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4 初めての会社勤め

「今日から一緒に働いてもらう、広瀬ゆりさんだ。彼女はパートとして働くことになるから、4時までで、残業はなしだから皆そのつもりで。」


「広瀬ゆりです。今まで社会経験がありませんので、皆さんにご迷惑おかけすることも多いかと思いますが、なるべく早く覚えて仕事をこなせるようにしたいと思いますので、よろしくお願いします。」

緊張しながら挨拶して、頭を下げ顔を上げると、皆拍手してくれているけど、歓迎してくれている感じとそうでない感じがわかってしまった。


「デスクは田伏の隣だ。彼も半年前に入ってきたばかりだから、気を遣わなくて済むでしょう。田伏、この1週間はお前が覚えた事務処理を教えてやって欲しい。そのフォローを早川さんにお願いする。」


「え、私ですか⋯。私、結構仕事持ってて、入門みたいなとこから教える暇ないのに。」

「まぁそう言わず。今の仕事、おしゃべりを減らせばもう少し早く終わるだろう?」


優しく微笑んでいながらも、しっかり注意と役割りを告げられた彼女は、はい、と言わざるをえなかったようだ。


「広瀬さん、よろしく!田伏友樹です。同期ですけど僕の方が半年先輩だし、社会経験もあるんで!」



からかうように明るく話してくれた田伏くんは、27歳。目鼻立ちははっきりしていて、大きな目と口角が上がった口で、とても甘いマスクに仕上っている。一見落ち着いている様に見えるけど、話すとまだ少年かと思わせる明るさだ。残念に思う女子もいれば、そのギャップに一層魅力を感じる女子もいるらしい。ムードメーカーなのは確かだ。

溝口さん(30歳、課長らしい)の大学の後輩で、以前働いていた会社が倒産してしまい、就活していた時に偶然会い、拾ってもらったらしい。とても人懐っこい人だ。


「はい、田伏先輩でいいですか?よろしくお願いします。」

「先輩、いい響きだなー。でもやめときましょう。普通に名前で大丈夫っす。」

(ちょっと顔を赤らめてる。自分から言っておいて、恥ずかしいらしい。10以上年上に言われたら、違和感しかないのかも。)

その後、田伏くんから受注確認などの基本を教えてもらった。




「では、お先に失礼します。」

あっという間に退社時間。他の人達は定時は5時迄と言っても、処理やまだ他の仕事もあるので、ほとんどの人は5時を回ってもまだ仕事をしている。

田伏くんが多分ゆっくり目に教えてくれている。これ以上は4時に股がる感じだから、残り10分は商品カタログを見ていて、と言われたので知識を付ける為にも、しっかり読む事にした。


帰るのに戸を開ければ、近くにいた、女性2人が私を見るなりボソッとつぶやいた。

「退屈しのぎのお小遣い稼ぎ気分で、こっちの仕事増やさないで欲しいわ。」


溝口課長に私のフォローを頼まれた、早川さんと経理の登坂さん。

2人ともまだ20代後半くらいで、綺麗な人達だ。


彼女たちの言葉に、真由美に前もって言われていなければ、ショックだっただろう。

【⠀良い?ゆり、皆いい人なんて事ないからね。露骨にいじわるな人や陰でチクチクやってくる奴なんて普通にいるから!

まず気にしない事!あんたはあんの与えられた仕事を、あんたらしく一生懸命してればいい。必ず見てくれている人はいるから。あとは、周りを、信用しすぎちゃダメ。特にグチを言うのは、余程相手を知ってからよ。まぁゆりは悪口とか言わないだろうけど。】


【⠀フフ⋯ありがとう。人の事言えるほどできた人間じゃないもの。】

【⠀自己評価低いのも舐められるか、あざといとか言われるからダメよ。ストレス発散のために当たってくるのも居るんだから。】

そんな嫌な思いをたくさんしてきたんだろう、説得力があった。そんな会話を思い出しながら、

「お疲れ様です、さようなら。」

何と言えばいいのかわからなかったので、とりあえず、感情を隠して笑顔を浮かべて通り過ぎる事にした。


感情を表さないのは得意だから⋯

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