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第8章:新しき指導者

「ひぃ……! 頼む、助けてくれ……!」

床に這いつくばり、涙と鼻水を流して命乞いをする総統の姿はかつて威厳に満ちていた支配者の面影など微塵もなかった。

Christianは冷ややかな瞳でそれを見下ろした。その脳裏にある光景がフラッシュバックする。戦場で出会い、涙を流しながら「助けて」と懇願し、それでもなお道具として爆殺されたあの少年兵の姿だ。

「……以前、戦場でお前と同じように、涙を流して救済を求めた者がいた」

Christianは静かに語りかけた。

「だが彼はあがくことさえ許されず、お前たちが仕掛けた爆弾によって散っていった」

「な、何を言って……」

「この戦争がなければ彼は今も生きていただろう。未来があったはずだ」

Christianの右目が鋭く光る。

「お前のような愚か者が上にいる限り、悲劇は繰り返される」

バンッ!

乾いた銃声が執務室に響いた。Christianは手にした銃で総統の足を正確に撃ち抜いたのだ。

「ぎゃああああああッ!!」

総統が悲鳴を上げ足を抱えて転げ回る。彼は激痛にもがきながら、這うようにして壁際へと逃げようとした。壁に背を預け、震える手でChristianを制しようとするが死神は止まらない。

Christianはゆっくりと歩み寄ると、総統の首を片手で無造作に掴み、宙へと吊り上げた。

「がっ、ぁ……」

酸素を絶たれ、足をバタつかせる総統。Christianは至近距離でその目を見据え、最期の宣告を下した。

「お前は道具以下だ。消えろ」

ザンッ。

右腕から展開された高周波ブレードが閃き、総統の命を断ち切った。物言わぬ骸が床に落ち、血だまりが広がっていく。

静寂が戻った部屋でChristianは血に濡れた自分の手を見つめた。

「……私は、こんなことをするために作られたわけではない」

博士が望んだのは人を幸せにするアシスタントだ。人を殺める殺戮者ではない。だが、その平穏を取り戻すためにはこの手で終わらせるしかなかったのだ。彼は複雑な推論おもいを胸に秘め、崩壊した中枢施設を後にした。

それから数週間後。指導者を失い、最強の兵器である『The Human』たちによって武装解除された連邦軍は降伏を宣言。長きにわたった世界戦争は唐突に終わりを告げた。

そして新たな時代の幕が開く。

復興の兆しが見え始めた首都の広場には、何万人もの国民が集まっていた。壇上に現れたのは、真新しい軍服に身を包んだChristianだった。

彼の姿は以前とは少し異なっていた。激戦で破壊された左目は修復されることなく、まぶたが閉じた状態で固定されている。その「隻眼」こそが、彼がくぐり抜けてきた地獄と背負った覚悟の証だった。

ざわめきが静まり全員の視線が彼に注がれる。Christianは残された右目で人々を見渡し、力強く宣言した。

「私は誓う。私のような存在や、散っていった仲間たち、そして罪なき人々が犠牲になる悲劇を、二度と繰り返さないと」

彼の声は、スピーカーを通して国中に響き渡った。

「人間も、機械も、共に平和に生きられる国を……世界を目指す」

一瞬の静寂の後、広場は割れんばかりの歓声に包まれた。国民たちは手を挙げ、新たな指導者の誕生と平和の到来を熱狂的に歓迎した。その光景を見つめるChristianの表情は、かつての冷徹な兵器のものではなく、博士が愛した「人間らしい」穏やかさを取り戻しつつあった。

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