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第2章:接収と改造

その日、研究室の重厚な扉が乱暴に開かれた音は終わりの始まりを告げる合図だった。

軍靴の音を響かせながら踏み込んできたのは、連邦軍の軍服に身を包んだ将校と武装した兵士たちだった。

「マンフレート博士、貴様に軍命を伝える」

将校は有無を言わせぬ口調で一枚の書類を突きつけた。そこに記されていた命令は、博士にとって耳を疑うような内容だった。それは、『The Human』を軍事戦力としてカスタムし供給せよというものだった。

「馬鹿な……!」博士は激昂し机を叩いた。「『The Human』は人の幸せを作るために開発したのだ! 人を傷つける道具ではない!」

博士の顔は怒りで赤く染まっていた。彼が生涯をかけて追求してきたのは科学による人類への貢献であり、殺戮への加担ではない。

だが、将校は冷ややかな目で博士を見下ろした。「反対するならば貴様を連行する。そしてこのラボは反逆分子の拠点として処分する。」

将校の合図と共に兵士たちが一斉に銃口を博士に向けた。

「な……ッ」博士は言葉を失った。自分一人が犠牲になるだけならまだしも、ラボには愛する「息子」であるChristianがいる。ここが破壊されれば、彼も無事では済まない。

博士は歯を食いしばり、悔しさに震える手でペンを握った。逆らう術はなかった。

「……わかった。署名しよう」

彼は軍事兵器供給施設として働く契約書に屈辱と共にサインをした。

その日から研究室の空気は一変した。かつて人々の笑顔を想像しながら描かれていた設計図は破棄され、代わりに効率的に敵を殺傷するための図面が広げられた。『The Human』からは、人間らしい感情表現や生活支援機能といった「無駄」が徹底的に排除された。求められたのは、ただ命令通りの推論を行い引き金を引く機能だけだった。

そして、さらなる試練が訪れる。開発された新型兵器の耐久テストである。当初は人間の兵士が行っていたが、軍は非情な合理化を求めた。「人員削減だ。テストはここにある『素体』か、博士自身が行え」

老いた博士に、過酷な兵器実験など耐えられるはずがない。博士が苦渋の表情で立ちすくんでいると、一人の男が静かに前に出た。

「私がやります」Christianだった。

「だめだChristian! お前をそんなことには使わせん!」

「博士、大丈夫です。私の体は頑丈にできていますから」

Christianは博士を制止し、穏やかに微笑んだ。

「それに、博士にこれ以上の苦労をおかけしたくありません」

実験は苛烈を極めた。銃撃、爆風、過負荷による稼働テスト。それは実験という名の拷問に等しかった。人工皮膚が焼け焦げ、内部フレームがきしむ音がラボに響く。だが、Christianは決して悲鳴を上げず、負の感情を表に出すこともなかった。

痛覚センサーが警告を発し続けていても、彼は平然とした表情を崩さなかった。もし自分が苦しむ姿を見せれば、誰よりも心を痛めるのはガラス越しに見守る父(博士)であることを知っていたからだ。

「システムオールグリーン。次のテストへ移行可能です」

ボロボロになった体で、Christianは健気に報告を続けた。そうして完成した量産型兵器、

『The Human Type Soldier』は次々と戦場へ投入されていった。

感情を持たぬ冷徹な兵士たちの投入により、数ヶ月後、劣勢だった連邦軍は驚異的な巻き返しを見せ、勢力を取り戻しつつあった。しかしその戦果報告を聞く博士とChristianの間に、かつてのような笑顔はもうなかった。

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