盗癖静丸
静丸は生徒の机からなにかを盗んでいた。
なにを盗んだのかは見えなかった。
ただ、下着とかではなかったと思う。
放課後の机の中に女子生徒の下着が入っているっていうのは想像できないので、違う……はず。
確信にまではならないし、静丸なら下着泥棒をしてたって疑わない。
実際に捕まってインタビューでもされたら、「やりそうだと思ってました!」と笑顔で答えてしまいそう。
ただ、それをどういう風に受け止めればいいのかわからない。
このメガネ……ダウジングアイで探していたのは、「姉が持っていった僕の所持品」だ。
つまり、静丸がそれを盗んだってことか?
なんだそれ?
いや、なんだそれじゃないか。
姉の遺体を探すっていう目的で動いていたせいで思考がバグっているけど、落ち着いて事実だけを見れば答えは単純だ。
静丸は他人の物を盗む癖がある。
うん、それだけだ。
姉の遺体の手がかりにはならないけど、この事実はそれはそれで武器になる。
姉が持って行った僕のなにかもいまは静丸が盗んでいる可能性があることもわかった。
後は、その疑いが事実かどうかをたしかめる方法だけど。
「よし」
っと、僕は帰ることにした。
こんなところで悩んでいても仕方ない。
こういう時こそアイテムボックスの力を使おう。
部屋に戻り、着替えてからアイテムボックスに入る。
まずは夕食かな。
炊いたご飯の残りはまだある。
味噌汁も十分。
食材になりそうなのは……鳥肉があるな。
なんの鳥だっけ?
コカトリスか。
呪毒の眼光と石化ガスを吐く魔物だ。
これ食べて石化しないのか?
ふうん、目と毒ガス袋以外は可食なのか。
じゃあ、これで照り焼きを作っとこう。
まずは骨から外したもも肉を開いて、大きさを均等にしてっと。
で、片栗粉を塗す。
熱したフライパンで皮目から焼いていく。
頃合いを見計らってひっくり返して、余分な油を取ってから、照り焼きのタレを投入して絡めながら中火で焼いていく。
よし、完成。
コカトリスが鶏よりもでかいからもも肉一枚だけでもけっこうな量になるな。
切り分けたら四皿分くらいになったぞ。
一皿分は今日の夕食でもらって……っと。
「ああ、照り焼きがある!」
支度をしてたら姉の声が聞こえた。
「食べる?」
「食べる!」
「了解」
というわけで姉の分も皿に乗せて、野菜を添えて、ご飯と味噌汁と一緒にトレイに乗せたら照り焼き定食の出来上がり。
「お待たせ」
「ヤッホーイ! いただきます」
目の前でトレイがパッと消える。
聞きたいこともあったし、僕もここで食べていくことにした。
「そういえば姉ちゃん」
「なに〜?」
「SRメギドスラッシュのカードを見つけたんだけど?」
「ンガンクッ!」
「まぁ、そのことはもういいんだ」
「ほっ」
「問題なのは姉ちゃんが当時、僕の文房具の予備を勝手に持って行ってた件」
「あ、あれはアキヤがちゃんと予備を持ってるって知ってたからだし! 後でちゃんとお菓子で払ってたし……」
まぁね。
ぶっちゃけ、買ってきたお菓子の方が高かったんじゃないか? まであったしね。
それでもなお僕の予備消しゴムとかを持って行ってたって……。
「去年とか、けっこう頻繁だったよね?」
「あ、ああ〜〜うん。あのね、よく無くなってたから」
「それ、もしかしたら犯人がわかったかも」
「はえ⁉︎」
で、僕は今日見たことを姉に教えた。
「し、静丸〜〜! お前かぁぁぁぁぁっ‼︎」
当たり前だけど、とても怒った。
「こっちはイジメられてるかもってナイーブになってたんだぞ! おのれぇぇぇぇ‼︎」
「ああ……ついでの質問なんだけど、姉ちゃんってクラスに仲がいい友達とかいた?」
「……」
「姉ちゃん?」
「……聞かないで」
「ああ、うん」
まぁ、姉ちゃん陰キャだったからね。
仕方ないね。
「まぁまぁ、僕も似たようなものだし」
「黙れエセ陰キャめ」
「エセて」
「あんたは陰キャの空気を見せつつ、身だしなみとかにもそこそこ気を使うし人付き合いも悪くない。だからエセ陰キャなのよ」
「ええ……」
「あなたはこちらに来てはいけないわ。光の側にいなさい」
「声優風に言っても別にカッコよくないよ?」
「ぬう!」
まぁとにかく……。
姉の陰キャ伝説は別にどうでもいいので、話を進めよう。
「それで、静丸が犯人かどうかの証拠をちゃんと掴みたいんだけど、なにかいいのないかな?」
僕は、アイテムボックスの管理のために姉の知識や経験はリンクされている。
けれど、実際にそれを獲得した過程を経ていないせいか、どうにうまく使いこなせていない。
状況に応じた適切な選択ができないのだ。
「ふうん」
姉はそう呟いて、考えているようだった。
食事が終わり、空になった皿たちが戻ってくる。
僕たちはデザートにアイスを選んだ。
特売日に大量に買っておいたのだ。
アイテムボックスがあると、大量に買い置きができるのが強いな。
「実際、どういう段取りを考えているの?」
と、逆に質問された。
「ええと……」
僕もそれに答える。
「ふうん、それなら……」
と、姉はいくつかのアイテムの名前を挙げた。
「それと……ちょっとこっちでも用意してあげるから、決行はちょっと待って」
「? わかった」
姉がなにを考えているかわからないけど、デザートを食べ終わった後は静かになった。
なのでこちらも言われたアイテムを作ったり、それが終わったらアイテムボックス内を整理する。
僕がこうしている間にも、いろんなアイテムが出たり入ったりするので、それらを綺麗に整理するのだ。
ある段階から、どっかのダンジョンにでも入ったのかな? って感じで魔石っていう、あっちでいろんなことに使われているアメジストみたいな鉱石がたくさん入ってくるようになった。
回復アイテムが次々と減っていくのでその補充をする。
そうしていると、さらに巨大な石の球体が現れたり、そしてそれが消えたりした。
仕上げに大きな魔石と、宝箱がどんと出現。
すでに開いているので、中身の確認は終了しているみたいだ。
「アキヤ、これはアキヤにあげる」
と、さらにもう一つ出現する。
なんか、日本刀の脇差みたいな鞘に入った剣だ。
抜いてみたらちゃんと片刃の脇差だ。
どういうことだと思っていたら、このアイテムの知識が頭に浮かんできた。
『妖刀・風魔魂:これを装備している間、忍者ジョブのスキルと能力補正を獲得できる』
「え?」
「そういうこと。潜入といえば忍者DAYONE!」
「姉ちゃんの世界ってステータスとかあったのか……」
「驚いてるのそっち⁉︎」
いや、それだけじゃないけどね。
「……もしかして、姉ちゃん、このアイテムをいま取ってきたの?」
「……それレアドロップだし、前のは高値で売っちゃったからね」
「ありがとう」
「弟のためだし〜静丸を追い詰めるためだし〜それに、これでSRメギドスラッシュの件はチャラだからね!」
「わかったよ」
仕方ないからそういうことにしてあげる。
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