7話
なんとか更新出来ました。
しばらく老子さんと話していたが、王様と一緒に席を立つということで、休憩室っぽいところに通された。自室も用意してくれるそうだが、召喚される者の性別や年齢がバラバラであることから、召喚されてからそれに合わせて用意するのが習わしになっているらしい。
軽食も用意されていたが、私は食事をとるのが嫌いなので、飲み物だけ飲むことに。なんとメイドさんに言えば好きな飲み物を用意してくれるとか。流石のご都合主義な夢の世界である。
というわけで最近飲んでなかった紅茶を頼んで飲むことに。準備してたのか、割とすぐに出てきた。これ、頼まなかったやつは捨てられてしまうのでは? と気になって問いかけてみた。
「大丈夫ですよ、護衛の人の休憩にも振る舞うので。あくまで優先順位が勇者様なので、護衛の人達には適当に振る舞いますから」
あー、なるほど。っていうかあれ護衛の人だったんだ、警備の人かと思ってた。まあ人数多かったものね、私が一人追加されたところで飲み物が行き渡らないことはないだろうし気にしなくて良いか。
「美味しい……。久しぶりにこんな美味しい飲み物飲んだかもしれない」
「そう言ってもらえると光栄です。砂糖とミルクも用意してありますが、ご利用になりますか?」
「いや、紅茶はストレートが一番美味しいから。あ、でも砂糖だけは貰おうかな」
紅茶はストレートが一番美味しい飲み方。異論は認める。茶葉にもよるし。でも私はストレートが圧倒的に一番好きなのだ。
「ではこちらをどうぞ。この小壺に入っているものでしたら自由に使っていただいて大丈夫です」
そう言ってメイドさんは砂糖が入ってるらしき小壺を差し出してくれた。開けてみると角砂糖がたくさん入ってる。異世界転移あるあるのしょぼい砂糖かと思いきや、綺麗な白砂糖だった。まあ私の夢だから当然なのかもしれないけど。
角砂糖を1つ摘まみ、そのまま食べて口の中で少しずつ溶かす。美味しい。溶けたところで紅茶を一口。うん、美味しい。
「そのような飲み方が異世界では基本なのですか?」
変な飲み方をしていたせいか思わずと言った感じでメイドさんが声をかけてきた。
「いや、私以外がやってるのを見たことはないかな。やっている人自体はいるだろうけど。これはね、甘くない紅茶が飲みたいんだけど、甘いのも好きだから、こうやって飲むと甘い口の中を、紅茶が洗い流してくれる感覚で美味しいんだよね。行儀は悪いけどね」
やってる人はいるんじゃないかな。いるよね? 甘いデザート食べながら砂糖の入ってない紅茶を飲むようなものなのだけど。私の場合は食事が嫌いだからこういうやり方になる。
「やはり、軽食や菓子はお召しにならないので?」
まぁ気になるよね。素直に食べれば良いだけなんだから。
「ごめんね、せっかく用意してくれたのに。私、食事や睡眠が嫌いなんだ。必要最小限に留めたいから、こういうときは食べないんだ。これは異世界人とか関係ないからね?」
「事情があるのなら仕方ないですよ。それに、余ったら護衛の人達やメイド達の休憩時間に出すだけですので、気にしなくて大丈夫ですから」
飲み物といい、気の利くメイドさんだなあ。王様もこれくらい気の利く人だったら良かったのにね。
「それでは、私は外に居ますので、もし御用がありましたらそちらのベルを鳴らして下さい」
「はーい、了解」
そう言ってメイドさんは立ち去って行った。良い機会だからちょっと確認しようかな。
まずは『起きられるかどうか』
これにはイメージは関係ない。私は夢を見ているとき、起きようと思えばいつでも起きることが出来る。疲れるからあまりやりたくはないけど。なんか違和感があるんだよね、まるで寝ていないような、今起きているかのような、そんな感じがする。
起きるのは簡単。まずは寝ている身体を認識すること……だけど。寝ている身体が存在している気がしない。いつもだったら眠っている身体を動かして起きるのに、認識出来ないからこのままだと起きることが出来ない。
とはいえ、夢に閉じ込められるのはよくあること。数日過ごす夢なんかは良く見るし、起きたら数日経っていたことも多々ある。
閉じ込められてるのなら閉じ込めている原因を問いただせば良い。
「ニャロ、いる?」
……はい、返事がありません。出てきません。これは拗ねている可能性がありますね。
『夢の管理人』と言って伝わる人はいるだろうか。いないだろうな。夢に固定の人がいるというよりも、夢の内容や夢の長さをコントロールしてくる人がいる。気まぐれで閉じ込めたり、身体をボロボロにしてきたり、最終的に殺して生き返らせてケラケラ笑ってくるような人が。
まあ本人は善意のつもりらしいけど。現実が辛いのなら夢の中にいたら良いじゃない、という。夢の中なら、ご飯も睡眠も要らないよ、って。睡眠が嫌いになったのって、こうやって夢を見るからなんだけどね……。
読んでいただきありがとうございます。