17話(閑話)
閑話です。読み飛ばしても問題はありません。
謁見の間を後にして、自室に戻ってくる。こんな綺麗な部屋をせっかく使わせてもらえてるのに、旅に出ている間は使えないというのはちょっと寂しいものがあるね。
ちょっと寝ようか。眠るのが嫌い云々はともかく、まだ良いベッドで寝た方が悪夢率は少ないしね。
おやすみー。
◆
「緊急会議を始めます。いつもは軽い感じでやりますけど、今回はある程度真面目に話ますよ。とりあえず、守護担当としては、今の音和の感じは?」
この会議をやる意味はないとは思ってる。でも、統括としてはやらなきゃいけない。
「限界値を10だとするなら今は7だな。すぐ過負荷状態になるぞ。無理やりでも休ませた方が良い」
「それが可能ならやってます、わかって言ってますよね? 常に優先権は音和にあるのですから。他に意見ある人いますか?」
私は優先権強い方だけど、最も優先限が強いのは音和。音和が望まないのなら基本的には行動出来ないのが私たち。
「そもそも音和が私たちを信頼してないのが問題なのだから、話し合うことは出来ないの?」
「今までも何度もそれは挑戦してますけれどね……。音和はニャロしか信頼していませんから」
本当に信頼さえされていれば……。頼ってくれたらいくらでも叶えるのに。あの子は自分のことを内心どうでも良いと思っているから。
「むしろなんでニャロは信頼されてるのかな? 結構酷いことされてるんだよね、お兄ちゃん」
「されてるね。何度も殺されているから。それでも、夢の住人を信頼しているのは■■も同じだろう?」
夢に固定の世界があるという、にわかには信じられない情報。音和だけならあまり信じられなかったけれど、可愛い妹にもその世界があり、管理人がいるというからこそ信じられる話。
「そう、だね。自分も何度も閉じ込められてるけど、自分を守ってくれてるってわかるから」
記憶を見せてもらう限り、あの子もこの妹も、本人からしたら守ってもらっているらしいけれど、こちらはそうは思えない。酷いことをしているようにしか見えない。なぜこの二人はそう思えるのだろうか。
「結局そういうことだよ。音和もそれはわかってるから。それに音和は俺たちと顔を合わせて会話していないからな。ニャロだけ唯一、顔を合わせて会話をしている」
記憶しか見えていないからこうは言いたくないのだけれど、酷いことばかりしている外見化け物のアレが信頼されているのに、私たちは信頼されないのが本当に悲しいし辛い。
「音和ちゃんもここに来てくれたら良いのにねー」
本当にそうですね。本来なら来れるはず、なのに何故来ることが出来ないのか。こちらから引っ張ることだってできるはず。実際それで来れた人もいる。なのにあの子だけはここに入ってくることが出来ていない。
「それに関しては本人のやる気より、相性だと思われてますからね。何故来れないのかの原因は未だに不明ですが」
「統括、記憶、守護、スイッチが使える■■合わせて全員わからないなら誰もわからないでしょ」
頭脳組固めてもわかっていないですからね、今のところは。
「まるで怠慢って言われてるようで気に食わないんだけどな、その言い方は」
「そういうつもりはないよ。私には出来ない仕事をたくさんしてくれてるし」
やはり人員が不足してますね……。
「■■か■■が来てくれれば原因を解明することも可能かもしれないのですが、その辺りはどうです?」
「■■は来てくれる可能性はあるよ。楽しさ重視だから、今の音和の環境が楽しいって思えば来るかな。■■は、■■が来れば着いてくる可能性は高いかな。■■より先には来ないと思う」
楽しいところに現れる、知ってはいましたが厄介ですね。有能ゆえに、その自由を止めることが出来ない。
「結局のところ、サポート体制を維持するしかないですね……」
「今までもずっとそうやって生きてきた。問題ない」
問題? ありますよ。今になっては重大すぎる問題が。
「問題は、あの子が使ってる能力なんです。あれはあの子にしか使えない。使えない以上、あの世界で生きていくためにはあの子を頼る他ないんです」
「自分なら使えるかもしれないよー?」
確かに唯一可能性はありますが……。
「■■、どうですか?」
「可愛い妹に大きな負担をかけさせるわけにはいかないね。使える可能性は極めて高いと俺も思うが、それは条件を整えた場合だ。そしてその条件が重すぎる」
ですよね。下手をしなくても一日保たずに廃人になるでしょう。力をセーブ出来ないのが問題なんです、私たちの妹は。
そして、それほどの重い能力を平然と使い続けているあの子は異常です。いえ、少しずつ負荷はかかり続けているからこその守護の言葉なのでしょうが……。
「■■ちゃん、どこいくの?」
「これ以上出来ることも決められることもない。現状維持しかないなら部屋に戻って本でも読むか寝る」
……実際、何も出来ませんしね。会議は終わりにしましょうか。
「何か思いついた人がいたら、すぐに私に知らせて下さいね」
簡単に思いつくのなら、こうはなっていないのですけど、ね。助けたいのに助けることが出来ない、苦しいです。
読んでいただきありがとうございます。
この会議に参加してた人数は6人です。