16話
今週も頑張りましょう。
「いやでもね、私異世界人だから、この世界のことなんにも知らないから、純粋にどこへ行けばいいのか教えてくれたり、案内してくれたりしてくれる人がいないと、魔族とか魔王とかその辺り以前の問題なんだよね」
「確かにそうですけれどね……それでも道案内のために行くわけではないのですよ?」
「いや、道案内の側面もあるけどな。他国にも行く以上、第二王女であるお前が案内するというのは道案内という言葉はともかく、理由としては合っているだろう」
あー、他の国の貴族とのやり取りもあるのか、大変だなあ。
「それにリリムは他国では聖女として言われている側面もあるからな。勇者につける人材としてこれ以上はおるまいよ。ホントは第二王子も付けられたら良かったが、まあ仕方あるまい」
そういやいつの間にか偉そうな男性居なくなってるな、王様が退室させたのかな? それか周りの貴族さんたちかな? 地味に有能。
というか、第二王子と王女さんだったんだ、今明かされる真実。先に紹介しろよと思わなくもないけど、私あんまり他人に興味ないからまあいっか。
「他国では聖女って、この国ではどうなってるの?」
聖女の側面もある、ってよくわからない表現だよね。
「この国では回復魔法の使い手が多数いる。リリムはその中でも最も優秀で、同盟国への支援に行ったことがあるのだが、そこで付けられたのが『聖女』だ。代わりに、敵国からは突破出来ない人類として、『鉄の女』と言われてる」
「その呼び方嫌いなんですけどね……。どちらも」
鉄の女はないわぁ。女性の敵になるぞー?
「まあ他人からなんて呼ばれるかなんて気にしない気にしない。ムカついたら埋めちゃおう」
言葉の暴力も含めてね、そういうのは嫌いだからね、反撃していこうねしっかり。
「埋め……ふふ、そうですね。音和様と一緒なら出来そうですね」
なんかリリムさんは和んだらしい。良きかな良きかな。
「で、最初にどこ行けばいいの? もう決まってる? 私は案内されるだけで良いかな?」
「既に決まっている。詳しくはダリアに話してあるからそこから聞きながら進む方がお前には良いだろうが、簡単に言うなら隣国の魔物の壊滅と魔族の殲滅だな。勇者が召喚され、この国で独占せずに勇者としての役割を全うさせるというのをアピールしないといけなくてな」
私、勇者として生きるつもりはあんまりないのだけど、まあ細かいことはいっか。行動してて名前で呼ばれるより勇者って呼ばれる方が精神的に良いし。
「一応倒す前に対話とかさせてもらいたいんだけど」
「自由にやってくれて良い。魔物は言葉が通じないから襲ってくるだろうが、魔族は一応言葉が通じるからな。こちらは道順を立てるから、やり方は音和に任せる」
おー、王様、だいぶ私のことわかってきたのでは? それとも老子さんとかの助言かな。あの人はだいぶ私のことわかってる雰囲気あるし。
「自由なのは助かるよー。私この世界の作法とかなんにもわからないからいろいろやらかすだろうけど、この国が責任持ってくれるってことだもんね!」
「いや、そうは言ってないんだが……。ダリア、リリム、サポート任せた」
あ、王様、丸投げした。
「わたくしにこの人のコントロールが出来る気がしないのですが!?」
「振り回されても大丈夫なようにマイペースでいればいいんじゃないですかねぇ……」
リリムさんは私との付き合い方の確立が早そう。ダリアさんは今のままで良いんだよ、ツッコミ担当として頑張ってほしいな、うんうん。
正直、私ってふわふわ浮いてて付き合うの大変だろうけど頑張って貰いたい。私は頑張らない。
「がんばれー」
「他人事ですわね!?」
即ツッコミ入れてくれるダリアさんもノリが良いよね。この人好きかもしれない。
「とりあえず。隣国でのことが終わり次第またこの城に戻ってきて欲しい。軍資金はダリアに預けるからあとで回収してくれ。旅立ちの準備が終わり次第……というかお前に準備が必要なのかは知らないが、二人には準備が必要だから、全員の準備が整い次第向かってくれると助かる」
「いや、私も流石に野宿するならある程度用意するし、飲まず食わずは流石に死ぬから準備するけどね。私をなんだと思ってるのさー」
「お前のことは全くわからん。それに尽きる」
王様からの私の認定が『謎生物』みたいな感じになってる。なんでだ、私そんなおかしなことしたかなあ?
「わたくしからもこの人は全くわかりそうにありませんわ……」
「そのうちわかりますよ、一緒に旅に出るんですし……」
「一緒に上手くやれる自信がありませんわ本当に……」
酷い言われようである。私は割とまともな人間なはずなんだけどな。いやそんなことないけど。
「まあ、合わなかったら別れるみたいな勢いで行けばいいんじゃない?」
「魔王討伐パーティがそんな簡単に恋人と別れるみたいなノリで良いわけないでしょう!」
うーん、ダリアさんはツッコミ入れないと気が済まないのだろうろか。
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