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Dual blade  作者: Renew
3/3

第3章・剣との取引




____________Dualblade....





〜第3章〜






俺たちが、軍事学校に入学してから2年が過ぎた。魔法、剣術とも上達し、


騎士を目指す俺たち二人は、2年間ずっと剣の腕を競い合っていた。名家の子供と孤児の関係とは思えないほど、


仲が良かった。二人でいるだけでとても幸せだった。自分との身分の差なんて、まったく感じなかった。


そう、15歳の春までは・・・・







3回生(3年生)になると、自分の希望する属性を選ぶことが出来るようになり、


得意な分野に専念することが出来るようになる。だが、それだけ授業内容も複雑になり、勉強量を2回生より増やす生徒が多い。


俺も例外ではない。氷属性は難なくクリアできるが、雷属性や炎属性は勉強しないといい成績は取れない。


勉強といっても、ほとんど魔法術の実演練習が主で、暗記することは呪文くらいしかない。


今日も実演課題をこなすために、広場で練習をしている。もちろん、ケイシィーも一緒に。


「ねぇ?今度の実演まで間に合いそう?」


俺の練習している横で、ケイシィーが座ってこちら見ながら話しかけてきた。


「まぁ何とか。これなら、いけそうかな」


練習の手を休めて、ケイシィーのほうを向いて答える。


「そういえばさ・・・選抜メンバーが選ばれたって話・・・聞いたことある?」


いつもの調子と違う少し控えめな口調で、俺に尋ねる。


「いいや、聞いてないけど?」


「聞いてないの・・・そう・・・・ならいいんだけど・・」


・・・・。あきらかに今日は様子がおかしい。いつもの明るさが消えている。


「何かあったのか?」


そう思った俺は、ケイシィーに何かあったのか尋ねてみた。


「いや・・・なんでもないよ。本当になんでもないから・・・」


「そうか。ならいいけど」


明らかにおかしい。何かあると思ったが、そのときはケイシィーに配慮してあえて聞かなかった。


「教室戻ろ。授業が始まっちゃうよ」


「ああ。そうだな」


そういって、俺たちは教室へと向かった。





               §





ケイシィーの様子がおかしくなって5日後。一向に様子が戻る兆しは無い。


さすがに心配だ。今までこんなこと無かったのに。なんだか理由を聞かないと不安になってくるくらいになった。


そこで、俺は思い切って暗くなった理由を聞いてみることにした。


「なぁケイシィー?何かあったんだろ?話してくれよ?」


二人で寝泊りしている寮の部屋でケイシィーに問いかける。


「・・・」


それを聞くとケイシィーは顔をそらしてうつむいた。それでもケイシィーは話してくれない。相当、嫌な事のようだ。


「お願いだよ。俺も心配なんだ。俺たち親友だろ?」


「・・・ねぇ・・僕たち離れ離れになってもずっと一生親友だよね?」


急なケイシィーの質問に俺は少し戸惑った。だが、なぜかすぐに答えを返すことが出来た。


「あ・・当たり前だろ?俺たちは一生親友だって!だからさ・・・・そんな暗いケイシィー見てたら不安なんだよ・・・」


・・・・・。しばらくの沈黙が続く。俺が何か声をかけようと思ったとき、ケイシィーが先に口を開いた。


「アリガトウ・・・・・不安にさせちゃってごめん・・・・」


次にケイシィーが口を開いたとき、彼の目からは涙が零れ落ちていた。








・・・・・僕はね・・・・・・・「戦場」に行くんだ・・・・・








_______ケイシィーが選抜メンバーに選ばれて、3ヶ月・・・ずっとケイシィーとメールのやり取りをしている。




*こんにちはティファー!今日、やっと訓練終わったんだ。やっと正式に入隊できるんだ。


それでね、第35騎兵連隊に入隊することになったんだ。あの有名な連隊にだよ!


でもさ、今度の作戦で国外に行くことになったんだ。しばらくは連絡できなくなるけど、心配しないでね!


大丈夫、絶対無事に帰れるからさ!*




・・・ピッ・・・メールを読み終えると、携帯を閉じる。


・・・・・心配しないで・・・か・・・・


第35騎兵連隊っていったら、最前線に配備されることになるのか。・・・いったい、何が大丈夫なんだ?


つい3ヶ月前まで一緒に寝食ともにしてた親友が、前線で戦争に参加しているなんて・・・いまだに信じられない。


まったく、ふざけた話だ。確かに、この国は人員不足で戦況も劣勢だ。


だが、まだ15歳のティファーまで戦地に赴くことになるなんて・・・・・確かに、覚悟はしていたつもりだった。


ケイシィーといつか別れる覚悟を。同じ学校に通っていても、所詮は身分が違いすぎる。


違う部隊に配属されることは目に見えてる。・・だが・・・・やっぱり寂しいかった。辛かった。不安になった。


・・それに・・・「ケイシィーがどれだけ大切」なのかを実感した・・・・・・・・




なんで、俺には親がいないの?


なんで、俺はケイシィーに対して、何にも出来なかったの?


なんで、俺はケイシィーとは違うの?


なんで、俺はケイシィーと同じ場所に居られないの?




______そうか・・・やっと気づいた。・・・


俺はいくら世界のことを知っていても・・・・・






・・・・・「自分」のことは何も知らないんだな・・・・・・・・








それから2ヶ月が経った。まだケイシィーからは、まったく連絡が無い。


この二ヶ月、俺は孤独で、不安で、辛くて、悲しくて、


周りが何も見えない気がする日々が続いた。


今日もケイシィーと一緒に話をしていた校舎の影で、メールを待っている。


そんなことをずっと続けている。


「・・何で・・・連絡が無いんだよ・・・・・」


そうつぶやいて、携帯を持ったままうつむく。


”おい、そこのお前。”


____え?


「誰だ!?」


誰に耳元でささやかれた?だが、周りを見渡しても誰もいない。


「空耳か?」


”違う、幻聴じゃねえよ。”


なっ!?どこからだ?どこから話しかけてきている?周りには誰もいないはずだ。


”お前、自分のことについて知りたくないか?”


「・・・自分のこと?お前は誰なんだ?どこから話しかけている?」


”そうかまだ名前教えてなかったな。・・・・「二重の剣」があるいふさわしいかもな。あと、信じないと思うがこれはテレパシーの一種だ”


「・・・テレパシー・・・?」


”まあ、そんなことはどっちでもいい。俺がお前に話しかけた理由を伝えないとな。”


「理由?」


”ああ、そうだ。じゃあ、遠まわしに言うのも面倒だから、簡潔に言おう。お前、「自分」のことについて知りたくないか?”


___!?どういうことだ?


”もちろん、強制ではない。だが、お前が望んでいることなのは良く知ってる。


断る理由は無いと思うがな。”


「・・・・」


”とりあえず、お前のいた貧民街に来い。そこに俺がいるからよ。”


・・俺がいた貧民街か・・・遠くはないな・・・・・・・だが、なぜ貧民街?


”詳しい内容を伝える。こっちの事情で長時間この能力を使えないんだ。時間はいつでもいいからな。”


「いや、まだ聞きたいことが・・・・」


”じゃあな!”


その言葉を残して会話が途絶えた。


「・・・二重の剣って・・・幻聴・・・・か?」


この現象を不思議に思いながら、自分の寮へと戻っていった。






                  §





_____どうしても眠れない・・・・


自分の寮のに入ってベッドに入ったのだが、さっき起こった、あの現象が気になって寝ることが出来なかった。


・・・・貧民街に行ってみようか?そうでなければ幻聴かどうかも分からない。


・・・・・・だいたい、テレパシーなんて出来るわけが無い。これは幻聴だ。幻聴のはず・・・・・・・・・


”お前、自分のことについて知りたくないか?”




______知りたいさ。知りたいに決まっている。自分の親のことも、自分の本当の名前も、


自分の生まれた場所も、自分が捨てられた理由も、自分が何でこんな苦しいのかも、


自分の過去のことや、生きている理由、自分がケイシィーと一緒に居ると幸せな理由も、離れて苦しい理由も・・・・・・





「もう一度ケイシィーと逢いたい・・・・・・」





自分のことを知らなかったら、もうケイシィーとは会えないような気がした。


このままだと、もう二度と同じ場所に立つことは出来なくなるような気がした。


そんな気がしたから・・・・・とても不安になった。だから、もっと強く自分のことを知りたいと思った。






_________気づくと、俺は貧民街へと走り出していた。思考よりも先に足がなぜか動いたのだ。


勝手に外出をすれば処罰されるかもしれない。でも、そんなことはどうでもいい。


自分を知っている奴がこの先に居る。そう考えると、後のことなど考えられなくなった。


「はぁ・・・はぁ・・・・やっと・・・着いた・・・」


だが、そこには誰の姿も無い。


「・・・・幻聴・・・だったのか・・・・」


そうだな。やっぱり幻聴だ。・・・・・・・・やっと自分の事分かると思ったのにな・・・・・・・


そう思い、寮に戻ろうとした。その時、


”思ったより来るのが早かったな。”


____!!またあの時の声だ!やはり幻聴ではないのか?


”幻聴じゃないって前言っただろ?他人を信用しない奴だな。”


なに?思考が読めるのかこいつ?


”ああそうだ、俺はお前の思考が読める。”


しょうがない、これは本当に幻聴ではなさそうだな。認めざる終えない。


その事については、考えても仕方ないとしてだ。「どうして俺をここに呼んだんだ?二重の剣?」


”とりあえず、俺の姿を見てもらったほうがいいと思ったからな。


お前の昔使ってた、ぼろい毛布があるだろ?その中身を見てくれないか?”


「ああ、分かった」


まだあったのか、俺の使ってた毛布。あんまり思い出したくない事だがな。


”それは悪かったな。”


そうか、こいつ思考読めるんだったな。


そう思いながら、かがみこんで毛布を広げた。


・・・・そこにあったのは青紫色に光る不気味な剣だった。


「本当に・・・・剣?」


”言っただろ、俺は二重の剣だ。意思を持った剣だ。”


「魔剣・・・か?」


魔剣とは、簡単に言えば剣使用者の魔力を補助させる機能を持つ剣だ。その能力を剣に与えるには、魔力を剣に定着させるのだが、


2属性以上の属性を剣に定着できた例は報告されていない。ましてや、意思を持った剣など聞いたことなど無い。


”ああ、多分そういう部類に入るんだと思うが、そんなのことはどっちでもいい。


問題は、お前が俺の取引に応じるか、応じないかだ。”


「取引か・・・内容は?」


”俺をある研究所に連れてってほしい。”


「・・・何?研究所?」


SSIストレンジ・シーク・インクイルって知ってるか?”


「・・・・ああ・・敵国フィデラティーの軍事研究施設だな・・・・」


”さすが、軍事学校の生徒だな。話が早い。”


「だが、あんな敵地深くにどうやって行けと?そりゃ、いくらなんでも無理な相談だな」


”もちろん、行ける方法はあるさ。”


「唯一、無人なのは‘プラズマ粒子フィールド‘で包囲された「第三国」への国境だけだが、


あれに触れたらどんな物質でも破壊されるぞ?」


第三国というのは、もともと魔法や軍事力に優れた国家だった「カルト」という国のことだ。


だが、9年前に謎の消滅事件がおき、国全体が焼け野原になった。


”俺の魔力を使えばプラズマ粒子をコントロールすることが可能だ。”


「じゃあ、その第三国を通ってフィデラティーに行くのか?」


”ああそうだ。それしか方法が無いからな。”


正直、あまり気が進まない。第三国で起きたのは実験による巨大な核融合だという見方がされているからだ。


あくまで推測に過ぎないが、やはり安心して通れる場所とはいえない。


「・・・」


”嫌だと言うならかまわない。”


「・・・・少し考えさしてくれ・・・」


”そんな暇は無いみたいだな・・・”


「何?」


何かの気配を感じ、後ろを振り向く。


「さあ、渡してもらおうか。その剣を」





<続>

・あとがき


ふぅ・・・前の章と比べてだいぶ長くなったなぁ・・

ほかの人と比べるとまだまだ短いですが;;

やっと剣が出てきましたね。

あと、SSIとか。すごくでっかい研究所です。

何より大きいのは、ケイシィーとの別れ。

「自分の事を何も知らないんだ」ってセリフ、

少し違和感があるような気がします;;

それについて感想があったら、大歓迎です^^


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