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午前二時の太陽
【午前二時の太陽】
陽の光は白亜色 夢破れて目を覚ます
電波時計の針は 午前二時を指している
障子を開いて外見れば
日は西に傾いて 遠くに陽炎揺らいでる
窓を開ければ夏の風 風鈴の音が鳴り響く
涼風吹いて夏の原 揺れる草は蒼翠
蝉の音は空高く 空ろな声で鳴り響く
その時見えた走馬灯 陽炎の中に影を知る
影はわたしに伸びていき 招くように揺れている
夏の風は冷たくなり 破れ紙のつむじ風
風鈴は落ちて砕け散り 原の草は消えてゆく
蝉は落ちて空蝉に もう誰も音はしない
日は南に堕ちてゆき 紫色の誰彼時
これは夢か幻か 答えるのは烏の声
陽炎は今やすでに消え そこには千古の闇の色
悠遠彼方より鐘の声 その響きは何ゆえか
時計の短針は午前二時 長針は永遠を指している
ついに日は沈んで すべての色は褪せていき
残照も暗闇も混ざりはて 朧げに解けて散る
もうそこには何も無く ただただ荘厳の錯覚か