第1章・二人の魔術師
___Dualblade
〜第1章〜
______っと....今何時だろう?そろそろ授業が始まるころだろうか?
「ねぇ、ティファー!起きて!先生が来るよ!」
そんなことを考えながら学校の机で寝ていると、友達のケイシィーが俺に話しかけてきた。
「ん...もうそんな時間か?」
机から顔を離し目を開けると、先生が教卓で授業の準備をしている。
俺は机の中から教科書と筆箱を取り出し、筆箱から鉛筆を取り出す。
「今日の授業は風属性の浮遊術の実演をしてもらいます」
授業で使うと思われる木で出来たブロックを取り出しながら、先生が授業の説明を行う。
はぁ...よりによって苦手な風属性の魔法かよ。
「よし!風属性なら何とかなりそう!」
俺の隣の席に座っているケイシィーが愉快そうにしゃべる。
「お前はいいよな。風属性が得意でさ」
「でも、ティファーは風以外なら何でも出来るでしょ?」
「ん、まあな。でも風属性だけはどうしても適応できないな」
自分で言うのもなんだが、確かに風属性以外なら大抵のことは出来る。中でも、氷属性が得意だ。
俺みたいに様々な属性を扱える奴は珍しい。大体の奴は、ケイシィーみたいに一つの分野に特化していたりする。
俺たちがそんな会話を交わしている間にも、次々とほかのクラスメイトが名前を呼ばれ浮遊術の実演を行っている。
風属性はの魔法は中でも一番適応できる奴と出来ない奴の差が大きく、軽々とこなす奴もいれば、まったく浮かない奴もいる。
「ティファー・シーヴァイズ君」
先生が俺の名前を呼ぶ。次は俺の番のようだ。
「はい」
しょうがないか、不適合属性なんだから。そう思いながら、俺は席を立ち、教卓へと向かう。
教卓の前に着くと、俺はブロックの上に手を伸ばし、目を閉じる。
そして、手の先に神経を集中し、ブロックが浮くイメージを作り出すことに集中する。
_______ゆっくりと目を開けると、ブロックはびくとも動かずに元の位置にあった。
「やっぱダメか...」
そして俺はため息をついてから自分の席へと戻った。
「はい、じゃあ次、ケイシィー・レイズ君」
「はーい」
余裕のありそうな声でケイシィーが返答する。
ケイシィーも俺と同じように、ブロックの上に手を伸ばす。しかし、俺とは違い、ケイシィーはその手を軽く上にあげると、
ブロックが勢い良く空中に上がった。ケイシィーが少し手をひねると、ブロックが切り刻まれて空中でバラバラになる。
そして、ケイシィーが先生のほうを向いてニヤッと笑う。
「はぁ...ケイシィー君。言われたこと以外のことはしないほうが良いわよ」
先生がケイシィーをみてため息をつく。
ケイシィーが先生の反応を聞いて、不満足げな顔をして自分の席へと戻っていく。
「やりすぎだぜケイシィー。あれじゃ次の奴が実演できないじゃないか」
席に戻ってきたケイシィーを見ながら俺が話しかける。
「力を出し惜しむと、なんかいやな感じがするんだよね。それに僕の次は誰もいないよ?」
複雑な顔をしながらケイシィーが話している。
「ああそうか。お前の次に実演する奴っていなかったな」
「こら!そこ!授業中に私語は話さない!」
あんまり大きな声で笑っていたので、先生に叱られてしまった。
「はーい...」
二人同時にしょんぼりした声で謝る。
「はい、じゃあこれで風属性の授業を終わります。起立!」
先生が号令を言うと同時にクラスのみんなが席を立つ。
「礼!」
みんながその号令とともに頭を下げる。軽く下げる奴もいれば、深々と下げる奴もいる。
みんなバラバラだが、礼をしていない奴はいない。
「ふぁー。やっと終わったねー」
先生が教室から出て行くと同時に、背伸びしながら手を上に伸ばして、あくびをしているケイシィーが話しかけてきた。
「あーあ、なんで魔術学校は適応できない属性も勉強させるんだろな?まったく意味が無いと 思うんだが」
俺は不適応な属性の授業を受けるたびに思うことをケイシィーに問いかけてみる。
「うーん、なんでだろ?自分の不適応な属性も理解させるためかな?」
「だとしたら、実演させる必要あるのか?」
「うーん....まあ、どうでもいいんじゃない?」
「確かにそうなんだが、なんか納得いかないんだよな....」
俺はなぜかどうでもいいことを深刻に考えてしまったりすることがよくある。
もともと、理屈っぽい性格だからだろうか?
「でも、ティファーが受ける授業は風以外は意味あるよね?」
深刻な顔をして考えている俺を見て、ケイシィーが話し掛けてきた。
「あはは、違いないな」
もうこんな無意味なことを考えるのはやめとこう。疲れるだけだしな。
そう俺はその疑問を振り払うと、あとはケイシィーとの会話に夢中になり、
いつの間にかその疑問は頭の中から薄れていく。
「それじゃ今日は何する?」
いつも俺たちが寝泊りしている、生徒用の寮に向かいながら、ケイシィーが話しかけてくる。
「そうだな...今日は剣術の練習でもしようか?」
「うん!じゃあそうしよう!」
そう言いながら、ケイシィーが笑顔でうなずいた。
「じゃあ早く帰ろうよ!寮まで競争!」
ケイシィーが愉快そうに俺に競争を提案してきた。
「しょうがないな、じゃあ勝負だ!」
そう言ってケイシィーより早く、俺が寮に向かって駆け出す。
「ああっ!ちょっとフライングだって!待ってよティファー!」
それに驚いたケイシィーが俺の後を走って追ってくる。
「あははは!早く来いよ!」
先を走る俺が後ろを振り向きながらケイシィーに呼びかける。
そして俺たちは競争に無我夢中になりながら、寮に向かって走っていった。
§
あとから走ってきたケイシィーが先に寮の部屋の前で待つ俺にやっと追いついた。
「はぁ...はぁ...フライングは卑怯だって!」
寮までの競争は結局俺が勝った。
まあ、最初のリードもあるけど元々俺のほうが体力あるからな。
それに、寮は校舎内にあるからそんなに遠くない。
「あはは、まあそう怒るなって。休まなくても大丈夫か?」
「うん...早く始めよ!」
ケイシィーはだいぶ息が切れているが、それでも早く剣術の練習を早くしたいらしい。
「じゃあ、俺が木刀取って来るよ。先に広場で待ってて」
そういって、俺は二人分の荷物を持ち自分たちのベットの上に置き、
木刀を二本そのベットの下から取り出す。
「っと...あったあった。じゃあ早く広場に行くか!」
そして、ケイシィーの後を追い広場へと向かった。
§
寮を出て、しばらく校舎内を歩いていくと、
広場でほかの生徒が剣術の訓練を行っているのが見えてきた。
広場の中に入ると周りを見渡して、ケイシィーの姿を探す。
「ティファー!」
俺が見ていなかった方向から、大きな俺を呼ぶ声がした。
後ろを振り向くと、ケイシィーがこちらに向かって走ってくる。
「じゃあ、防具は僕が持ってきてるからさ。これ着て練習始めよう」
ケイシィーが手に持っていたチェーンメイルとプロテクターを地面に置いた。
そして、俺はそれを手に取り装着する。
「じゃあ、始めるか」
両方とも装着したのを確認すると、二人とも木刀を両手で持ち、正面から向き合う。
「やぁ!」
先にケイシィーが切りかかってきた。だが、俺はその攻撃を横にかわし、
ケイシィーの剣は宙を切る。
攻撃をかわした俺は、ケイシィーの脇腹を狙って斬りを加える。
ケイシィーはその攻撃を木刀で受け止め、木刀がぶつかり合う大きな音がする。
何とかケイシィーは攻撃を受け流し、
その反撃だと言わんばかりに、崩れた体勢でケイシィーが斬りつけてくる。
そこに「隙」が出来た。
ケイシィーの斬りを紙一重でしゃがんでかわすと、がら空きの体に素早く突きを加えた。
そこで勝負が決まった。ケイシィーはその攻撃を防ぎきれず、突きを食らって後ろに倒れた。
「勝負あったな」
「痛てて...あーもう、また負けたぁ〜」
胸を押さえながら、痛そうにしているケイシィーが悔しそうな顔をしている。
「これでも、騎士志望だからな。剣術には自信があるんだよ」
そう、俺は騎士を目指しているんだ。俺を助けてくれた騎士に憧れてな。
俺もあのような人になりたい...
孤独だった俺を、頼る人が誰もいなかった俺を助けてくれた騎士に.....
<続>
・あとがき
あとで、ほかの人の作品と改めて見比べると、
セリフが多いこと多いこと・・・・
4:6くらいあるかも。
これからは、なるべく説明を多くしたいと思います。