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2 初めての面接後の女子トーク?

「で、どうだった?」

面接のあと、色々アドバイスをくれた親友の真由美とカフェで会った。

戸川真由美は、中学からの友達で私から唯一離れず、側にいて励ましてくれてた、支えてくれていた人。

目鼻立ちのハッキリした、美人と言われる部類。はっきり物を言うので敵も多いようだけど、本人は全く気にせず。

ロングの緩やかなウェーブのきいた髪をかきあげる姿は、羨ましいくらい色っぽい。隣りの席の男性二人も目をそらせないらしい。


「あ、えーと、離婚の事話してしまいました。」

「はっ?」

「スミマセン。」

「⋯どんな反応してた?」

「3人いたんだけど、うち2人は渋い顔してたけど、質問をしてくれてた、若い男性は優しく接してくれて、紅茶の話しもできたわ。いつも美味しくて、幸せにしてもらってるって、お礼言えた。⋯あれ?」


何しに行ったのか⋯


このゆりはお嬢様だ。見た目通りの上品さが備わってる、ものすごく美人というわけではないけれど、落ち着いた美しさで冷たく見られる事もあるが、笑うと愛らしく心惹かれる男は多いだろう。

でも、意見や希望など聞いてもらえない、厳格な自分が絶対である父親に、厳しく育てられ勝手に推し進められた、もうすぐ離婚予定の修二と結婚させられた。

その修二も厳しく、一流商社紅菱商事、取締役部長としての立場があるとかなんとかで、ゆりにも娘の由美子にも、どんな落とし穴があるかわからないという理由で、ママ友との付き合いや、由美子の友達との交流も禁止されていた。


⋯⋯なのに自分は羽を伸ばしに伸ばして、女をつくるだけでなく、子供まで!許せない奴!

しかも浮気は今回だけではない。3回目。

とっくに別れればいいものを、父親からそれくらいの事、一流の男なら当たり前、泣き言を言う前に自分がもっと出来る妻になれと言われたのと、由美子にちゃんとした生活をさせなければという思いで、我慢してきた。


それが今回、離婚を決心させたのは、18歳になった由美子の一言。


「いつまで、あんな人に尽すつもり?私を幸せにしたいって、笑ってないママの顔みながら生きてて、幸せになれると思ってるの?

さっさと慰謝料もらって財産分与して!私と楽しく暮らさない?」

という、小さい頃からやけにオトナのように悟った娘。


でもとても可愛い。

切れ長目の綺麗な顔もだけど、冷たい雰囲気だけど話すとサバサバしてるし優しさもちゃんと伝わってきて、しかも甘え上手。

ゆりにはない中身。

ゆりはいつも優しく微笑んで、言いたい事があっても言わない。

自分で飲み込んで、耐えてる事に本人は気付いていない。

泣く事もできてない。それにも気付いていない。


⋯⋯きっと、心がバランスをとるために、感じないようにしてきたのだろう。


「絶対働かないといけない訳じゃないでしょ?旦那からの慰謝料、なんたって財産分与だけでも、あんた1人なら充分普通に生きていけるでしょ。

「うん、まぁ、でも何があるかわからないし、第一働いてみたくて。」


ずっと家の中で一流企業の妻をしてたから、社会の事何もわからないのだ。


「小さなカフェとかでもいいんじゃないの?いきなり会社なんて、ハードル高すぎよ。」

「カフェなんて、若い人達の働くとこだわ。雇ってもらえないわよ。」

「でも、いるわよ。私達くらいのパートの人も。」

「そういう人は、充分表に出られるような感じの人よ。」

(どういう人よ⋯)

「由美子の大学の授業料も出してあげたいし。」

「自分で稼いでるんでしょ。」

「うん、びっくりしたわ、通帳見せられて。」



【ママ、離婚させるの。】

【でも、由美子の大学もあるから、せめて卒業まで待たないと、今すると、出さないって言われるかもしれないから出来ないってあなたのママ言ってたわよ。】

【大丈夫よ、これを見て!コツコツ貯めてたの。この日のために。】


時々、Limeで連絡をしてきて、姉のように慕ってくれる由美子に、差し出された通帳を見てみると、

【えーっ!750万⁉️どうしたの⁉️バイトだけじゃ無理よね⁉️】

【ん。ジョセフに株教えてもらったのが1番。あとはバイトとパパから何かにつけてお小遣いをもらってたから。】


へへっと自慢げに笑みを浮かべて。

【由美子⋯】

【すごいでしょ。】


ゆっくり得意気に微笑む由美子は、もう子供じゃない。やり手だ。子供の時から子供らしくはなかった。性格が悪いとかひねくれてるとかではない。どこか冷めてる。でも正義感は強く自分が認めた人にはまっすぐだ。

甘えられるとわかってる私には甘え上手で、可愛いくて仕方ない。


ジョセフは、由美子の恋人でイギリス人大学留学生の3年。学生でありながら起業して、日本での市場開拓と文化への興味で1年前に来た。

その歓迎会に由美子の親友の兄が、多国籍交流もいい経験だからおいで、と招待してくれ、ジョセフと出会った。

彼は背が高く、大きな目と整ったそれぞれのパーツに金髪。甘いマスクで起業してるなんて、女性からモテるのは当たり前だし、浮気だって当たり前だろうから、由美子は最初から恋人候補圏外としていた。


だけど、ジョセフから一目惚れされ、はじめはスパダリ的なのに言い寄られてぽっとなるような、澄んだ乙女心は持ってないと、相手にしていなかったけど、彼は諦めず押しに押して、愛を囁いたり、仕事場に連れていき自分の出来るところを、ストレートにアピールし、複数人での交流ならいいと言われたら、週一くらいでパーティの様なものを開き、由美子への想いを告げていたらしい。


由美子の心を射止めたのは、威圧的な父親への怒りと普通に愛情を与えてもらえない悲しみ、ゆりへの想いと苛立たしさで不安定になる時が由美子にもあった。

そんな彼女を気遣い、包み、共感し、時には窘め寄り添い、そんな君の全部が愛おしいと、由美子自身を見てくれていた事だ。


いくら由美子より年上でも、二十歳そこそこだ。そこにはジョセフも今の地位に着くまで、平坦な道のりではなかったからこそ、寄り添っていることに軽さがないのだ。


あんな完璧なスパダリと出会え、由美子を本当に愛してくれることに感謝だ。


だけど、それだけでよしとする由美子じゃない。

もし浮気したら10億支払います、という契約書を書かせたらしい⋯さすが由美子、あの父親の血筋だ。


何回かジョセフに会ったけど、CEOになるだけの貫禄と知性を充分感じられる。オーラが半端ない。

腹黒さでいえば、お互い様的な感じだけど、なんせ由美子にベタ惚れな分、由美子が優位だな。


そんな2人を見てゆりは、純粋な学生の初々しい恋愛に見えているらしい。

あんたの娘はそうとうだよ⋯。今までの彼氏も知ってるけど。みんな年上で、ちゃんと稼いでいるっていうのは必須条件だった。

ゆりの家で、夕食をご馳走になってる時にゆりが席を外した隙にこっそり教えてくれた。



【ママは私に付き合ってる人がいると思ってないから、内緒ね。】


愛のない家庭で育ったからか、現実主義だ。

【浮気しない男はいないと思ってるから、体の関係には持っていかない、男は安心すると他に目を向けるから】と。

ゆりが聞いたら、大ショックだろう。まず、自分を責めまくる。


でも、ジョセフはそのハードルを見事に超え、由美子を色んな意味でものにした。


これもゆりには内緒だけど。


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