傷つけず、皆を護る為の刀だ。」
真桜「そう言われると照れてまうわぁ・・・・。」
真桜が顔を赤くして頭を指でポリポリとかいた。
一刀「で、こっちのほうはだな・・・」
持っていた「真桜」を鞘になおして、地面に突き刺さっていた刀を抜いて自分の顔の前に立てた。
一刀は数秒悩んだ顔をしていたが、何か決めた顔ですっと言った。
一刀「うん・・・・・、こいつは「玄武」と名づけよう。」
真桜「げんぶ・・・・? なんかいみあるん?」
聞いたことの無い言葉に真桜が疑問を投げかけた。
一刀「おう、玄武っていうのは俺の居た世界だと四方を守る聖獣の名前なんだ。」
一刀は刀を下ろして真桜に向かって玄武について語りだした。
真桜「ふんふん・・・・」
一刀「で、玄武は北の方角を守る聖獣なんだよ。で、魏も大陸の北方を治めてるだろ?」
真桜「そやね。」
一刀「で、その北方を守る聖獣のように、この刀で魏を脅かすものを
払いのけることができるように、と想いを込めて名づけようとおもう。」
真桜「おー・・! 結構考えてるやん隊長。」
感心しながら笑顔で真桜が一刀にVサインを出した。
一刀がそれに答えてVサインを出したが、刀を納めながらポツリと呟いた。
一刀「ま、ずっと使うことの無いことを祈るけどな・・・。」
真桜「隊長・・・・・。」
一刀「とりあえず、ありがとう真桜。心から感謝してる。」
一刀が真桜に深く頭を下げて感謝の意を伝えた。
それをみて真桜があわてて一刀に近づいてやめるよう促した。
真桜「ちょっ、隊長!そんなせんといてぇな! ウチは頼まれたことしただけなんやで?」
一刀「いや、そうだとしても、これはしなきゃだめだ。ありがとう、真桜・・・。」
真桜「んっ・・・。」
頭を上げた一刀が近づいてきた真桜の肩を掴んで唇を奪った。
不意を突かれた形だったが真桜は抵抗することもなく一刀を受け入れた。
深くは無いが、真桜の唇をついばむようフレンチキッスを続けた。
真桜「あっ・・・・んぅ・・・。」
一刀との口付けに惚けていた真桜の耳元で一刀がささやいた。
一刀「今度、お礼の込めて部屋に襲いに行くから待っとくように。」
そういうと、肩をポンッと叩いて真桜から離れ、そのまま背を向けて駆け出した。
武道大会の開かれる城内の広い庭に向かって。
一刀「また、会場でな!」
真桜「あっ・・・・、てもういってもうたがな・・・・。」
つい手がでてしまったが、差し伸べた場所に彼はいなかった。
そのまま手を引っ込めることなく、自分の唇に指をあてた。
真桜「ほんま・・・・、ただの女にされてまうわ・・・・あの人の前じゃ・・・。」
そういいながら満足そうな顔で真桜は呟いた。
真桜は一刀の背中を見送ったあと、自分の工房の扉を閉めて、自分も大会が開かれる庭へと歩き出した。