10話
更新時間を悩んでます。悩んだ結果、24時間以上空いてしまいましたすみません。
今回は一般兵視点です。
今回、異世界から召喚された勇者の戦いを見ているが、正直規格外としか言いようがない。歴代の勇者達の話もさまざまな書物から読むことが出来るし、童話などとして絵本にも残ってるようなものだが、実際に目の当たりにすると閉口するしかない。
弓矢で決めてくるだけならまだ良い、いやそれで弾け飛ぶレベルなのは良くはないが。問題は、それでも手を抜いているのかいろんな倒し方を試しているような感じがするところだ。
「次は5体で行く、基本の群れている魔物といった感じだぞい」
「いつでもどーぞー!」
という会話が繰り広げられた後、勇者は不可思議な動きをした。相手を倒すでもなく、いろんな方向へ動き、一部の敵に一瞬で近付いたと思ったら軽く投げ飛ばしたりしている。
動きからして、倒そうと思えば明らかに倒せるのに、まるで遊んでるようにしか見えない。いや、勇者の実力からして、これくらいの相手だと戦いにはならず遊びなのかもしれない。
そこから、しばらく動いていた後、勇者はまた一瞬で弓を構えた。と思ったらそのまま放ち、何故か敵が全滅していた。意味がわからない。
「傀儡を全て直線で並べ、一撃で葬ったのか……」
「そうそう、一矢で倒せるか試したくてね。正確にはどれだけ貫通させられるか気になってさ」
意味のわからない会話をしている。あの動きは敵を一直線にするものだったと? どれだけ余裕があるんだ? あれは一体一体でも我々が5人部隊できっちり統率が取れてても苦労するレベルだったんだぞ、それをまとめて全て一撃だと?
「ならば次は10体でいくぞい。ここまで群れられると、統率者がいるのが基本になるの」
「いつまで武器縛り? 普通群れなら魔法使うと思うんだけど」
「最初の1体の時だけ武器での戦闘見せてくれれば満足だったからの、いつでも使って平気じゃよ」
「先に言ってよね、もう」
「すまんの、ああ、火系統だけは止めてもらえると助かるの。一応結界はあるが、音和レベルだと破って周りを燃やしかねないからの」
勇者も勇者だが、老子様にも狼狽えた様子があまり見られないのは何故だろうか。勇者の実力を分かっているということだろうか。強者のことは強者しかわからないということなのかもしれない。というか、さらっと結界を破ると言ったが、それは自分たちも危ういということなのではないのだろうか……? 俺達一般兵にそんな自分を守る能力はないのだが。
「じゃあ石でいく」
そう宣言した直後、召喚されたものたち全ての頭が爆散した。なんでだよ。ついでに頭も貫通したらしく、その後ろにあったものも一緒に爆散した。流石に結界までは壊れなかったようだが。でもこっちに飛んで来たら死んでましたよねそれ、怖い。
「なるほどの……小さな石を高速で飛ばすことで貫通爆散させたか。とはいえ、よほど硬度を上げていないと石の方が砕け散るから……魔力で固めたのかの?」
「魔力でも固めてるけど、そもそも石というか、玉だよ。飛ばしたのは翡翠の石だね。私の好きな宝石だから大量に持ってるんだよ。ちなみに使った後は回収しているから安心してね」
ただの訓練所での活動に宝石使うのか!? 勇者ってここまでぶっ飛んでるのか……あの一体を破壊したやつだけで俺が何か月生活出来るとかあるのかな、気になるな。
「翡翠……聞いたことないの。そちらの世界では一般的なモノなのかの?こちらでは宝石は派手なのばかりで、そのような落ち着いた色のモノはなかなか見ないのでな。」
「あれ、あの一瞬で見えたの? 最初の矢は見えてなかったぼいのに。この辺りでは発掘されないのかな? 私の世界でも、採れる国は限られていたからおかしくないかな。この玉は、生命の回復、不老不死の能力があるんだよ、って言ったら信じる?」
不老不死!? 王族や貴族の夢じゃないか! そんなものを表に出したら大変なことになるぞ!?
「音和が言うなら信じるけどの、その言い方なら異世界のその宝石にはその力はなさそうだの」
「うん、まあ、ないね。私がその力を込めることを出来なくはないけど、一回使ったが最後、国に囲われる気しかしないからしないことにしとくよ」
「出来れば今ここでそれを言って欲しくもないんだがの……また緘口令かの……」
「わかってて言った! 秘密は共有できる人が多い方が楽だからね! 誰かが漏らしたら私が漏らしても良いし?」
「いや、めんどくさいのに絡まれると言っておるのだがの……」
不可思議な会話をしている。そろそろ頭が着いて行かない。一体どれだけのことが出来るのだろうか、この勇者は。
「まあ良い。さて、10体が余裕そうだから、敵の方から攻めてくることを考慮して50以上でやってみるかの」
「おっけー、次はまた違う魔法で考えようかなー」
まだやるらしい。疲れないのだろうか、この二人は。
読んで頂きありがとうございます。