表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第二話『魔法使いと平和』  作者: 由条仁史
3/7

第3章 準最強の魔法使い

『寺』制圧に向かう平等鞠。寺の門番は逃げ出した魔法使いの一人、風使い『14C』だった。風使いの恐ろしさと鞠の魔法石のバトル。

 第3章 準最強の魔法使い



 誠の部屋で昼食をとったあと、理由をつけて外に出て、目的の寺にたどり着いた。時刻は3時57分。作戦決行は4時である。

 それにしても綺麗な寺だとは思う。鞠は仏教やら芸術やらには詳しくないのだがこれが綺麗なものだというのは分かる。そんなに大きな建造物ではなく、山との境にちょこんと建てられた美しい建造物だ。優雅なことに日本庭園も備わっている。池に松に大きな石――やはりこういうものにも詳しくない鞠はそれらが何を意味しているのかはわからないのだが――

 腕時計を見る、4時だ。それでは出撃――もちろん正面からの突入ではない。寺と庭園をぐるっと囲む塀を乗り越えてからの出撃だ。

 すたっ、とできる限り音を立てずに着地成功。背の高い草の茂みに隠れる――そこでジャストタイミング。寺から人影が一つ出て来るのが見えた――鞠にはその人影に見覚えがあった。

 『14C』と呼ばれている魔法使いだ――つまり、敵である。風の魔法使いとして脱走した敵――良かった。本当に良かった――と鞠は思う。

 もしここで電撃使いと出くわしてしまったら――鞠が勝つ見込みはほとんどなかったからだ。

 ここはチャンスだ。もし彼女『14C』を生け捕りにすることができれば、これからの戦闘バリエーションが増える――例えば人質に使ったりと――鞠にとっては喜ばしいことだ。喜んでするべきことじゃないけれど。

 一瞬で捕まえて、一瞬で羽交い締めにする――突撃する!

 突撃といっても、どりゃあああ、など声は出さない。声を出してしまえば私がいることはバレてしまう。声を出さずに、音を出さずに締め上げる――つもりだった。

 駆け出した私は三歩目にして――上方に吹っ飛ばされた。

「うぐおぉっ!?」

 しまった――と吹っ飛ばされながら思う。いや、なぜ最初から気づいていなかったんだ。ああなんて頭が弱い――相手は風使いだぞ。

 風の流れから位置を特定することなんて――学校で散々見た技術じゃないか……!

 空を舞い、寺の庭にあった池に着地――着水した。水でいくらか衝撃は干渉されたが痛いものは痛い――水面に打ち付けられた衝撃で意識が一瞬ブラックアウトする。

 幸いそこまで深い穴ではなかったので、すぐに起き上がる――髪も服もびしょびしょだ――そして『14C』を見る。若い女性だ。薄い緑の長い髪。黒い瞳。学校で見たときとはまるで違う雰囲気だが、それでもそれが彼女だと分かってしまう――

「……ふふっ」

 彼女『14C』は笑い――真っ赤な真っ赤な火の玉をこちらへ投げつけてきた――

 ……火の玉!?

 風使いである彼女がどうして炎を使えるのだろうか――いや、考えればすぐに分かる。風による摩擦で炎を生み出したのか――そんな隠し技を持っていたのか――!

 しかし池に落ちていたのが逆に幸いした――直撃する時に合わせて、潜ってしまえ!

 火の玉が目の前に来た――潜る! ボシュゥゥという音が聞こえ火の玉の消滅を確認。池の底を駆けるようにザバァァンと池から出て。

 鞠は『14C』を睨み付ける。

「ふふふ……流石はわたしの生徒ね。だけど、あの特攻は正直迂闊だったわよね――。そういう小さなミスが命取りになるのよ?」

「……どうも、先生」

 『14C』……『戦う部隊』における戦闘技術養成学校というもので、空間把握能力技術の先生として教鞭を振るっていた。言い換えるならば、鞠の恩師である。そして、彼女の得意な魔法である風はまさに空間把握能力を伸ばすのにはもってこいというわけなのだった。

 鞠は――正直言って戦いたくなかった。いや、元から戦うのは嫌いなのだが先生とバトるなんて想像していなかった――『14C』という魔法名だって同姓同名の赤の他人であってほしいと思っていた。もっとも魔法名に姓も名も無いのだが。

「ここにきたってことは、やっぱりわたしを倒しに来た――いや、殺しに来たってことなのかな」

「……正直戦いたくないですよ先生。あなたが今すぐ手を上げて降伏してくれるのなら、あなたは傷つかなくてすむ」

「わたしが? 傷つく? 冗談きついわー。風を使えるってことはね、現実世界で私に指一本触れることが出来る人はいないってことなのよ」

「容赦はしません。それだけはお願いしますよ」

 再度――睨み付ける。

「ふふふ――そう来なくっちゃ」

「どうして――」

 宣戦布告の前に聞いておくべきことだったが、鞠は聞いた――

「どうして、『魔法行』から逃げ出したんですか?」

 中にいれば楽園だが、外に出れば待つものは死――魔法使いを束ねる機関。『魔法行』。どうしてそこから逃げ出したのか。誰もが気になることだろう。

 もっとも、脱走に成功したという平等濾過は、未だその理由を鞠に話してくれていないのだが――

「わたしは、何も、語らない」

 『14C』はそう言い――風を操り無風状態にしたのか――静寂が訪れた。

 風の音が――止んだ。

 濡れた髪と服から滴る水滴と、鼓動の音と呼吸音――そして、彼女の言葉の真意を考える。

 何も語らない――そうだ。この人は教師という立場でありながら、真の意味では何も語らなかった。いつも誰かが言ったようなことを言って、肝心な部分は何も言わなかった。そんな性格が好きな生徒もいたが、何を考えているのか分からないその行動理念は不気味ではあった。

「私はあくまでも門番。あなたが来たから迎え撃つだけ――それ以上の意味はないし、その根底にある意味を教えるつもりはない」

「魔法を――一般人に教えるってことに、抵抗はないんですか?」

 注意深く。『14C』を見る。

 いつ攻撃してくるか分からない。いつ戦闘が始まるかわからない。バトルは始まっていて――一瞬の差が命取りなのだ。

「わたしが教えているわけじゃないわ。ふふ。先生やってたからって教育しているとは限らないのよ」

 と、非常に軽い返答が返ってきた。本当に――何も言っていないな、と改めて思う。

「……わかりました。話し合いでは埒が明かないってことが。先生」

「ふふふ。元からそのつもりだったけど? ほら、早くわたしを傷つけてくださいな。無理でしょうけれど」

 スカートのポケットの中に入れていた――魔法石を取り出す。鞠の手より少し大きい木製の正方形の枠の中に半透明な緑色の石。これが、鞠の武器である。鞠専用の魔法。鞠にしか操ることのできない魔法石。

「行きますよ」

「ふふ、来なさい」

 魔法石を空高く掲げる――そして地面に叩きつける。さらに靴の裏で――踏み砕く。

 きらきらした緑色の破片が地面に飛び散った――




 魔法石という言葉を聞いた時、どのようなものを想像するだろうか。魔力を高めるための石。魔法を使うための石。などと言った補助として使われる石を想像するのではないだろうか。

 あくまでも魔法石はサブ。

 メインは魔法だ。

 しかしそうなると、鞠がこれから行う、魔法石による戦闘というものが分からなくなってくる。魔法石はメインではないというのが一般的な通説なのだから。

 つまり、鞠のこの魔法は、魔法石をメインとした魔法というわけだ。魔法石がメインで、魔法はサブに回っている。

 一体、どのような戦い方なのか――




 『14C』は一瞬怪訝そうな顔をして――私は最初の攻撃を開始する。特攻を数えなければ、だが。

 昔の話とは言えど先生を傷つけるのは嫌だったが、仕方が無い。これが任務なのだから。

 砕けた魔法石の破片。ある程度細かく砕けて――割れた部分が鋭利になっている。それを利用する。

 砕けた魔法石を――魔法で『14C』に飛ばす!

 これが鞠の戦い方――魔法石を、魔法によって武器として戦う。魔法石を思い通り操る力――それが鞠の魔法。

 『14C』はその乱射攻撃を――岩でガードした。

 岩で。

 風使いとか言いながら炎とか岩とか――様々なものを利用した戦い方。風使いの真に恐ろしいところである。

 風で庭にあった大岩を動かし、魔法石の破片の攻撃を食い止めたということだ。

「くっ――」

 強いなぁ。と純粋に思う。風というものの強さを今改めて感じた。

 次に起こることがどんなことなのか想像がつくからこそ――そう思う。

 彼女がふふ、と少し笑ったと同時に――今度は岩が砕けた。砕けて――鞠の方に破片が飛んでくる。

 これも風だ――風を一点集中させることによって岩を砕く。そして風で飛ばす。

 そのような攻撃が来ることは予想していた――だから、魔法石を薄い壁に変化させて、それを防ぐことができた。薄く、硬い――壁。

「ぐっ――!」

 ドゴドゴと岩が壁に当たる。岩を防ぐことは出来るが流石に空中にあるので衝撃すべてをなくす事はできない――そしてその衝撃が命取りだ。

「!?」

 振り返る。さっきまで前にいたはずの『14C』が後ろにいた――いちいち攻撃が早い!

 岩を防ぎ切るのを待たずに、今度は魔法石を剣の形にする――しかし、事態はそんなにのんびりしていない! 『14C』は鞠に向かって――手のひらを見せた!

 最初に一撃食らった、あの超突風の予備動作だということは簡単に予想できる――街中に落ちたら確実に死ぬ!

 こうなれば剣なんか作っている場合ではない。壁をそのまま後ろに持って行き、ちょうど風を受け流す形に変形させる!

 しかしその変形も無意味なものである――なぜなら、鞠を吹き飛ばすために超突風を生み出したのではなかったのだから。その風は鞠を通り過ぎ――池に突っ込んでいった!

「てやァッ!」

 『14C』の掛け声とともに水が巻き上げられて行く。風を使えるならば水を掻き上げることも出来るということだ――!

 万能すぎるだろ風使い――と鞠が思った時には時すでに遅しだ。

「うごあぁっ!」

 自分の背中に水が叩きつけられた感覚――先ほど吹っ飛ばされたのとはわけが違う。前方に張っていた壁と挟まれて――尋常じゃない量のダメージを受けた。

 壁を液状化させ自分の体にかかるダメージをやわらげ、倒れる――もうだめだ。そう思った。

「ふん。なるほどね――その緑色の魔法石は、あなたの思考によって形状を変えるのね。そしてその動きも操ることが出来る。正解かしら?」

 第一、風使いなんて最強じゃないか。人間が生きていくうえでは空気が必要で、そしてエネルギーが存在する限り風は生まれる。人間の生存には必要な――風。

「とても便利な魔法ね――だけど、それがどうしたっていうの? わたしの風の前では――まったくの無力だわ」

 無力――そうだろう。私がどれだけ強いベクトルで魔法石を飛ばそうとも、それを超える勢いで向こうは風を操ってくる。というより、向こうはこれでもまだまだ手加減している。風で殴ることもできるだろうに、岩による攻撃だとか水の巻上げだとか……ああ、本当に手加減されていたんだろうな、と思う。

 まったく無力で――嫌になってくる。

「ま、先生と生徒の格の違いってやつなのかしらね……年下は年上にかなわない。本当だったわね」

 亀の甲より年の功――というか。この場合攻撃力の質がそもそも違う。というか私の魔法は防御に偏った性質をしていて、もとより勝てるはずなかったのだ――

 分かっていた。

 心のどこかでは分かっていた。

 私は、死ぬ、って。

「残念だけど――わたしはあなたが死んでも、きっと悲しめる心はしていない。悲しんでも――どうせ、わたしはあなたのことを語ることはない」

 彼女『14C』は少し悲しそうな顔をした――様な気がした。でももう関係ない。

 ああ……太陽が傾いている。実に傾いている。空は青く、澄み切っているではないか。夏のこのまぶしい日差し――

 この空の中に、平等鞠もまた澄み切った空の一部になるのだろうか――

「――『風圧殺』」

 世の中には数々の殺し方があるが、そのうちのひとつが圧殺であり、風圧とかけて――

 風を用いた圧殺――『風圧殺』

 倒れたまま、風が自分の体を押すのが分かる――私は死ぬ――


「……あ」


 たった今、思いついた――ある。あるじゃないか。風使いを打ち破る方法が――たった一つだけ!

 ギリギリ――ギリギリ、死ぬ前に思いついて、本当に良かった!

 躊躇なんかしていられない! 液状化していた魔法石を――爆発させる!




 風使い。

 見方によっては途轍もなくとんでもない魔法の使い手である。間接作用な物理的な現象として今人類が操れるのは電気までだから、人類最強は電撃使い、つまりこの場合『DghT』なのだが、それでも風使いが直接作用として最強であるのは確かだ。

 人間は風が無ければ何も出来ない――四大元素のひとつにも数えられるくらい重要なのだ。それを操るのならば、人間と戦って――否、地球上で戦って、負けることはないだろう。

 しかし――そんな風使いには、数少ない弱点というものがある。完璧だからこそ生じる欠点とでも言い直そうか。そう――欠点である。

 例えば、某小説においては――空気がなくなるくらい上空に行く、という攻略法が使われた。空気がなくなれば、風もない――しかしこの手法にはやはり無理がある。

 まず空を飛べることが第一に必要だし、空気の薄いところでどれだけ耐えられるか――いや、そもそもの話だ。空気を下界から持ってこられて――それで宇宙空間へ吹き飛ばされればおしまいだ。賭けとしてはとてもリスキーな方法だ。

 だからこそ、ほかの方法が必要だ――そして、それができる人物が、この平等鞠だった。

 鞠にしかできないこと――だった。

 鞠専用の魔法石の魔法。システムとしてはとても単純。魔法石の挙動を操ることができる。だから一瞬でダイヤモンドよりも硬い薄い壁を作れるのだ。鞠の魔法の真髄は、その大胆さと精密さにある。

 魔法石の硬さ、硬度を変えることができるのならば、魔法石を、液体にすることだって、可能なのだ。

 液体で相手の体内に入り込み、内部から破壊して行く――そういうグロッキーな戦い方だってできる。

 しかしこれも風使いに勝つ方法とは言えない。なぜなら、魔法石は手のひらサイズ。それを液体にしたところで、吹き飛ばされればおしまいなのだから。

 では、どうすれば良いのか――勘の良い方はもうお気づきだろう。

 そう――魔法石の、気体化である。



「あ……れェッ!?」

 『風圧殺』で、鞠はその小さな頭の白い髪を赤く染めることはなかった――おかしなことに!

「どうして……!?」

 どうして。そう言いたいのも山々だろう。というか、それ以外の言葉をそれより早く紡げなかったというべきか。

 鞠は――立ち上がった。ああ、さっきはなんて馬鹿なことを考えていたんだ。死ぬ? 私が?

 そんなの――認めない。

 認める力が魔法ならば、魔法で命を救おう――まずは、自分の命から。

「どうして……ですか。先生」

 余裕の表情で『14C』を見る――見下す。という言い方のほうがより正確かもしれない。

 そりゃあそうだろう。自分を殺そうとした相手を、どうして許せるだろうか。たとえ昔の先生だったとしても……。

「くッ……!」

 風を使って私に攻撃しようとしているが――まったく効いていない。

 そよ風も――吹いていない。

 ただ――空気が少し緑色か?

「何故か……なぜ先生の『風』が吹かないのか。簡単なことですよ」

 そういえば、濾過さんからのピン電話は鞄に付けたままだったな――我ながら馬鹿げたことをした。濾過さんなら……こんなにピンチになることはなかっただろうから。

 確かあの砂衣だとかというあの人の部屋に置いてきたんだったか……。漁られてはいないだろう。多分。

「私の魔法石は、私の意志によって形を変える……基本的にはそれに変わりありませんよ」

 まあ、ピン電話を取りに戻るのにもいい頃合だろう……今からこの寺を制圧していては、夜になってしまう。

 この『14C』を砂衣の部屋に縛り付けて、そして明日にでも制圧してしまおう。

「つまり、私の意志で、『気化させる』ことも可能ってことです。初めてやったことですけど」

 ということは、あの砂衣の部屋に合計4人監禁するということになる。その部分だけは悪いなぁと思う――

「気化した、ってことは、つまり空気と混ざった、ってことで。だから……あなたがたとえ風を操れたとしても、私がその逆方向に気化した魔法石を動かせば、実質無風状態になるってことです」

 でも、どうせあの砂衣という奴も『魔法行』に送りつけるのだからあまり関係はないかと思う。

 大切にするものはとことん大切にするが――そうでないものはあっさり放棄する。鞠の大胆さと精密さは、このような心情にも現れてきていた。

「当然。先生の周りにもその魔法石の粒子が漂っているので――」

 鞠は『札』のようなものをポケットから取り出し、『14C』に貼り付けた。

 そして、ブオォォン! と大きな音を立て、『14C』の目と腕に、気化した魔法石を昇華させた目隠しと手錠をつけた。

「その札は、貼り付けられた人の魔法が使えなくなるっていう札です」

 札――これは鞠のような、『戦う部隊』の中でも幼い年齢に渡される札だ。中にはその札を『幼さの象徴』と言って手放すものもいたが、鞠は大事をとって手放さなかった。

 というか、実質強いのだから使ったほうがいいのに。と思っている。

「い……いの、命だけは……助けて。助けて! ください……」

「…………」

 あ、そうか、そうだ――私は、この一人の女性の命を握っているんだ。鞠は、支配したこのなんともいえぬ快感を覚え――そして罪深さを感じた。

「別に、殺すつもりはありませんよ。少なくとも私は」

 鞠はそう言った。

「ほ……本当? 絶対に、殺さない? あ、いや、殺さないで、ください……」

「…………」

 先生の、こんなにおびえている姿を見たのは初めてだった。いつも何も語らず、達観していた彼女は――今は無様に10歳の少女にぶちのめされている。生殺与奪の権を握られている。

「だから殺しませんって……そのかわり、先生の仲間のことは教えてもらいますよ」

「仲間。うん。話す話す話します! だからお願い殺さないで……!」

「…………」

 やりにくいなぁ。三点リーダ四組を三回言うくらいやりにくい。

 だが聞くしかない。

「簡単に言えば弱点です。トラップ使い、生物兵器、そして電撃使い。彼ら四人を倒す方法ですよ」

「せ……生物兵器って、ああ、ごめんなさい。ちゃんと話します」

「お願いします」

 頼み込んでいる立場だが、もはや強制だ。

「生物兵器というか『HRB』の魔法は、そんなに大したことはない……多分あなたなら簡単に倒せると思う。でも、電撃使い『DghT』は私でも倒せない」

 そりゃあそうだ。風が電気にかなうわけがない。電撃は先手必殺なのだから。

「残りの、トラップ使いは?」

「『RRQ』は……魔法の性格上……多分、電撃使い『DghT』でも――勝てないと思う」


 夕暮れの中、その言葉を聞いた鞠は、絶句した――そして、鞠はまだ知らなかった。

 トラップ使いに勝つには、とんでもないくらいの『運』が必要だということに――



                   第3章・終

                   第4章へ続く

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ